貫け、牡牛の心臓 その8
大学がクソ忙しくて遅れました
「ふう...サモン君はノックダウンできたけど....もう限界かなぁ...」
そう言ってこはくは地べたにへなへなと座り込む。 それと同時にこはくの体を覆っていた貝殻がはらはらと剥がれ落ちていく。『教義喰らい』は対象が意識がある間しか使うことができないからだ。アーちゃんかコウタ君に加勢しようと思っていたが、『教義喰らい』の発動コストの影響で体が飛んだり跳ねたりできるほどには動かない。とりあえずポーションをインベントリから取り出して飲む。HPバーを見ると回復をしてはいるが、体の疲労感は取れてくれなかった。
「そういやアーちゃんの方はどーなったかな〜」
「...そのじゅもんだめ。こっちがぐっと」
「アザッス師匠!流石っス!!勉強になります!!」
「...ふふん」
「...どういう状況?」
少し時を遡って、牛闘鬼がコウタとぶつかり合い、アザトースとカイザが相対した頃。
「...「ひかげん」ちがう。「てかげん」がただしい」
「......ウルセェ」
「...こえ、あなたのほーがおおきい」
「ウルセェ!!」
アザトースには彼が怒り出した理由は分からなかった。ただ思ったことを伝えただけなのに。カイザは己の魔導書のページを破り取り、アザトースに向けて飛ばしてくる。
「気をつけてください!!それ爆発します!!」
「...なる」
牛闘鬼と応戦していて余裕がないだろうに、コウタが大声でアドバイスを伝えてくる。その言葉にカイザは苦い顔をしながら舌打ちしていた。爆発するというのなら軌道をそらせば良いだろう。
「...まかせた。白縫」
そう言いながらアザトースが飛んできた魔導書の一部に向かって手を伸ばすと、手首の辺りから粘着質な白い糸が勢いよく射出される。糸がべったりとページに張り付くと、アザトースは糸の伸びている腕を振り上げて軌道を強引に上にずらす。直後、ページに刻まれた魔法が爆発して、アザトースの頭上で黒い煙が噴き上がり、足元にページの切れ端が舞い散った。手をブンブンと振って糸を引きちぎった後、アザトースはカイザの方を見る。彼の顔は焦ったような感じがしたが、アザトースにはいまいち分からなかった。
「へっ...牛闘鬼をボールみたいにポンポン投げれたカラクリはそれか」
「...まぁ」
最初の一回は普通に『ねじれた空間』を使って投げ飛ばす...厳密には突進のベクトルを操作したのだが、ガス欠が早いのもあって連発することはできなかった。それに対して牛闘鬼はタフネスの塊。投げ飛ばし続けているだけではほとんど消耗しない。かといって下手に魔術で攻撃すると心臓ごと消し飛ばしてしまうかも知れない。そんな時に
アザトースの意図を察したのか、白縫が勝手に動いて糸で投げ飛ばしてくれたのだ。しかも糸でアザトースの体の動きを補助してくれる。ここまで白縫に帽子作りと右腕を隠すくらいにしか価値を見出せなかったが、予想外に役に立つ。
「...おい、お前」
「...おまえちがう。アザトース」
「そうかよ。んじゃアザトース。足元注意だ」
そういうカイザに訝しみながらアザトースが足元を見ると足元に落ちてきた大量のページの切れ端、それに書き込まれた呪文が光を帯び始め、すぐに爆発した。
白縫は服の下にインナースーツ的なものを生成してアザトースの動きを補助しています。




