厄災だから
お待たせしました
「⬛︎⬛︎⬛︎」
(さて…と)
ぎゅう…
「■■■■■■……⬛︎⬛︎⬛︎!」
自身の子を抱き抱えながら現れた者を睨み付ける⬛︎⬛︎⬛︎様。厄災そのものであり、禍々しい姿は非常に恐ろしい。しかしそんな⬛︎⬛︎⬛︎の姿にも現れた者は全くと動じず、むしろ敵意を剥き出しにし続けていた。
そして次の瞬間、
■■■■■!!
ズビュビュッと全身から鋭く尖った触手のようなものを勢いよく出すと、それを持って⬛︎⬛︎⬛︎の体を貫こうとする。その明らかな敵意と殺意が込められている攻撃より早く、⬛︎⬛︎⬛︎様は即座に手のひらで叩き潰し、身動きを封じた。
しかし、
「きゃあっ!」
「⬛︎⬛︎⬛︎」
(不味い、淫夢巫が!)
⬛︎⬛︎⬛︎様が一度力を振るえば、それは強大な威力を秘めた暴力となり、その影響はすぐ側にいる子にも出てしまう。それも悪影響として。
ただ腕を振るい落とし、手で相手を叩き潰した。たったそれだけのこと。
けれども厄災そのものが明確な意思を持って力を振るったと言うのは事実であり、威力は相当なものだ。加えて⬛︎⬛︎⬛︎様は自分自身がどのような存在であるのか、自分自身が何たるか、その記憶自体ないため、自身の力の強大さを知らなかった。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
(これが…俺の力…なの…か?)
かたかた…
「……!」
「⬛︎⬛︎」
(淫夢巫が震えてる…。やはりこの姿は…この子にとって恐ろしい姿なんだな)
故に厄災が振るう力に⬛︎⬛︎⬛︎様自身が驚いてしまい、そして使うことに躊躇ってしまう。側にいる我が子のことを恐怖させる力など、自分さえも分からない自身の力など、振るいたくもないからだ。
ずるり…
「⬛︎⬛︎⬛︎…⬛︎⬛︎⬛︎…」
ずるりずるり…
されどそんな⬛︎⬛︎⬛︎様のことなどお構いなく、その者はずるりずるりと体を歪に変形させ、軟体生物の如く指の隙間から這い出ていた。されど触手の先端は尚も鋭く尖って硬くなっており、自身のことを潰した手にザクリザクリと突き刺し、抉ろうとしている。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
(こいつ…! まだ動けるのか!)
体を傷付けられる感覚にハッと⬛︎⬛︎⬛︎様は気が付き、自身の意識と目を怖がっていた淫夢巫からその存在へと向ける。だが同じように手で潰そうとすればまた我が子のことを怖がらせ兼ねない。そうでなくともまた何かしらの悪い余波が出てしまうかもしれない。
そう思ってしまったがために、⬛︎⬛︎⬛︎様は攻撃の手を止めてしまう。
しかしその者は体をぐにゃりぐにゃりと湾曲させ、触手を⬛︎⬛︎⬛︎様の腕に突き刺しながら頭目掛けて登って来る。どんなに腕を攻撃しても埒が明かない、体をよじ登り頭を攻撃しなければ撃破することが出来ないとその者は判断したのだ。
⬛︎⬛︎⬛︎様も背に子を抱いているため下手に攻撃することが出来ず、自身の体を尚も登って来るその者の進撃を止められない。もしそれを止めようと力を振るえば、また先程のようなことが起こり兼ねないと。けれども止められなければこの者によって淫夢巫が手に掛けられてしまうかもしれない。自分に殺意を抱いているこいつが淫夢巫に全く攻撃しないと言う保証はないのだ。
だから何とかして止めなくてはならない。背に抱いている淫夢巫に何の影響も出さずに。
「⬛︎⬛︎」
(出来…るの…か…)
果たしてそれは出来るのか。全く制御出来ていない力を持ったこの体で。
自信などない、今度は自分の手で我が子のことを傷付けてしまうかもしれない。そう思ってしまっている⬛︎⬛︎⬛︎様は8本もある手を1本も出せないでいた。
しかしその者は待たない。攻撃して来ないのならば、こっちから一方的に攻撃するだけだと⬛︎⬛︎⬛︎様の腕を引き裂きながら向かって来る。
そして伸びる触手が腕を貫き続け、ついに喉のような部分にまで迫ろうとしていた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
「■■……!」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
(な…に!?)
