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不快音

お待たせしました

「貴様、何者……いや、知ってい■ぞ。その雰囲気…」

「厄災の子が此処■いるんだ。厄災そのものがいても不思議じゃあないだろう」

「そしてそのガキを庇っ■。つまりそのガキは⬛︎⬛︎⬛︎と繋がりがあるってことか」



 自分達の攻撃を受け止めながら立ちはだかる魔快黎(まより)様の一部を前に、来訪者達は少し間合いを取りながらやはり予想は当たっていたかと話し合う。此処には自分達の目的であり、敵である厄災そのものがいる、今現れた者と小さな子は⬛︎⬛︎⬛︎について何らかの関係性があると。


 瞬間、来訪者達はさらに殺意を全身から(あふ)れ出させながら魔快黎(まより)様の一部とその背後に隠れる淫夢巫(りんぷ)のことを睨み付けた。


 その恐ろしい目つきに淫夢巫(りんぷ)はビクリと肩を(すく)めながら縮こまるものの、


「……」


 のふっ


 魔快黎(まより)様の一部は優しい手つきで頭を撫でてやりながらその恐怖を和らげた。そして、



 ちょいちょい


「……ん? な、なに……?」

「……」


 ちょんっ ちょちょちょっ くいっくいっくいっ



 振り向くことはせずとも、手や指を淫夢巫(りんぷ)の顔の前で動かし、何かを訴えようとする。同時にもう片方の手を突き出し、構えることで相手を牽制(けんせい)しながら。

 最初は初めて感じる殺意や憎悪による怖さによって動揺していたためその手が何を示しているのかが分からなかったが、



「……もしかして…」



 落ち着くにつれて淫夢巫(りんぷ)は少しずつ意図を汲み取り始めた。それは喋ることの出来ないこの一部が言葉の代わりとして、手の仕草で以心伝心しているのと同じであると。そうして落ち着いた淫夢巫(りんぷ)は、その手が示すことを読み解き始める。



 ちょいちょい


「ここは……」


 ちょんっ ちょちょちょっ


「おねえさん…あ、わたしに……まかせて……」



 それはこの来訪者達は自分に任せ、貴方は早くこの場から逃げろと言うメッセージであった。手や指を巧みながらも大きく動かすことでまだ未熟である淫夢巫(りんぷ)にも伝わるようにして。そして、



 くいっくいっくいっ


「わたしは……あっちに…に…げ…ろ…?」


 

 そして自分の言いたいことが全て淫夢巫(りんぷ)に通じた、どうして欲しいのかを伝えられたと一部は確信すると、



 ぐっ!



 と親指を立てながらそれで合っていると仕草で告げる。するとその仕草に淫夢巫(りんぷ)はこくこくと(うなず)くと、よたよた(つたな)い足取りで、1歩2歩と()り足で退()くようにしてこの場から離れ始めた。1人でこの場から去るのは怖かったが、それ以上にこの場に留まり続けることの方が怖いと思いながら。

 いくら自分のことを守ってくれる存在がいるとは言え、自分に恐ろしい殺意を向けて来るような者達に睨まれ続けるのはまだまだ幼い淫夢巫(りんぷ)には耐え難いものであるからだ。



「逃が■と思うかっ」


 バババッ!!



 が、そんなことなど許さない、厄災の子を逃がすものかと、淫夢巫(りんぷ)が逃げ始めるのと同時に来訪者達は襲い掛かる。



 バギャ⬛︎ッ!!! バギッ!⬛︎! ドゴ⬛︎ッ!!!


