なるべき姿、ならなくてはならない存在
お待たせしました
タトッ
てちっ
「ごめんな、遅くなった。欄照華、大丈夫か」
「もうへいきだよ…。ちょっとだけいたむ…だけ…」
欄照華の怒りを鎮め、ずっと胸に秘めていた想いを吐露させ、改めて親として我が子と向き合って行かねばならないと決意した魔快黎様は、瞬間移動によって我が子達の元へと一瞬で戻って来る。側にいる欄照華の顔はまだ傷跡が残っているものの幾分か回復しており、元の形を取り戻しつつあった。ただそれでも痛々しい焼け跡は残っており、欄照華は歯を軽く喰い縛りながらジュクジュクと疼く痛みに耐えている。
そんな我が子を側で見守りつつ、魔快黎様はやや慌てるようにして他の子達の元へと戻って来た。
数ある目の内の幾つかでずっと見張っていたとは言え、やはり大切な我が子達の側を離れ、素性もよく分かっていない者に子達を預けることは不安であったのだ。ましてや、
「で、君は一体誰だ。何で増えた」
「……」
気が付けば首が長い者に加えて、目がある部分に杭のようなものが打ち込まれている者が増えており、しかもその者が我が子のことを抱いていると言う状況。
「敵意は感じないし、淫夢巫が信頼して身を預けてるから、今すぐ淫夢巫を離せとは言わんが、それでも何者なのかはちゃんと語って貰おうか。君もな」
「おう、もちろんだ。そっちの方が君の子達も安心出来るだろう。まぁただこっちはちょっと喋らな…あー、喋れないから大体のことは俺から説明するよ。君もそれでいいだろ?」
「……」
コクンッ!
「この子達に手を出す真似なんかしないが…少しでも訝しんだり、俺達が危険だと思ったら容赦なく消し飛ばしてくれて構わない。今の君ならそれぐらい出来るだろう」
だが魔快黎様が説明を求めれば、その者達はもちろんだと頷き、首を伸ばす者は言葉を喋らない者のことも含めて自分が語ろうと言う。しかももし少しでも怪しいと思ったら、自分達が敵であると魔快黎様が思うようならば容赦なく消してくれて構わないとも。
その言葉に嘘はない。が、敵意は全くと感じないもののこの者達が我が子にとって危険な存在となるならば、言う通りこの場からこの者達のことを排除する必要がある。
魔快黎様はそうなることを考え、構えつつ、その者から語られることに耳を傾けた。
「単刀直入に言う。俺は君の一部だ。そして俺達が此処に来た理由は、この事態を君自身の体が案じたからだ。言ってしまえば君の心ではなく、君の体の意思だ、俺達を呼び寄せたのは、な。薄々気が付いているだろ、自分の体を自分の心が制御出来ていないことくらい」
「ッ…」
「やっぱそうだよな。そもそも君の一部である俺達のことさえちゃんと把握出来てねぇんだし」
改めて自分は魔快黎様の一部であることを、そして自分がこの世界へと来訪し、魔快黎様と接触を果たした理由を、語り出す。それは魔快黎様の御身体の意思によるもの。魔快黎様の心が御身体を制御出来ていないから、御身体の意思がそれを案じて自身の一部を魔快黎様とその心に接触させたのである。
「しっかりしろよ、この子達の親としても、さ」
「…すまん」
「別に謝って欲しいわけじゃあない。ただ君が君自身を制御出来ないことで何が起こるのか、その片鱗はすでに見ているんじゃあないのか」
心が生まれてしまったが故の事態、魔快黎様と言う自我と心を持ってしまったが故の状況。本来心など持たない、必要としない⬛︎⬛︎⬛︎と言う存在が、心を持ち、魔快黎様となった。
それが何を意味するのか、心が⬛︎⬛︎⬛︎の御身体を制御出来ないとどうなるのか。
「……」
――
バツン⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
――
深く考えずとも思い出される、頭の中にしかと焼き付いている厄災に包まれんとする異界、自分自身の力がもたらす混沌。
