世界の⬛︎⬛︎⬛︎
新連載です。よろしければご覧ください。
此方から読んでもお楽しみ頂けますが、興味を持って下さった方は、前作完結済みの『アンバランス・ワールド』を読んで下さるとより一層楽しめます。
これはとある異界の物語にして、始まりの物語。
しかし始まりの物語であるものの、そこには何も存在しない、即ち無の世界があったわけでもない。
そこには有なるものが存在していた。
決して神が創りし世界ではない、『無い』ではなく、『有る』と言うものがそこに存在していたのである。
そしてその有の中に、あるものが存在していた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
「」
それは概念そのものであり、その概念を表す⬛︎⬛︎⬛︎。
『厄災』と言う概念であった。
いや、それともその⬛︎⬛︎⬛︎が存在しているからこそ、厄災と言う概念も同時に存在しているのかもしれない。
⬛︎⬛︎⬛︎が先か、厄災が先か。
何方が先に存在し、何方が片方を存在させているのか。
それは誰も知らない、誰も分からない。その⬛︎⬛︎⬛︎にさえも分からない。
されどそんなことなど大した問題ではない。何方が先であろうとも、⬛︎⬛︎⬛︎はたしかに厄災と言う概念として有の中に存在している。
⬛︎⬛︎⬛︎は有の中を、
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
と、生み出した無数の目で見遣る。しかしその目には何も見えない、何も見ることはない。
どんなに目を持っていても、その場に留まり続けていては一定範囲しか見えないからだ。そして⬛︎⬛︎⬛︎が認知出来る範囲の中には有こそあれど、それ以外は何もない。⬛︎⬛︎⬛︎が認知出来る範囲の外ならば、有と⬛︎⬛︎⬛︎以外に何かあるのかもしれないが、それを今の⬛︎⬛︎⬛︎が見ることは出来なかった。
故に⬛︎⬛︎⬛︎は動き出す。動くために必要なものを生み出して。
目だけじゃあいけない。他の器官が、組織がいると。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
形などどうでもいいと言わんばかりに、今は動ければそれでいい。範囲の外へ、見えない範囲の外を目指して、⬛︎⬛︎⬛︎は蠢いた。
やがて、手のようなもの、足のようなもの、鼻のようなもの、耳のようなもの、口のようなもの、牙のようなもの、尾のようなもの、体のようなもの、が⬛︎⬛︎⬛︎には出来る。
されど⬛︎⬛︎⬛︎は何も思考していない。こうしよう、ああしようと考えるのではなく、まるで現象であるかのように、⬛︎⬛︎⬛︎は自身の体を作り、存在させた。あくまでも⬛︎⬛︎⬛︎は有の中に存在する概念そのもの。存在してはいるものの、何かを考えるような物事を考えるようなことはしないのだ。
しかし⬛︎⬛︎⬛︎は出来た自身の体を持って、存在していた場所から動き出す。目的もなければ、行く宛もないままに。ただ自身の目に見えない範囲を超えて、その外へと向かって。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
すると体に生えている無限にも及ぶであろう無数の目はいくつもの有なるものを捉えた。蠢きながら、ギョロギョロッと無数の目を動かしながら、⬛︎⬛︎⬛︎は見たこともない有をいくつも見据える。
その『いくつもの有』こそまさに世界。並行に連なり、決して交わることのない世界達。大きなものもあれば小さなものもあり、その数は無限に及ぶであろう。当然無限の数ある並行世界を全て見ることは疎か、2つ以上の世界を見るなど並の者には易いことではないだろう。
しかし⬛︎⬛︎⬛︎は無数に生えている目でしかとその並行世界達を捉えていた。しかもその体は次元や時空や隔たりに縛られることなく、するりするりとすり抜けて行く。
そうして⬛︎⬛︎⬛︎は幾つもの世界を渡り歩いて行く。見たこともない世界の中を。
されど⬛︎⬛︎⬛︎は概念。
厄災と言う概念そのもの。
そんな⬛︎⬛︎⬛︎がありとあらゆる世界を蠢けば、その世界には当然影響が出る。
⬛︎⬛︎⬛︎のもたらし、振り撒かれる厄災が。
ただ⬛︎⬛︎⬛︎が通り過ぎるだけならば、ただ厄災と言う概念をもたらすことのみで終わる。
しかし⬛︎⬛︎⬛︎がその世界に居座れば、手足を止めれば、絶えず厄災がもたらされることとなる。