「……」



 しかし、その者達の容赦ない攻撃が届くよりも早く、魔快黎(まより)様の一部は間に割って入り、素早くも力強い足捌(あしさば)きによって彼方へと蹴り飛ばす。見せたことがない故に見たことがないその動きに、逃げようとしていた淫夢巫(りんぷ)は思わず足を止め、見惚れてしまう。

 

 可憐とはまさにこのことだと言わんばかりの動きに、淫夢巫(りんぷ)の表情は強張っていたものから一転、うっとりと口を開けながら魅入っていた。



「…」


 つんつんっ



 けれどもそれも束の間、着地と同時に魔快黎(まより)様の一部は指先で突っつくようにして早くこの場から逃げなさいと告げる。その仕草を見てはっと我に返った淫夢巫(りんぷ)はこくんっと元気よく首を縦に振ると、ぱたぱた慌てるようにしてこの場から立ち去り、フッと転移した。


「……やっと、か。後でしっかり魔快黎(まより)に叱ってもらわなきゃ」


 きっと淫夢巫(りんぷ)は他の子達の元へと戻った、此処へ来たのと同じやり方で帰って行ったのだと一部は後ろ目に見遣りつつそう考える。


 そして、これでようやく目の前の相手に集中出来ると一部は切り替えるように目つきを変えながら、蹴り飛ばした来訪者達の方を睨み付けた。


「ふん、何なんだ今の(やわ)■蹴りは?」

「随分と弱体化したように見■るな。前はこんなんじゃあ無■ったと思うが」

「ガキを持ったことで逆に弱くなった、■でも言うのか。まぁいい、あのガキが厄災の子であるなら■たちで始末する必要があるからな」


 すると蹴り飛ばされた者達も特に効いていないと言った様子でやって来ると、変わらず殺意と敵意を剥き出しにして相対する。



 ギロッ


「…小さな子相手に何⬛︎掛かりだ。君達の倒すべき相手は俺だろう。あの子じゃあない」



 と、その者達を前に魔快黎(まより)様の一部は鋭い目で睨み付けながらそう告げた。逃げた淫夢巫(りんぷ)に矛先が向かないようにするため、今此処でこの者達を喰い止めるために。



「はんっ、小さな■相手に、だと? 貴様がそんな戯言(ざれごと)をほざくとはな」

「そう言う貴様は小さな子に何もしな■ったとでも言うのか? ■達をこんな姿にしておきながら、貴様はのうのうと生きていられるとでも?」

「■達にとっても世界にとっても貴様は厄災でしかない。だから滅ぼさなくてはならないだろう」



「だから俺が君達の相手をすると言ってい⬛︎」



 そしてこの者達の憎悪の根幹となっているものに、自分自身は密接に関わっていることを魔快黎(まより)様の一部は知っているがために、立ちはだかる。



「しかし気を付けろよ。俺は君達にとって害をもたらす存在⬛︎。去るのなら追わないが、殺意を持って向かって来るのなら俺も容赦はしない」


 パキッ


()()に、⬛︎⬛︎⬛︎に挑むことがどう言うことか。身を持って思い知りたい奴だけ掛かって来い。そうじゃあない奴は引っ込んでろ」



 瞬間、魔快黎(まより)様の一部はそう言い放ち、裂けた口から不揃いな牙を覗かせた。その禍々(まがまが)しさ、厄災の一言に尽きる雰囲気は、つい先程まで幼い子と接していた者と同じであるとはとても思えない。まさに()()の一言に尽きるだろう。



 グギュルル⬛︎ルゥウウ⬛︎⬛︎ウウッ


「オマケに今の俺は腹ペコ⬛︎。つまり、俺に負けた⬛︎ただの怪我じゃあ済まない。知ってるだろ、腹を空かした俺が君達に対して何⬛︎するのか。それ⬛︎踏まえた上で掛かって来な」



 そして腹の虫と共に、パキパキガチガチと更に(いびつ)な音を立てながら魔快黎(まより)様の一部は来るならば掛かって来いと告げた。


 と、同時に、



 ダンッ…!!!


「■ねっ」

「くたば■っ!」

「■えろッ」



 来訪者達は(おく)することもたじろぐこともなく、一斉に一部へと襲い掛かる。恐怖で縮こまってなどいられない、倒すべき(かたき)が前にいるのに何もしないわけがないと意を決しながら。

 そして(いびつ)ながらも鋭く尖り、破壊のみを求めている形状をした手で敵の体を貫こうと腕を振るう。



 ズボォ⬛︎!!!



