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第6話 辺境の街、オーランド

 そこからは、順調に馬車は進んで行った。


「ラースさん、あれがオーランド領です」

「緑がたくさんあって素敵ですね。空気も綺麗です」


 王都は発展している分、緑などの自然は少ない。

こうした、自然に囲まれた地は憧れでもあった。


「そう言って頂けると嬉しいです。他の令嬢たちからは、虫が嫌とか田舎すぎるとか言われてしまう始末で」


 確かに、虫が苦手な貴族令嬢からしたら、この地は嫌になるのだろう。

その点、ラースはあまり虫には抵抗が無い。


「私は、素敵な所だと思いますよ」

「ありがとうございます」


 そうして、馬車は領内へと入って行く。


「あまり、人が居ませんね」


 中央街でも人がまばらに居る程度だった。


「そうですね。いつもはもっと活気があるんですが……」

「何かあったのかもしれませんね」


 現辺境伯である、クレインの父は一代でこの辺境の領地を王国1の麦生産地にまで育て上げた凄腕である。

そんな人の領地が、こんなに活気がなくなっているのは明らかにおかしい。


「父上に聞いてみましょう」


 ラースはクレインと共に辺境伯邸へとやって来た。


「父上はどこに?」

「二階の書斎におられます」

「ありがとう」


 クレインが書斎の扉をノックする。


「父上、クレインです。ただいま、戻りました」

「入りなさい」

「失礼します」


 扉を開けて中に入る。


「こんな状態ですまない。ラースさん久しぶりだね」

「バーロン辺境伯、ご無沙汰しております」


 辺境伯とは、王都のパーティーで何度か挨拶を交わしていた。


 バーロン・オーランドこそ、辺境伯にして一代でこの地を王国でも名の通る街にした一流の手腕の持ち主である。

そのバーロンが頭を抱えるほどのことが起きているというのだろうか。


「父上、これはどういう状況ですか? なぜ領民が外に出ていないのです?」

「実はな、すぐ近くの森で魔獣たちが暴走している。危険なので、戦う術を持っていない領民には避難してもらっているのだ」

「今まで、そんなことは一度も……」

「そうなんだ。あの森は守り神様によって魔獣が抑えられているはずなのだが」


 オーランド領のすぐ近くの森には、神獣が住み着いている。

その神獣が守り神となって、魔獣を街に侵入させることを防いでくれているのだ。


「あの、私から発言してもよろしいでしょうか?」

「ラースさん、どうぞ」

「その守り神に何かあったとは考えられませんか? 例えば、力が弱まっているとか」


 神獣の力が弱まると、加護の力も弱まるという。

もしかしたら、生命に関わる何か重大なことがあったとも考えられる。


「その可能性は私も考えていた所だった」

「神獣さんが居る所はわかるのでしょうか?」

「ああ、森の中央に大きな御神木があって、そこに住んでいるのだ」

「だったら、私をそこに行かせてくれませんか?」


 ラースなら、生命の危機にある神獣を治療することができるかもしれない。


「ラースさん、それはあまりにも危険すぎます! 魔獣が暴走しているんですよ」


 クレインからは止められてしまった。


「クレインの言う通りだ。伯爵令嬢のあなたをそんな危険な目に合わせるわけには……」

「私は、獣医でもあります。そして、今はクレイン様の婚約者です。守って、下さるのでしょう?」


 ラースはクレインのことを見つめる。


「あなたは、ずるいです……」


 そう言って、クレインは一呼吸置く。


「分かりました。ラースさんのことは私が守ります。父上、騎士を何人か借りても?」

「ああ、それは構わん。やってくれるか?」

「お任せください。危なくなったら逃げてきますから」

「来てもらったばかりにこんな厄介事が起きてしまって申し訳ない」


 バーロンは申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「いえ、構いませんよ。行きましょう」


 これが、オーランド領にやって来たラースの獣医としての初仕事となるのであった。

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