立ち上がる戦士達
「ヒヤヒヤしたがなぁ、滝沢さん!ボクは研究室からは何も出来へんから応援するしかないけど声は届けへんし」目覚めた滝沢達のベッドの周りには、西川製パンのメロンパンの袋が散らばっていた。
「心配をお掛けしてすみませんでした。正直、私自身が森野を侮っていました。最初にレベルを随分上げていたので、ここまでトントン拍子に来ていて…初心忘るべからずですね」言っている滝沢を始め、全員が文字通り、寝汗をかいたように汗ビッショリになっていた。
「とにかくや!こっからはじっくり攻めて行って…って言いたいトコなんやけど、悪い知らせや」川上はいつになく神妙な面持ちで口を開いた。
「ここまで来たら覚悟は出来てます。恐らくヤツも本気で我々を潰しに来ているんでしょう」滝沢も真剣な眼差しを川上に向けた。
「それがそうも行かんねんや。これは滝沢さんの奥さんが2Dの世界に入り込んだんと関係あると思うんやが、その "森のクマさん" やらなんちゃら言うんが、外界からコンピュータを使こて奥さんと直接コンタクトを取っとる可能性がある。ほんでそのクマさんが奥さんに何かを説得しとって、奥さんの心がそっちに向き始めとるんや。せやから早よせんと、奥さんは二度とこっちの世界には戻って来んようになってまう」川上は畳み掛けるように状況を説明した。
「そ…そんな…我々には時間がないと仰るんですか?」滝沢は目を見開いて言った。
「先輩、こうなったら精神的にどうとかレベルアップしてこうとか言ってられませんよ。アタシは大丈夫です。オッさ…じゃなかった、先生がくれたBleib und zuruckがあるんです。行けるだけ行って、やれるだけやりましょうよ」和倉は滝沢の右腕を掴んで熱弁した。
「そうですよ!滝沢さんが辛い目に合っているのを黙ってなんて見てられません。和倉さんだって言うんだ!ボクだって行けるトコまで行きます」小園も続いた。
「オ…オレは…その…仕事とか…」後藤がモゴモゴ口籠っていると
「アンタ!男だろ?何の為にそのキ○玉付けてんだよ!女のアタシが言ってんのに仕事が何だ!クビになったらアタシがどっか世話してやんよ!」遂には和倉の本性が出た。それを聞いた一同は、完全に引いてしまった。
「え…えーい、乗りかかった船だ!やってやるよ!でもな、アンタの世話にはならねぇよ、この女男が」後藤は半分以上がやけくそに言っていた。
「じゃあ、オッさん!直ぐに出発するよ。正直、あんま好きじゃない先輩だったけど、滝沢先輩を苦しめる森野なんてアタシが絶対に許さないんだから」滝沢と森野の二人の尊敬する先輩の狭間で揺れていた和倉だったが、森野 虎次郎の卑劣なやり方に、吹っ切れた様子だった。
「ヨッシャ!と言いたいトコやけど、スマンが一日もろてエエか?ボクなりの考えがある。こっちの世界からしか応援出来へんボクなりの力の貸し方がある事を…そやなぁ、明日の朝八時!それまでに、取って置きのアイテムを用意させてもらうで」川上は胸を叩いて言った。
「分かりました。それじゃあ皆んな。それまでに仕事の引き継ぎやら会社への説明をそれまでに済ませて、明朝八時に集まってくれ」滝沢は一同に頭を下げて言った。
「止して下さいよ、先輩。アタシと先輩の中じゃないッスか」
「そうですよ。ボクらには頼りになるチームの皆んながいるんです。後は寺尾さん達に任せましょう」
「オレだってもう覚悟は出来てます。その代わり、ミッションが済んだらオレの話しを聞いて下さいよね、滝沢さん」頭を下げる滝沢達の周りを本当の戦士のように見える三人が取り囲んでいた。それを回転椅子に座り、食べ切ってしまったメロンパンの代わりにサンライズを頬張る川上が、優しい瞳を湛えて見つめていた。
本意ではありませんが、セクシャル・マイノリティな部分で差別的な表現があった事をお詫び申し上げます。
作品の世界観からの表現であり、決して差別的に表現したものでない事をご承知下さい。
また作中に出た西川製パンさんは、兵庫県加古川市に実在する会社で、本当に美味しいメロンパンを作っておられる企業さんです。
無断で使用させて頂き申し訳ありません。




