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最悪の邪神がログインしました。  作者: 歯車ぐるり
見上げるがいい、唾棄すべきあのアルデバランを:上
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だいめいきゅう

 混沌の神、アザトースは今その生において最大の苦難を迎えていた。歩けど歩けど終わりのない道のり、進めど進めど変わり映えのしない景色。アザトースがいる場所はまさに無限回廊、逃げることの叶わない死の迷宮と呼ぶべきだった。 かれこれ30分は歩き回っているが出口が全く見つからない。出口を示すと思われる記号を頼るも失敗続きだった。アザトースの力を持ってしても脱出は不可能かと思わず考えてしまうほどに今いる場所は広大で、そして複雑だった。


「...むーりぃー」


 ヘタリと地面に座り込むアザトース、その目の前には「新宿駅」の文字が煌めいていた。なぜこんなことになっているのだろうか、アザトースは疑問に思い自らの記憶を掘り返し始めた。


 コウタとコンタクトを取ることが来週まで不可能になったアザトースだったが、とりあえず目の前の神父にイケブクロまでの道のりを聞いたところここから電車に乗ればいいと簡単な答えが返ってきた。アザトースとしては朗報だったが、同時に来週までの7日間をどうやって過ごすかを考えなくてはならなくなった。ヒトと7日間とアザトースの7日間では意味が全く異なる。アザトースは七日あれば世界の一つくらい簡単に作り出せるのだ。ただ無為に過ごすのでは虚しすぎる。自宅に戻ったところでニャルラトホテプの小言とトルネンプラ楽団のやかましい音が待っているだけだ。ならばこのゲーム内で出来ることを何かやってみた方が良いだろう。そう決めたアザトースはついさっきコウタに抱えられて降りた階段を登って行った。








「...はろー」


「どのツラ下げて戻ってきたのサ。全く、今ボクの腹が満たされているから良いものだがネ、腹が減っていたら食い殺してたかもしれないヨ?」


 オグハの前には、ヒトの死体がうず高く積み重なっていた。どのヒトも武器をもち、着ている物も戦うことを意識した装備だった。おそらくオグハに戦いを挑んだであろう彼らは、オグハが口を開くたびにその大きな口の中に消えていった。


「こいつらが気になるようだネ。こいつらはこのオグハを殺せると思ったバカ共ダヨ。オスカーすら倒せないような奴がボクの威光に耐えられるわけないのにネ、本当に『人でなし』とはどうしてこんなに考えなしにポンポン死地に飛び込むのかネ。カケラたりとも理解できないヨ」


 そう言うとオグハは残った一人を着ていた鎧ごと飲み込んだ後、大きく一回ゲップをした。辺りにきつい血の匂いが充満したが、アザトースは特に気にしなかった。


「奇妙なガキだネ。同じ姿の生き物が死んで、しかも食われているというのに顔色ひとつ変えやしないなんてネ」


「...かおいろかえたほうがいい?」


「別にしなくてもイイヨ........それデ?わざわざボクに会いにきたということは我が同胞の居場所を聞きにきたのダロ?答えてヤルヨ。感謝に咽び泣きながらどの神か言ってみたマエ」


「...いいひまつぶししってる?」


「...........ハァ?」


事情を説明するとオグハは凄まじく不機嫌な声でイケブクロまでの電車の途中で降りれるシンジュクという土地にに行くといいと言ってきた。オグハ曰くシンジュクの繭の塔(コクーン・タワー)と呼ばれるところに神が一柱住んでいるらしい。もちろんこのオグハほどの格では無いがネと一言付け足していた。その後オグハは自分がいかに優れている存在かを長々と語っていたが、そんなものに全く興味のないアザトースは無視して階段を降っていった。降りていく間に怒声が飛んできた気がしたが無視することにした。狭間駅のホームに戻り電車が来るのを待っているとグリム神父が話しかけてきた。


「もう向かうのかね?」


「...ちがう。シンジュクいく」


「なるほど、神殺しの肩慣らしというわけか......お嬢ちゃん、もし鍛冶屋のアンドレに会ったら私の名前を出すといい。あのヒゲは確かシンジュク地下で石掘りをしていたはずだ」


「...はい」


 電車のドアが閉まる直前、グリム神父が何か言っていた気がしたが、アザトースには聞こえていなかった。


 回想が終わった後、アザトースは誰のせいで今迷っているのかを考えたが、考えたところで状況が変わるわけでもなく何の意味もない行為だった。一度は魔術で天井を破壊して地上に出ようともしたが、天板が落ちてきて死にかけたので諦めた。その後うまくシンジュクの地下から抜け出せる方法が思いつかないまま、ただただ時間だけが過ぎていった。このままずっとここにいるくらいなら一回死んで狭間駅に戻ろうかと考えたとき、転機は訪れた。


「すげぇ破壊音がすると思ったら嬢ちゃん、あんたがやったのか?」


 声に驚いて振り向くと、背が低い筋骨隆々の、30代ほどに見える髭の濃い男がアザトースを見下ろしている。その手にはよく手入れされた一振りのハンマーが握られていて、腰にはツルハシを下げていた。


「......だれ?」


よくぞ聞いた、俺はスーパー鍛冶屋のアンドレだ。男はそう言うとニカっと男臭い笑みを浮かべた。

来週は死ぬほど忙しいので間違いなく更新できないです。

追記13000PVを超えてました。

追追記14000PV超えました。

追追追記15000PV超えました。

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