07
「旦那様は、みんなから愛されていますからね」
お父様はとても優しい。身分なんて関係なく、誰とでも分け隔てなく接する。それこそみんな家族のように、だからこそ使用人たちも、ビックリするような事をお父様に、平然と言ったりする。信頼関係があるのだ。
「もしかしたら、私達の結婚を許してくれるかなと思ってたけど」
「……やはり結婚となると、難しいのでしょう」
マークが気遣う様に優しくそう言う。分からなくはない。いろいろあるのだってわかる。
「やめよ、もう終わった事、私達は国を作る!」
「はは、お嬢様のお気に召すままに」
「なに? 嫌味?」
私が少しむくれてそう言うと、マークが面白そうにして「そんなつもりは」と微笑む。なんとなく、腹が立ったので私はマークのわき腹を小突いた。
「おふっ」
私の不意打ちが意外と効いたらしく、マークが変な声を出してうずくまる。
「ふんっ」
形ばかりの怒った声を私は出した。しばらくして、回復したらしいマークが上体を起こすと、私は疑問に思っていた事を問いかけた。ずっと考えていたけど、どうすればいいか検討もつかない。
「ところで国を作るにはどうすればいいの?」
「……考えなしで言ってたのですか」
マークは頭痛に耐えるように右手をおでこに当てつつ、呆れたように言った。
「しょうがないじゃない……少し前から理想の国を考えていて、今日とっさに口から出ちゃった感じなのよ」
「セフィらしいというか」
おでこに当てていた右手で、私の頭を軽く撫でたマークが微笑んで私を見つめる。なんか悔しいなとむくれつつ、マークの言葉を待った。
「私もわかる訳ではありませんので、あくまで私の考えですが」
前置きして、マークが語り出す。
「国とは、極端に言えば、ただの人の集まりです、少人数の集落から、もっと人が集まり、街になり、街が増えて、国になる、そんな感じでしょうか」
「極端だけど、そういう事かもね」
「はい、あとは重要な要素として、指導者がいなければ、ただの人の集合になってしまうという事です、つまり指導者を中心とした大きな人の集まりが国でしょうか」
マークの説明に私はとても納得した。そういう事でほとんど合っているんじゃないか。
「じゃあ、どこかに人を集めて、どんどん大きくしていきましょう!」
「実際は、そんな簡単な話じゃありませんよ」
呆れたようにそう言ったマークが言葉を続ける。