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真夜中の可憐

「寺尾さん?ちょっと見てもらって良いですか?」寺尾と一緒に外観を担当している尾上おのえ 涼子が寺尾に声を掛けた。「あぁ、この森の部分なぁ、もっとモスグリーンぽく、この辺かな?」寺尾はフォトショップのカラーチャートのグリーンの濃い色の部分を指指ゆびさして言った。

「これですね…あっ!本当だ、凄い良い感じになりましたね。流石さすがは寺尾さん」

「尾上もまだまだだな。休みの日とか近くの公園なんかで良いから自然を見に行くくらいの事しなきゃ駄目だぞ」

「野中さん、この女性の髪の毛って明るめのブラウンと暗めのブラウン、どっちが良いと思います?」井上が先輩の野中 聖子に聞いた。

「ウーン…このキャラってさぁ、滝沢さん言わく、ちょっとSキャラでしょ?だったら思い切ってこの辺の色、付けてみ」野中はカラーチャートの青めのパープルを指指ゆびさした。

「えーっ?これッスか?」少し不満げに井上が返した。

「うゎ!本当だ、なんかメチャSぽくなった」


こんなやり取りでチーム滝沢の作業は進められて行った。そうこうしている内に、時計の針はニ時を少し回った所を刺していた。

「もうこんな時間か。よし!皆んな、そろそろ切りの良い所で今日はもう上がろう。部長からタクシーチケットをもらっといたから各人取りに来てくれ」

「あー、お疲れ様でした」皆んな椅子の背もたれを利用して背伸びした。

こうして、夜更けの都心から一様に散り散りに帰って行った。

「ちょっと小腹が減ったな、運転手さん、すみませんが途中、適当なコンビニに寄ってもらって良いですか?」滝沢は惣菜二種類と500mlの発泡酒を買って帰った。

「ただいま」もうすでに眠っているであろう妻が待つ家に挨拶をして入った。ダイニングテーブルに買って来た惣菜と発泡酒を置いて椅子に腰をかけようとした滝沢は、ふと、リビングから薄灯うすあかりがれている事に気が付いた。

「あれ?何だろう、可憐のヤツTVでもけっぱなしで寝たのか?」忍び足でリビングを覗いた滝沢はギクッとした。TVの前で、まるで魂が抜けたかのように可憐が座っていた。

「おい、可憐?どうした?」滝沢は恐る恐る可憐に声を掛けた。

すると可憐はゆっくりと滝沢の方を向いて「あぁ、龍翔君、お帰り」と力なく答えた。

「可憐?どうしたんだ」言いながらTV画面に目をやると、滝沢が世に出した4作目のゲームキャラクターの女性が映り込んでいた。

「龍翔君がアタシと出会った後、直ぐに作ったゲーム…してたの」と可憐らしくもない気持ちのもらない返事を返した。

「ゲーム…してたって…可憐…お前、ゲームなんてした事、なかったじゃないか」

「ウン、なんかねぇ…龍翔君どんなゲーム作って来たんだろうって、ちょっと興味が湧いて…ね…」と言い終わるか終わらないかの内にその場に横たわってしまった。滝沢は訳が分からないまま、可憐を抱きかかえ寝室へと運んだ。

滝沢は再びダイニングに戻り、発泡酒をグビッと一口飲んだ。そして、頭をクシャクシャとむしった。

「今が正念場なんだ。今、頑張らないと今まで積み上げて来た事が、全部水の泡になってしまうんだ。可憐…スマン」可憐の今までに見た事がない異変をの当たりにして、滝沢は可憐に対して申し訳ない気持ちがあふれて来るのをグッとおさえ付けた。しかし、滝沢はこの時にまだ気付いていなかった。可憐の心の中にポッカリといてしまった穴に。この時に可憐の心の空虚を埋める事が出来ていたら、おそらくは、あんな事にはならなかったはずなのだ。

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