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四皇帝 ドンボルゲ

「クソ!川上め。バックにやつくとは流石のオレも予想出来なかったぜ。しかし、事、プログラミングに関しては、オレの方が上だって事を思い知らせてやる。こっちにはまだ四皇帝の内の三人が残ってるんだ。コイツらを使って滝沢のクソ野郎を一生閉じ込めてやる」



「イカン!瀬戸君、これはマズイ事やで。こうなったら別ファイルに用意しとった "あれ" を使うしかあらへんで」森野のたくらみ察知した川上は、研究室で看護師の瀬戸 愛鈴いすずに対して耳打ちをした。

「そんな…先生、危険ですよ」川上の奥の手を聞き、愛鈴は川上を止めようとした。

「それは分かっとる。せやけどもう乗ってもうたんや、滝沢さんの泥船どろぶねにな…

いざと言う時の為に、古川君を呼んどいてもらえるか?ボクの研究を一番理解しとるのは彼しか居らん」川上は川上教室の講師、古川 準二を呼ぶように愛鈴に指示をした。


一方、ゲームの中では…

「な…なんだい?この町は」

「暗ーい、空だけじゃなくって住民も皆んな根暗ねくらじゃん」ゲームの世界を知らないフィリップスとスターシャはクラウドタウンの曇天どんてんとした雰囲気に驚き、気分まで滅入めいってしまった。

「ここは本来、サニータウンと呼ばれた日照時間が長く、晴天率も良い町だったんだ。しかしドルゲマの住処すみかでもあるドラゴンいなタイガーストリームが近い影響で、このような曇天の町になってしまったと言う設定になっているんだ」リューショーは自分達で設定した内容を二人に説明した。

「しかしよぉ、なんかおかしくないかい?リューショーさんよぉ」ヘイグが気になっていた事をリューショーに問うた。

「あぁ、四皇帝 ドンボルゲの事だろ?恐らく森野ヤツのデータ書き換えだろう。きっと何かある。それもその後のストーリー展開を考えても、この町の中でな」ドンボルゲは本来、スポークの森の出口に出て来る設定になっていた。それが出て来なかったと言う事は、森野の何かの企みがあっての事と思われた。そしてリューショーの予想は見事に的中した。

「ふぇっふぇっふぇっ、待っておったぞ、おろかな勇者気取りの英雄さんどもよぉ。今から我らがこの町を滅ぼしにかかる。この町が全滅すれば、お前達はこの世界に一生閉じ込められる運命になっておる。言っておくがお前さんの得意のブレイブ・エン・ズラックは、この町では使えないように書き換えられておる。果たして住民を一人でも救えるかな?者共ものども!かかれ!」ドンボルゲの号令を切っかけに、曇天の空から大勢の魔物達が舞い降りた。

「な…なんでこの世界に魔物が?ヤバイ!皆んな、パーティー攻撃は無理だ!散り散りになって一人づつで戦うしかない。ヘイグとスターシャはHPがヤバくなったらオレかフィリップスのところに行って、ヒーリング・マジカルを受けてくれ。皆んな、武運を祈る」クラウドタウンの住民を一人でも救う為に、一同は町中に広がって個々に戦う事をいられた。


「サンダー・ボルテージ」スターシャ得意の雷系サンダー呪文マジカルが魔物のむれ殲滅せんめつした。

「ウィンド・スプラッシュ」フィリップスも風系ウィンド呪文マジカルで魔物達を襲った。

「ファイヤ・スラッシュ」リューショーのMPを消費する炎系全体攻撃の剣技により、こちらも魔物の群を一掃いっそうした。

「ウィンド・ストライク」全体攻撃の手段を持たないヘイグは、ダイヤモンドアックスを使った技でドンボルゲ一体に集中攻撃を仕掛けていた。

「グッ、おのれ小癪こしゃくな。ファイヤボール」ドンボルゲの呪文マジカルによる町ほどもある大きさの火の玉がヘイグをおそった。

「グヮーッ」ヘイグは一発で瀕死ひんし状態におちいってしまった。

「マズイ、フィリップス!ヘイグにヒーリングをかけれるか?」ヘイグの様子に気付いたリューショーがフィリップスに声をかけた。

「ゴメンよ、こっちもそれどころじゃない…おっとウィンド・スプラッシュ」個々に戦うリューショー達にとって自分の戦いで精一杯で、他の仲間のフォローをしている余裕はなかった。それはリューショーとて同じだった。

「クソ、えぇい、マスト・ヒーリング!」リューショーのマスト回復ヒーリング呪文マジカルにより、ヘイグは何とか持ち直した。しかしリューショーの後ろから魔物の攻撃が襲いかかった。

「グヮー、クッ、ヒ…ヒーリング」しかしまたしても次のターンで四体の魔物からの攻撃を受けなければならない。まさに "焼け石に水" だった。

「クソ、カリーン!」もはやここまでか?滝沢は一生をゲームの世界に閉じ込められてしまうのか?


その時だった。曇天の空が一転、まぶしい光におおわれた。

「な…何だこりゃ?」敵味方なく、一同が空を見上げた。

『ゴッド・シャワー』どこからもとなく聞こえて来た声と共に、空からまばゆいばかりの光の粒がそそいだ。


「グギャー!」魔物達は元より、四皇帝 ドンボルゲをも、その光の粒にれた瞬間に、次々と消滅して行った。その逆に、リューショー達はその粒に触れ、次々に回復をげて行った。


「ど…どう言う事だい?」

「何があったって言うのさぁ」

「こ…こんな設定なかったはずだぜ?」

「もしかして…!先生!川上先生ですか?」この世界ゲーム土台ベースを作ったのは、まぎれもなくリューショーこと滝沢達だ。しかし、その世界を奪われ、今や世界ゲーム首謀者マスターは、森野 虎次郎をおいて他にない。その滝沢を滅ぼそうとする森野がこんなに都合の良い設定を行うはずはない。あるとすれば、森野とプログラミング対決を繰り広げている川上 新次郎をおいて他に考えられなかった。

「大丈夫でっか?滝沢さん。ボクの奥の手が間にうて良かったわ」やはり川上の声であった。

「何か神様設定っぽいけど、喋り方が神様らしくねぇぜ」ヘイグが皮肉っぽく言った。

「そらスマなんだな、ボクはアンタらみたいにお芝居は出来ひんから、声も喋り方もそのまんまや。流石に姿までは間に合わへんかったけど、まぁ助けになって良かったわ…あっ、もう時間がな…」言っている途中で川上の声は聞こえなくなってしまった。


「ふーっ、何はともあれ皆んな無事で何よりさ」先っきまで必死だったフィリップスが涼しい顔で前髪を掻き上げた。

「やれやれだねぇ、そんな裏技があるんなら、もっと早く出せって言うんだよ」スターシャが毒舌を空に向けた。

「そうだぜ、瞳ちゃ…スターシャの言う通りだぜ」小園もといヘイグもスターシャに同調した。

「イヤッ、これには何か裏がある。あの先生の声の消え方が気にかかる。現実世界に戻ってみないと分からないが、何か嫌な予感がする」リューショー、一人が神妙な顔付きを作っていた。このリューショーの予感は、当たらずとも遠からずである事を、一同はまだ知るよしもなかった。

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