燃骸
サブタイの読みはもえがらです
「...もーいーよー」
横からアザトースの声が聞こえたのでコウタが目を開けると、目の前にはオスカーがなぜ死んでいないのか分からないほどの重体で倒れていた。胸から下と左腕が完全に消失していて、六つあった瞳も半数が潰れている。全身から溢れていた炎は今にも消えそうなくらい弱々しくなっていて、もはや放っておくだけでも確実に死ぬだろう。まずはポーションを飲んで失われた体力を回復してから、オスカーに疑問をぶつける。
「オスカー、あんたはどうして戦ったんだ?」
「黒曜ノ騎士ヨ、ソレハコノ身ガ正シク試練ダカラダトモ。私ノ火ニモ耐エラレヌヨウナ未熟者ニ、神殺シガ出来ルトハ到底思エヌ」
「ふーん、なるほど...ちょっとまって今神殺しとか言わなかった!?」
「言ッタ。ダガソノ説明ハ私ノ役割デハナイ。......ソレヨリモ『人でなし』ノ少女ヨ、実ニオモシロイ解決策ダッタゾ。」
「...ふふん」
自分の隣で薄い胸を張ってドヤ顔しているアザトースを見て、コウタは何かおかしいと気づく。さっきまでついていた体の一部分が欠けているような...
「.........なんで左手ないんですかアザトースさん」
「...つかった」
聞いた話を要約すると魔法の触媒として左腕を使用したらしい。何を食べて暮らしたらそんな発想が出てくるのか理解できなかったが、それのおかげで勝てたのであまり強くは言えなかった。とりあえず止血のために包帯を巻いておくことにした。
「...いや、まぁでもリスポーンしたら左手も生えてくるでしょうし問題なしなんですかね...でもアザトースさん、その行動は人としてアウトなので二度とやらないでくださいね!約束ですよ」
「.............だいじょぶ。もうできない。ささげたから」
さらに問い詰めたところ、左腕は生贄にしたから二度とこの世には戻ってこないとのことだった。コウタは思う、この人はだいぶ、いやかなり常識とはズレている。そばでブレーキをかけてくれる人がいなければ絶対にやらかす。
「...おこってる?」
「怒ってないです。ちょっと受け止め切れない事態に驚いているだけです。とにかくそういう自分の体を投げ捨てるようなことはしないでくだいね」
「...はい」
コウタが機嫌を損ねていることはヒトに関して無知なアザトースでも理解できた。こういう時にどうしたらいいのか人付き合いに疎いアザトースにはいい台詞が思いつかず気まずい沈黙が続いたが、それを断ち切ったのはオスカーだった。
「夫婦漫才ハ終ワッタカネ?」
「違います。僕たちそういう仲ではないんです」
「...ねぇコウタ。めおとってなぁに?」
「聞かないでください」
二人の様子を眺めながらオスカーは楽しそうに笑っていたが、いきなり苦悶の声を上げる。驚いた二人がオスカーの方を見ると、肉体の残った部分が灰になり始めている。オスカーも灰に変わりつつある体を確認するとコウタとアザトースの方を見据えて遺言を伝える。
「サテ...コレデ試練ハオシマイダ。黒曜ノ騎士ヨ、ソシテ『人でなし』ノ少女ヨ。アマリ死ンデハイカンゾ」
当たり前といえば当たり前のような、それでいて深い意味を持っているような言葉を伝えたのち、にこりと笑いながらオスカーは灰となって消えていった。それと同時にアザトース達を囲んでいた炎の壁が消え去る。レベルアップとアイテムの取得を伝える声が止まったあと、おもむろにコウタが口を開いた。
「フッ...忠告、この爆裂無双最強戦士 ...いや黒曜ノ騎士コウタの胸に刻むとしよう」
「...コウタはろーるぷれい?のときどうしていつもフッ...っていうの?」
「フッ.................そんなことよりクリア報酬確認しませんか?」
もっと真面目な幕引きにした方がよかったかなと逡巡してます。書いていていつもこれでいいのか?と不安なので感想をもらえると嬉しいです。評価ポイントやいいねを頂ければ狂喜乱舞します。
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