雪だるま令嬢、王子に復讐す
とっても寒い国の王子様が、両手を複雑骨折し、長らく禁欲生活を強いられていました。
わたくしは、雪に生まれ変わりますわ! オーホホホ!
衛兵からの報告。スノウの最後の言葉。
あの日、氷山へと追放したのが、
いけなかったのだ。
かわいいエリゼのボインボインに埋もれたい僕は、絶壁の彼女に対し、あらぬ罪を捏造し、悪女の烙印を押し婚約を破棄したんだ。まぁ、
いけなかったのだ。
笑った。だって雪に生まれ変わって、何になると言うのだ。エリゼと、ぱふぱふしつつ、バカなヤツと笑ったのが。それが、
いけなかったのだ。
その年は嘘のように大雪が降った。城にて名物の雪まつりの準備にも、不足が無いほどに。エリゼも首元迄、きっちり隠すドレスを着込み、つまらなくなった僕。早く溶けろと呪ったのが。多分、
いけなかったのだ。
庭園では選ばれし芸術家達が、雪だるまの制作に必死になっていた。コンテストがあるからだ。優勝者には金貨ひと袋。用意されていたそこから数枚くすねたのが。絶対、
いけなかったのだ。
父上がお風邪を召され、僕が審査員長に任命された。パイWが大きなのが好みだとの情報が独り歩きし、大きなものが好きなのだろうと、巨大だるまを創る参加者達。
それに対して、ただの雪だるまじゃつまらない、出来るなら、エリゼの様なバインバイン雪だるまがいい。と戯言を吐いた。コトも、
いけなかったのだ。
せめて、前夜祭における氷の女神に捧げる祈りの時に、スノウの冥福を祈って於けば
よかったのだ。
見上げる様にそびえ立つ雪だるま達が、僕を見下ろして来ていた。芸術家達が心血注いだとあり、どれもこれも未だかつてない、プロポーションのだるま達。だるまにパイパイはちょっと、
いらなかったのだ。
全体的の重量を支える為に、この年の雪だるまはしっかりと雪を固められ創られていたんだ。僕は乱立する雪だるま林の中を、審査をする為に、歩いたのだ。
そしてつい、形がお椀型で実に好みなそれに、触ってしまったのが、恐らく、
いけなかったのだ。
『オーホホホホ!』
スノウの笑い声が聴こえてきた。そして。
ド!ド!ドザ!ドドドド……、……、ドサササァァァ!
「ヒィィィィ」
「殿下ぁぁぁぁ」
下敷きになったのだ。
雪って。重い。死にそうになった。
無事に掘り出されたが、寝込んでいる。
ああ、雪起しが来た。窓から聴こえる風の音が。
『オーホホホホ!』
聴こえてしまうよ、ごめんなさい、スノウ。
謝っても。
きっと、もう遅い。