プロローグ ver girl
周りがどんどん恋人とか作ってく中で、私は恋人にはそこまで興味がなかった。私には、恋愛よりもアイドルを推す事の方が重要だったから。推しの幸せが自分の幸せだから。でも、まさか推しの幸せに私が含まれる日が来るなんて、思ってもいなかった……
「沙季?今日ライブじゃなかったっけ?」
私、桃野 沙季は、ママの声に目が一気に冴えていった。
「やば!もう6時じゃん!?」
そして、布団から飛び起きてリビングに向かった。
「おはよ!ママ、起こしてくれてありがと!」
「ほらほら、慌てないの。朝ご飯の準備できてるから食べて支度しなさい?」
「えへへ、ありがとー!」
そんないつも通りの会話をしながら私はママが用意してくれた朝ごはんを手早く食べてメイクとか準備とかを始めた。
今日は、待ちに待っていた推しであるスターズのアリーナツアーのファイナルがさいたまスーパーアリーナで行われるのだ!
私は100倍近いとも言われていたチケットの倍率を見事に引き当てて今日は会場で生で見ることができるのだ!私はアイドルという存在を推し始めてからもう5年以上になるけど、スターズはまだメジャーデビューする前から追っていた存在で、今でこそこうして大きな会場でのライブだったり大企業とのタイアップだったりでメディアとかの露出も多くなってファンもすごくすごく増えたけど、私はまだスターズのみんなが普通にショッピングセンターとかCDショップとかでイベントをしていた頃からずっと行っていた。
そんな推し続けているアイドルの1stツアーのファイナルということで東京に住んでいる私としてはここまで早起きして行くこともないとは思ったけど、やっぱり1stなので早いうちに会場に行っておきたかったので、私は素早く支度を済ませて家を飛び出した。
「うわぁ!やっぱり大きいなぁ……そういえば今日の席どこなんだろ?」
私は会場であるさいたまスーパーアリーナの広さに毎回のことだけど驚きながら改めてチケットを確認した。
私のモットーとして会場内に入って案内を見るまでは場所の確認はしないと決めていたのでワクワクしながらも物販に並んでいた。
早めに来てはいたけど既に物販には数百人以上並んでいて、改めてスターズの人気の高さを感じながら私はニコニコしていた。
まさかこの後、あんなところで彼に会う事になるとはこの時の私は1ミリも思っていなかった。