知らない体
お待たせしました
⬛︎⬛︎
「⬛︎⬛︎」
(……これは)
ギギと握り締められているのはこの世界になかった異物。此処とは違う世界、異世界にあったものは一瞬で⬛︎⬛︎⬛︎の手の中に瞬間移動していた。それを握る自身の手を⬛︎⬛︎⬛︎様はゆっくりと開き、改めて目で見つめる。これが自分の能力なのかと何とも不思議そうにして。
が、
ギュギギ⬛︎ゴガグギ⬛︎⬛︎ゴグゴ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎…
「⬛︎」
(あれ、形が崩れて行く)
もっとよく見ようと目の数を増やし、辺りに張り巡らせた瞬間、異界からこの世界へと来た異物はゴギゴギ歪な音を立てながら手のひらの上でその形を崩して行ってしまう。いや、勝手に崩れたのだ。
⬛︎⬛︎⬛︎様はその歪になり、どんどん本来の形でなくなって行く異物をジッと見つめながら、一体何処まで、何時まで変わるのだと観察し続ける。
⬛︎⬛︎
(止まったか、しかし随分と変わった。それともこう言う物だったのか?)
それから少し経つと異物の変形は止まり、それは最早『混沌の塊としか言えないもの』となっていた。⬛︎⬛︎⬛︎様はその一部始終を目を離すことなく見つめ続け、これが元々このような物質なのか、この世界がもたらすものなのか、はたまた自分の能力なのかと考える。
⬛︎⬛︎⬛︎
(んっ?)
が、その時、突如として混沌の塊を持っていた手のひらがパキッと音を立てて割れ、
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎
口となったかと思えばそこから伸びる舌を使ってちゅるんとその塊を舐め取り、ペロリと容易く平らげてしまった。されどそれは意識していない行動、別に⬛︎⬛︎⬛︎様はその混沌を喰おうと思ってそのやったのではない。
ただ強いて言うのならば、口元や唇にこびり付いた喰い残しをペロリと軽く一舐めして取った程度のこと。鬱陶しいから取ってやろうとしただけ。
ゴクリと喉を鳴らすような音を立てながら、呑み込んだ塊を腕の奥へ奥へと送り込んで行く自身の体を⬛︎⬛︎⬛︎様は観察し、
(やはり俺の体にはまだまだ分かっていないことがある。能力だけじゃあない)
⬛︎⬛︎
(俺は全然、俺を知らない。知らなくてはならない)
自分自身を知らなくてはならないと強く手を握りながら決意する。動かすこと自体に不自由はないが、しかし自身の意思とは別にこうして勝手に動くこともあるこの体を。
⬛︎⬛︎⬛︎様はそう思い立つや、すぐさま先程と同じように自身の目を持って異世界を見つめ、異物と同じようなものを再び手のひらに来るよう念じる。
すると次の瞬間には、見つめていたものが手のひらの上に乗っかっていた。けれども今度は、まだ握っていない、引っ掴むようにして取ったわけではない。
此処に来るように、手のひらの上に来るように念じただけ。
ただそれだけでその物体は転移し、一瞬で此処にやって来た。
そしてもう一度同じように、今度は別の手の上に来るように念じてみると、別の異物が手のひらに瞬間移動される。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
(これは…これが…俺の能力….のようだな)
⬛︎⬛︎⬛︎様はそれを見て、これが自分自身の能力だ。他者をこの世界とは別の世界に瞬間移動させることも、別の世界にあるものをこの世界に瞬間移動させることが出来る能力。しかも自分の手や体に乗せると言ったことをしなくとも、
パッ
「⬛︎⬛︎⬛︎」
(やはりそう言うことか)
パッ
目で見つめている場所ならばこの世界の何処であっても物体の転移は⬛︎⬛︎⬛︎様の思いのままだ。異世界を見つめながら能力を駆使し、物体の転移を繰り返しながら把握する。
そして、
「⬛︎⬛︎」
(……)
ザズジュジ⬛︎⬛︎ジジ⬛︎⬛︎⬛︎…
同時にもう1つの自身の能力を⬛︎⬛︎⬛︎様は見つけていた。この世界に異世界のものを転移させた時、その物体は必ずこのように歪に変形し、混沌の塊となってしまう。最初はそのような物質なのかと思っていたが、他の物体を転移させても皆例外なく最後には混沌の塊になってしまうので、これは恐らく自身の能力だと⬛︎⬛︎⬛︎様は気が付いた。
同時に、
(似てる…凄く似ている)
その混沌の塊とこの世界に来たあの者が、とてもよく似ていると言うことにも。もちろん姿形は全く異なり、同一のものではない。しかし雰囲気とでも言うのか、または感じ取れる存在そのものからか、⬛︎⬛︎⬛︎様は混沌の塊と来訪者がどうしても同じものだと思えて仕方がなかった。
もちろんはっきりと根拠があるわけじゃあない。ただの勘違いや思い過ごしと言われればそうなのかもしれない。
だがもしもこの塊とあの来訪者が同じ混沌であるのならば、自分が存在そのものを歪めることで生み出したものであるのならば、あのことについて納得がいくのだ。
あの者が⬛︎⬛︎⬛︎の姿を見た時、⬛︎⬛︎⬛︎様は初めて会うのに、来訪者はまるで以前から知っていたかのような振る舞いをしていたと言うことを。
すると必然的にある結論が導き出される。
⬛︎⬛︎⬛︎様が、魔快黎様の心が存在する前から、この⬛︎⬛︎⬛︎の体は存在していると言うことを。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
(それにこの混沌を体は求めてる。俺の体は混沌を喰い物にしているのか。一体何時から、何処に存在していたんだ、俺は)
自身の頭の中に浮かんだ結論、更に混沌を喰らおうと欲する自身の体に⬛︎⬛︎⬛︎様は尚更困惑してしまい、自分自身が何なのかさえ分からなくなってしまう。
記憶のない以前の自分は何だったのか。何時から自分は存在していたのか。異界の物質を混沌へと変え、それを喰らうこの体は一体どんな謎を秘めているのか。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
(俺は、何だ!?)
自分は一体何者なのか。
⬛︎⬛︎⬛︎様には分からない。けれども、
「⬛︎⬛︎⬛︎」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎パ⬛︎⬛︎⬛︎パ⬛︎⬛︎キパキパキ…
「……」
フォロロロロ…
「この体は…俺の体は…知ってるのか? その答えを…」
この体ならば知っているかもしれない。自分が存在する前から存在していたと思われるこの体ならば。
ギギ…
「早く…能力と体の仕組みだけでもいいから把握しておかなきゃな。体が勝手に動くようじゃあ駄目だ、あの子達に何をしでかすか分かったもんじゃあない」
魔快黎様は謎に包まれた自身の体を見つめつつ、謎に包まれた自身の体が我が子達に害をもたらす前に何とかしなければと考える。
「ッ、と。あの子達が起きようとしてる。戻らないと」
フッ
しかし眠っていた我が子達が目覚めようとしているため、もうこれ以上の解明は出来ないと判断し、魔快黎様はすぐさま瞬間移動してその子達の元へと戻った。
カトンッ
「ん…んぅ…」
「んんー…! っはぁ、おきたー」
「めみあうるさい」
「ふぁあ…ママ…っ、ママー」
「おはよう」
次回の投稿もお楽しみに
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