魔快黎様自身が⬛︎⬛︎⬛︎を制御出来ないことで起きるもの、それが厄災以上をナニカであることは想像に難くなかった。
「どうにか出来るのか」
「それは俺達がどうこう出来ることじゃあない。俺達はあくまで君の一部、言ってしまえば力の一端でしかないんだからな。まぁ、その一端の奴らがこうして警告をしに来てるってわけだ、事態は想像以上に悪いんだぜ。そしてその事態を収束させるには、君自身が強くならないとな。身心一如ってやつだ」
何よりも自身が制御出来ないことで愛する我が子達を傷付けさせない、守る筈の手で大切なものを壊さないために、魔快黎様は何とかしなくてはとやや焦り気味に思う。
けれどもその方法は教えてもらうものではない、自分自身の御身体の制御は、魔快黎様自身が見つけ出さなくてはならないのだ。
「……」
未だに制御出来ないのに、制御出来ている気はしないのに、御身体を制御出来るようにならなければ厄災以上のものを招くかもしれない。その厄災が我が子に降り注ぎ兼ねないと思うと憂鬱な気分になってしまう。
が、
「そう悲観すんな、此処に君の敵はいないし、君の体だって君の心を困らせようなんか微塵も思っていないからな。むしろ力を制御しようと君の体が俺達を呼んだわけだし。つまりこの事態を何とかしようとしてるのは、君だけじゃあないんだ。俺達だって微力ながら助力するよ。なっ?」
「…」
こくこくっ
「ありがたい」
「何か…変な感じだな。俺達って君の一部だし、本来ならこんな意思なんて存在しないんだが…。まぁ君の魔快黎と言う自我が芽生えたことによる影響だろうし、体もそんなイレギュラーに対応しようとしてる最中だろうからな」
何も魔快黎様だけが背負うことじゃあない。一部達だってこの起こり得る問題を解決すべく駆け付けたのだ。決して持っている力は強大なものではない、魔快黎様からして見ればその者達の力など小さなものであり、叩き潰そうと一度思えば造作もないだろう。
されど制御すべき御身体のことを知っているかどうか、その御身体に秘めたる力が何なのかを知っているが否かはかなり重要だ。
そして、
「それに君はこの子達の親としても成長しなくちゃだろ。こればっかりは俺達には務まらないことだ」
「…ッ」
こくこくこくっ!
御身体の制御も大事であるが、魔快黎様には我が子達の親にもならなくてはいけない。
子達を産んだだけじゃあ親にはなれないが、今この場で子達の親になれるのは産んだ魔快黎様しかいない。この子達が親として見て、慕う存在は魔快黎様以外ないのだ。
あむっ
「っと」
「ママ」
と、その時、そんな魔快黎様の尾に小さな歯を突き立て、甘噛みしながら漢妖歌は甘える。いつの間にか乗っかっていた首から降り、大好きなお母さんとその尾のすぐ側にやって来ていたようだ。
すると水浘愛と欄照華もとことこと魔快黎様の側に歩いて行っては、
ぺとっ
「ママはママ。めみあたちのママだよ」
ぎゅうっ
「こなたのママでもあるもん」
その頭や脚に乗っかり、抱き付く。
「……」
しかし淫夢巫は一瞬躊躇い、抱かれている腕の中から出て来ようとしなかった。そんな様子に抱いている者はどうかしたのかと問い掛けようとしてみるが、
くっ…
「…ふっ」
ぴょんっ
それも束の間、淫夢巫は自分の手を見つめながら少しばかり動かす。そしてすり抜けるに腕の中から飛び降りると、他の子達と同様魔快黎様の元へと駆けて行く。
「……」
(何で自分の手を見て笑ったんだ?)
謎の笑みを浮かべる淫夢巫に、その子のことを抱いていた者は次に疑問を抱くものの、
(…まぁ、それはこれから分かることか)
今悩むことじゃあないと特に深く気にも留めず、見守ることにひた。
次回の投稿もお楽しみに
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