見ると言うこと
お待たせしました
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世界に蔓延る厄災。それそのものである⬛︎⬛︎⬛︎はありとあらゆる並行世界を異形の体で渡り歩き、来訪する。ズルリズルリと引き摺るように、もしくはドスンドスンと踏み締めるように。
名は体を表す、と言うのはまさにこのことだろう。
もし何も知らぬ者が⬛︎⬛︎⬛︎のことを見ても、その禍々しく、混沌で、異形過ぎる姿には必ずや厄と災いをもたらすであろうと想像出来てしまうのに難くはない。
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そして⬛︎⬛︎⬛︎はそんな者達の想像通りにして想像以上の厄災をその世界中にもたらし、混沌へと変えて行く。そのような現象として、そのような概念として。
されど変えられ、生み出された混沌なる存在は全て同じ存在ではない。一概に混沌と言えど、その様は多種多様にして同じものは1つとてなかった。
果たしてそれは、その混沌を喰らう⬛︎⬛︎⬛︎が異なる味を楽しむために様々な形を作り出しているのだろうか。いや、元々そうならずともそれぞれが異なる存在であったため、混沌になった後でもそれは同じと言うことなのだろうか。
いや、それともどんな姿形であれど⬛︎⬛︎⬛︎に喰われると言う、等しい最期を迎えるからこそ混沌は異なる形をしているのかもしれない。
⬛︎⬛︎⬛︎の来訪によって厄災がもたらされ、ありとあらゆるものが混沌となって行く。その混沌を⬛︎⬛︎⬛︎は喰らい尽くしながら、時空に縛られることなくまた次なる世界へと向かう。
無数にある並行世界の厄災として、⬛︎⬛︎⬛︎は動き続ける。
されど世界に生まれる混沌も全て喰われるだけの存在ではなかった。
カトーン…カトーン…
「……」
⬛︎⬛︎⬛︎の手によって混沌とされ、身も心も異形に変えられながらもながらもその牙から生き残り、生き延びて来た者もいる。もう元には戻れない、元に戻ろうと考えることさえ出来ない。帰る場所もすでにない、あったとしてもそこに帰ろうと言う気さえ起きない。
もう自分が何者であるのかさえ覚えていない、思い出そうとさえしない。
そんな存在となってしまったある者はただ1つの想い。
「友達に会いたい」
と言う想いであった。されどその友達の姿さえ混沌となってしまった者は覚えていない。あるのは顔も名前も姿形も性別も記憶にはないのだ。そんな友達のことをひたすら考え、会いたいと機械のように思い、動き続ける。
それがその混沌。
このような異形な存在になる前は、赤色艶めく短髪を揃えた1人の若き成年前の学業と音楽に勤しむ少女であった。愛用のエレキギターと青色の髪をした友達と共に2人でバンドを組み、ゆくゆくはメジャーデビューと夢を抱いている。
そんなとある日のこと、2人は今後のことを話し合っていた。メジャーデビューするのに今の自分達では実力不足、2人で楽器を演奏しながらその内の1人、赤髪の少女が歌っていたが、その子の声量では良い歌は出来ない。赤髪の子は、自分はどちらかに専念しなければ、次のオーディションのイベントを勝ち抜けないと口にする。
それならば黄色のメッシュを髪に入れた少女を自分達のバンドに誘い、歌い手として加え入れてはどうかと青髪の子は提案する。以前その子の歌をカラオケにて聞いた際、その歌声に心を揺さぶられたとのこと。そう友達から話を聞いた赤髪の子はふぅんと一言返し、それならば今度その子の元を2人で訪ねてみようと告げる。
黄昏時の中、他にも駄弁を交えながらお互いの帰路に着く。すでに日は沈みかけ、夜との境界が分からなくなりつつある。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
そしてその時、⬛︎⬛︎⬛︎の来訪によって厄災がもたらされ、全てが混沌と化して行く。当然その少女達も同じく異形となってしまう。
その1つが、「友達に会いたい」と思い続ける混沌であった。唯一の面影か、混沌が元々少女であったと言う証拠なのか、髪のように見える部分は赤く染まっている。
混沌は一旦は⬛︎⬛︎⬛︎の牙から逃れ、体に引っ付くことで他の世界に来た。その瞬間、混沌は⬛︎⬛︎⬛︎から離れて異界の地に降りる。けれども結局は⬛︎⬛︎⬛︎がその世界に居座り、厄災を振り撒いて行く。
そんな光景と⬛︎⬛︎⬛︎の姿を目の当たりにしたその混沌は、
カトーン
「削除」
ギリュアッ
一言そう言うと右腕のように見える部分を一度2本の触手に分けると、それを捻り合わせ、先端を鋭く尖らせる。そしてその鋭利になった腕を持ってその混沌は、自身が作り変えた混沌世界を喰っている⬛︎⬛︎⬛︎へと向かって行った。
混沌に本能と言うものがあるのかどうかなど分からない、思考しているのかさえも分からない。だがその混沌はたしかに⬛︎⬛︎⬛︎へと向かい、攻撃しようとしている。それは紛れもない事実だ。
ザグンッ
そして次の瞬間、混沌は⬛︎⬛︎⬛︎の体に尖った自身の腕を突き刺す。深く突き刺し、抉り、引き千切る様に掻き混ぜ、
「削除、削除だ。これはあってはいけない」
機械的な口調でそう口にしながら。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
だが⬛︎⬛︎⬛︎は自身の体が抉られようと全く痛がる素振りを見せない。元々異形にして巨大過ぎる⬛︎⬛︎⬛︎の体であるため、人間1人と同じ大きさの混沌の攻撃では意にも介さないのだろう。そのことに混沌も気が付いたようで自身の腕だけでは⬛︎⬛︎⬛︎を倒せないと分かると、それならば次なる攻撃を試すだけだと今度は大口を空けて勢いよくその体に噛み付いた。
「削除、削除、削除しなくては」
もちろんそれさえも⬛︎⬛︎⬛︎には効いていない。当然混沌が⬛︎⬛︎⬛︎の体をすぐにでも喰らい尽くすなどと言うことはない。放っておいても⬛︎⬛︎⬛︎には何ら問題などないだろう。
けれども⬛︎⬛︎⬛︎は自身に喰われる混沌が自身の体に噛みついていることに少し驚き、興味のようなものを示したのか、その混沌のことをすぐに喰らうようなことはせずに腕で掴み、持ち上げる。
「削除削除削除削除」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
そして世界を見ていた無数の目をその混沌に向けると、ギョロギョロとありとあらゆる位置から見た。どんな形をしていて、どんな姿をしているのか。何でこんなことをしているのかを知るように。
しかし⬛︎⬛︎⬛︎はその混沌が今まで喰って来たものと変わらない、自分が喰えるものであることに変わりはないと気がつくと、
⬛︎⬛︎⬛︎
ポイッと興味なさげに異世界に放り投げてしまった。
次回の投稿もお楽しみに
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