 しかし、来訪者の手が自身の体を貫くよりも早く、一部は自分の両目に突き刺さっている杭のようなものの内、右目にある方を鷲掴(わしづか)み、強引に引き抜いた。



 ビキビキ⬛︎キッ!!!



 するとその杭は異音を立てて変形を始め、鐘のような形状となると、



 ガラァンッ!!! ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!


 ガゴォンッ!!! ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!


 グァラァン!!! ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!



 それを思い切り振り回す。瞬間、その鐘は辺りに轟音にして耐え難い苦痛を与える喧噪(けんそう)なる音、耳にとって厄災でしかない不快音を響き渡らせる。その音を間近で聞いてしまった来訪者達は皆耳を抑えながらその場にドシャッと倒れ込み、悶え苦しむ。


「……っ」


 拳や蹴りは耐えられる体であっても、音が与える苦痛には耐え切れないようで、ある者は倒れたまま失神してしまった。



 だが音で苦しむのならば音を聞かなければいいと、残った者達はブツッと自分の鼓膜を破って一切の音を遮断する。どんな不快な音を聞かなければ無意味、音を聞かなければそれで悶えることはないと立ち上がった。



 ズボ⬛︎ッ



 けれども魔快黎(まより)様の一部はすでに次の攻撃に転じており、今度は左目に刺さっていたものを引き抜く。すると同じように音を立てて形状が変わるが、しかしその形は鐘ではなく、



 ビキッ……!



 まるで笛のような、拡声器のようなものとなる。それを手に持ちながら一部は口元に当て、すぅっと息を吸い、



「……ッ、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!」


 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎……ッッ!!!



 凄まじい威力を持つ、厄災そのものの()を放つ。



 ドシャッドシャッ



 その音は、鼓膜を破った筈の来訪者達さえも失神させ、倒してしまった。



「ふんっ、()は聞こえなくても、()が嫌がる音ってあるんだ⬛︎」



 魔快黎(まより)様の一部が放った音、それは耳だけでなく体に害を及ぼす音。例え耳が聞こえなくとも体が嫌がる波長や振動と言うものはあり、それを一部は厄災の形として放ったのだ。その轟音をかなりの至近距離で喰らってしまった来訪者達は耐え切れず、意識を失って倒れてしまったのである。



「さて⬛︎」



 パキ…パキッ…パキパキパキ…⬛︎



 そして来訪者達を(まと)めて一掃した一部は音を立てながら後頭部を割り、髪を退()けるように持ち上げると、



 グチュルッ…ジュリュロォ⬛︎…



「ブハァ〜…久しぶり⬛︎食事だなぁ。()()()の口じゃあないと喰⬛︎ないから…」



 そこからバクリッと捕食口を表した。どうやらこの一部にとって前に付いているのはあくまで音を出すための口であり、獲物を喰らうのは後ろに付いている口を使うようだ。普段その口は髪の中に隠しており、混沌を喰らう時にだけ表に出すのである。



 バ⬛︎ンッ ガツガ⬛︎…


(ふぅう〜、あの子達の前じゃあ見せら⬛︎んよ、こんなの。怖がらせちまう)



 けれども混沌を喰らい、丸呑みにして行くその様はあまりにもおどろおどろしく、不気味であり、それを知っているからこそ魔快黎(まより)様の一部は子達の前ではずっと何も口にしてこなかった。こんな自分の姿を見せては怖がらせてしまう、恐れられ、忌み嫌われてしまうと。



「結局俺も、()()側か⬛︎。全然優しくなんかないな」



 そんな自分自身を一部は恐ろしき『獰猛(どうもう)』だと肩を落としながら再認識し、



(あの子達のことも傷付けちまったし…あ〜あ…こんなことを考えるようになっちまうなんて、()ってのは厄介だな…)



 この力が魔快黎(まより)様の子達を傷付けたことに関して申し訳なさを感じていた。今までこのように考えることなどなかったのに、こんな形で影響が現れるとは心と言うものは厄介だなと思いつつ。

次回の投稿もお楽しみに



評価、ブクマ、感想、レビュー、待ってますッ!

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