が、その時、
「■■■……!?」
⬛︎⬛︎⬛︎
(何だこれは…俺…か?)
傷付けられた⬛︎⬛︎⬛︎様の腕の傷口から無数の針が突き出し、ドシュドシュッと歪で鈍い音を立てながらその者の軟らかな体を貫いた。しかも⬛︎⬛︎⬛︎様の意思に関係なく、厄災そのものである体が勝手に動き、そうしたのである。
「■■■■…」
思わぬ反撃に遭い、全身を引き裂かれん勢いでズタズタに貫かれたその者はギギギッと歪な音を立てながら驚きながらも悶えていた。
されどそんな自身の体の反射的な反応に⬛︎⬛︎⬛︎様も驚いてしまっており、呆然としてしまっている。これは自分がやっているのか、いや目で見ているこの光景は紛れもなく真実。自分の体が自分の意思に関係なく、敵意を向けている者を攻撃している。
しかも先程のような悪しき影響も起きていない。その余波も巻き起こっていない。
(これは…俺は……何…だ? 俺は一体…何なんだ……?)
だからこそ分からない。だからこそ理解が出来ない。
自分自身が何なのか、この体は一体何なのか、体にある力は何なのか。
分からない、何も分からない。
けれどもこれは知らなくてはならないことだ。
守るべき子達のために。
⬛︎⬛︎⬛︎様はこの時初めて、自分自身を知りたいと思った。
ぽろっ
「あっ……」
ころころ…
「⬛︎⬛︎」
(えっ)
けれども呆然としてしまったが故、思わず我が子を抱えていた力を緩めてしまう。すると全身を⬛︎⬛︎⬛︎様に預けていた淫夢巫は隙間からぽろりと溢れるようにすり抜けてしまい、そのままころころと転がるように体の上から落っこちてしまった。
背中から肩を通って腕の方へと、淫夢巫は向かって行く。
しかもその先には⬛︎⬛︎⬛︎様に敵意を向けるその者がおり、すでに自身を貫く無数の針から脱出していた。
そして自身に向かって転がって来る淫夢巫とそれを止めようと懸命に体を変形させている⬛︎⬛︎⬛︎様の姿を見て、その子が⬛︎⬛︎⬛︎様にとって大切な子であるとその者は悟ると、
ビシュシュシュシュッ!!
容赦なく無数の触手を持って淫夢巫に襲い掛かる。
ズドドドドドドドドッ!!
次の瞬間、肉をズタボロに引き裂く音を響かせながらその触手は貫いた。
「……■」
「⬛︎⬛︎」
「……マ…マ……?」
我が子を庇い、盾となった⬛︎⬛︎⬛︎の体を。
しかし、
「…⬛︎…大丈夫か? 淫夢巫。怪我⬛︎⬛︎⬛︎ないか?」
「ママ……ママ……」
⬛︎⬛︎⬛︎様は自身の体の一部だけ魔⬛︎⬛︎様に変身させると、体を貫かれながらも安堵させるような笑みを我が子に見せながら盾となり続ける。あとほんの少しで鋭い先端が自身に届く、自身のお母さんを貫いている触手が鼻先まで迫っている、そんな光景にかたかたと震え、恐ろしさに淫夢巫は涙を浮かべてしまう。
「こんぐらい⬛︎ともないよ。⬛︎⬛︎は強⬛︎からね」
そんな我が子に魔⬛︎⬛︎は優しくそう語り掛ける。お母さんはこのくらい何ともないと、お母さんは強いからこんぐらいじゃあ倒れないと。
「……でも……」
「大丈夫」
そして魔⬛︎⬛︎は何か決意したかのように瞳の奥を滾らせながら、
スッ
右手で優しく淫夢巫の顔を覆い、その目を隠す。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎はママがやるから」
優しい声で、親の声で。魔⬛︎⬛︎はそう我が子に告げた。
⬛︎⬛︎⬛︎
次の瞬間、禍々しき左顔面の方から魔⬛︎⬛︎様はその者の方をするりと振り向く。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
溢れ出る憤怒を剥き出しにしながら。
次回の投稿もお楽しみに
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