⬛︎⬛︎⬛︎が動くまで続けられる厄災、別なる世界へと行くまで終わらない厄災。
当然その世界にあるもの達は逃れられず、次々と厄災に呑まれて行く。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
だが、その世界は厄災に呑まれて終わりと言うわけではない。
むしろ厄災をもたらし終えた後なのだ。
⬛︎⬛︎⬛︎のもたらすものは。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
もたらされた厄災が終わるのと同時に、⬛︎⬛︎⬛︎の世界の侵食が始まる。
世界の隅々まで⬛︎⬛︎⬛︎の力は及び、時空さえも侵食して行き、秩序あったものを全て混沌へと描き変えて行く。有機物も無機物も関係なく、生きているものも死んでいるものも、陸海空も、何もかも。
そうして⬛︎⬛︎⬛︎は厄災に呑まれた世界を混沌へと変えてしまう。
秩序などない、⬛︎⬛︎⬛︎自身の体そのものである混沌に。
瞬間、混沌の塊となった世界そのものに、
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎は勢いよく齧り付く。目程ではないが幾つもの牙が歪に生え揃う口で。空であったものも、大地であったものも、海であったものも、生命であったものも、平等に混沌に変えられてしまった今、分け隔てなく⬛︎⬛︎⬛︎に喰われて行った。逃げることなど出来はしない、そんな行動や思考自体が出来なくなっているのがほとんどだからだ。
何しろ混沌をもたらし、それを喰い物としている厄災そのものが思考自体していないのだから。
最早これは現象と言った方がいいだろう。厄災が世界にもたらされ続けた果てに起きる現象そのもの。⬛︎⬛︎⬛︎が世界に居座った時点で、その現象が起きることは決定されてしまうのだ。ただでさえ⬛︎⬛︎⬛︎が来た時点で厄災がもたらされてしまうと言うのに。
もし⬛︎⬛︎⬛︎がとある世界に来訪するようなことがあれば、居座ることなく通り過ぎてくれることを願うしかないだろう。
だがしかし世界の数は無限。
当然その世界の中には、⬛︎⬛︎⬛︎が厄災そのものであり、自身達の世界に厄災をもたらす存在であると気が付いた者達もいる。そして居座るようならば強引にでも立ち退かせてやる、この世界から追放してやると立ち上がり、攻撃した者達もいた。
ドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!
⬛︎⬛︎⬛︎の異形の体にその世界の者達は自身らの誇る武器を次々と打ち込み、撃破しようとする。完全にその体が破壊されるまで、自身達の世界からいなくなるまで、如何なる破壊の力を持った武器の使用さえも厭わずに。
ドォンッ……ッッッッッ!!!
それこそ、国1つ滅ぼしてしまえる程の破壊力を持った爆弾さえ用いて。
されど、
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
厄災と言う概念を消去、もしくは追放するには、そんな力では到底無理であった。元より出来た⬛︎⬛︎⬛︎の体自体、全く作りが異なるものなのだ。
厄災そのものにして、厄災をもたらす。
混沌へと変え、混沌を喰らう。
そんな存在がただの爆弾やそれによる破壊で倒されるわけもなく、むしろその爆弾さえも、自身に敵意を向けるものさえも全て纏めて混沌に変え、⬛︎⬛︎⬛︎は喰らってしまうのだ。
そうして⬛︎⬛︎⬛︎は幾つもの世界を渡り歩きながら侵食し、混沌へと変えて行き、喰らっていく。
だが⬛︎⬛︎⬛︎は自身が描き変え、作り出した混沌を全て喰らっていたわけじゃあない。幾つもある大口に生える不揃いな牙で、グチャグチャと咀嚼するものだから、当然ボロボロとその破片が溢れ落ち、散らばった。
そして体の上に溢れたその破片は次々と積もって行き、次第に1つの塊となって行く。⬛︎⬛︎⬛︎がありとあらゆる世界に行き、混沌を喰らって行く度に、どんどんと積もり、少しずつ大きくなって。
しかしまだ⬛︎⬛︎⬛︎は現象にして厄災と言う概念。
自身の体のすぐ近くで混沌の塊が大きくなろうとも、⬛︎⬛︎⬛︎は一切気に留める様子はなかった。
次回の投稿もお楽しみに
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