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ただ婚約破棄される話

リハビリとして短編を書いてみました。



「エルフリーナ・シュテルクスト!貴様との婚約は今この時をもって破棄させてもらう!」


そう大声で叫んだのはアルバート・コーニング様。

アフマク王国の第一王子で、たった今私の元婚約者となったお方だった。


「ふんっ!悪事がバレて言葉もないようだな!まぁ、貴様がどんな言い訳をしようがこの婚約破棄が覆ることはないっ!」


「姉上、見損ないました。いくら可憐なエリザベート嬢に嫉妬したからといって陰湿な行いをしてもいいことにはなりませんよ!」


「まったくだ!エルフリーナ。か弱いエリザベート殿に酷い仕打ちをするなど…貴様には失望したぞ!」


「貴族の手本でなければならない公爵令嬢ともあろう貴方が、爵位を振りかざして健気なエリザベート嬢に非道な行いをすなど、理解できませんね」


アルバート様とともに私を非難するのは、次期公爵予定で実弟のリオリスと幼なじみで次期騎士団長予定のイディオと次期宰相予定のアンベルシのこの国の次代を担う3名。


ちなみにその悪事とやらは全て身に覚えのないのですが…そもそも全員の口から名前の出たエリザベート様とは初対面ですし、アルバート様の後で可憐でか弱くて健気なようには到底見えない勝ち誇った顔で私を見ておりますけど?


ふぅ…


幼き頃に出会った時から残念なお方だとは思っておりましたが、まさかここまでとは流石の私も予想できませんでしたわ。しかも、次代の国の中枢を担うはずの面々までもが揃いも揃ってこんなところでこんな馬鹿なことをしでかすなんて…


これはもう、アフマク王国は長くはありませんわね。


まさか王国の貴族だけではなく、近隣の要人の方々も参列されていてる国王陛下の生誕を祝う国事行為の真っ最中にこんなことを声高にお話になるなんですもの…しかも私の隣には主役である国王陛下と王妃様がいる状況ですのに…


「父上、母上!今申し上げた通り極悪非道なエルフリーナとの婚約者は解消し、ここにいるエリザベート・バトゥステ男爵令嬢を新しい婚約者といたします!」


どうやら何もわかっていらっしゃないようですわね。このような場で婚約破棄と同時に別の婚約者を堂々と宣言されるなんてご自分が不貞をしたと言い触らすようなものですのに…残念を通り越してお可哀想なアルバート様。


「あぁ、エリー!これで誰にも邪魔されず君と結婚できる!」


「アルバート様っ!エリーは幸せですっ!」


「エリザベート嬢を幸せにするのが僕でなかったことは本当に残念です…」


「リオリス、こればかりは仕方ない。エリザベート殿が選んだことだからな」


「そうですよ。互いにエリザベート嬢をかけて正々堂々と競いあった結果なんですから、祝福しなくては」


「お前達の分までエリーを幸せにすると誓おう!」


どうやらアルバート様だけが現状を理解していないわけではなかったようですわね。会場が静まり返っていることにどうしてお気づきにならないのかしら?

王妃様なんて気を失われて何処かに運ばれていってしまったのに…


「〜〜〜この大馬鹿者っ!今、自分がなにを申したのか分かっておるのかっ!」


「父上、何故そんなに怒っているのですか?エルフリーナを悪行は事実であって…」


「黙れっ!お前がなにも分かっていないことがよく分かった!これ以上なにも喋るなっ!幼き頃から王子として色々と足りないお前を国王にするためにシュテルクスト公爵に無理を申してなんとかエルフリーナ嬢と婚約することが出来たというのに、全てを台無しにしおって!」


「父上が無理を言って婚約した?なぜ国王である父上がそんなことをしなければならないのです?」


まさかとは思いますが、アルバート様はこの婚約が他にご子息のいない国王陛下が王国の今後を憂いて私の父であるシュテルクスト公爵にどうしてもと頼みに頼み込んで成立したことを本当にご存知ないのかしら?


「お前というやつは…たった今申したであろう!お前が、色々と、足らないからだとっ!」


「なっ!私のどこが足らないというのですかっ!」


「その昔から自分の都合の良いことだけしか聞かない所だ!むしろお前は足らないことだらけだっ!」


「そのようなことはありませんっ!私は父上よりも立派な王になる資質があるのですから!」


「お、お前はというやつはっ!「陛下よろしいでしょうか」


「・・・」


いつもは温厚な陛下がこれ程までにお怒になっているにも関わらず、割って入ることができる人物はこの王国ではただ一人。


「なっ!公爵!父上の言葉を遮るとは、「黙れ。貴様などに発言を許してなどいない」


アフマク王国を含め多くの近隣の国々は強大な力をもつドルナシオン帝国からの多大な支援によって成り立っており、その強大な帝国の国王陛下の実の弟で私の父であるシュテルクスト公爵だけ。


アフマク王国の真の支配者であり、一番怒らせてはいけないお父様がこれ程までにお怒りになるなんて…これはもうどうにもなりませんわね。


長くないどころか明日にはなくなってしまうかもしれませんわ。


「ま、待て公爵!アルバートのことはこちらで厳正に対処する!2度とこのようなことは…」


「陛下。私はそのお言葉をあと何度聞けばよいのでしょう?今まではエルフリーナに乞われて目をつぶっていましたが、今回のことばかりは見過ごすわけにはいきません」


「そ、そんな!エ、エルフリーナ嬢、どうかエルフリーナ嬢からもお父上にもう一度だけ機会をくださるようお願いしていただけないだろうか?!」


ニコッ




「お断り致します」




「へっ?」


「アルバート様自らが望まれた婚約破棄であり、公爵令嬢としてこれ以上ないほどの辱しめを受けた私が、なぜそのようなことをしなくてはならないのでしょうか?今後はアルバート様のお守りは新しく婚約者になられたエリザベート様がしてくださるようですし、他にも愚弟のリオリスやイディオ様、アンベルシ様までもいらっしゃるんですもの。これ程心強いことはないかと思いますが?」


「・・・」


流石に国王陛下もご自分の発言がどれほど恥知らずであったかお分かりになられたようで、私の少々失礼な発言に何もおっしゃることはなかった。


「お父様、もうここにいる義務はないようですし、私たちは帰った方がよさそうですわ」


「そうだな。では陛下、我々はこれ以上ここにいる意味もないようなので失礼させていただく」


アルバート様たちが何か言っていたようだけど、振り返ることなく私とお父様の進む先では人垣割れ道ができたのですんなりと会場を後にすることが出来た。


「これで帝国との往復生活から解放ですわね」


「そうだな、もう二度とここに戻ることはない」


「次はなんていう国になるのかしら?」


「どこも自分達の領土を広げようと必死だからな」


シュテルクスト公爵とエルフリーナを乗せた馬車はそのままドルナシオン帝国へと向かい、この婚約破棄から僅か半年後にアフマク王国は複数の隣国からの侵略によってあっけなく滅んだ。





そして時を同じくしてドルナシオン帝国に一人の女王が誕生する。


その女王の名はエルフリーナ。


突然帝国史に登場したその女王はたぐいまれなる統治により帝国の更なる発展を成し遂げ、500年の時を経たいまでも帝国で知らぬものはいない伝説の女帝として語り継がれるのだった。



お読みいただきありがとございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 元婚約者がアレ過ぎて鍛えられたのか(^_^;)
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