上書きされた世界
みなさん。こんばんはそしてこんばんは。
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す!
おっと、ここは前書きだからサクっと飛ばしてもいいからね。
さて、第7話です。
間宮冬弥が10話で完結って言ってたから残り3話でっす!
ホントに終わるかわからないけどね! あはは!
では、第7話をお楽しみください! それではっ!
「……」
そうか……これは俺が作った『世界』なのか……このプログラムで作り出した世界を上書きした世界……俺が世界中のヒトをあんな姿に……
「うっ……うっ……俺は……なんて事を……なにが創造神だ! 俺が創造神なら……元に戻してやる!」
目頭から垂れる涙を袖で吹きながらキーボードを叩き操作を試みる。
以下はこの世界での注意事項です。
・一度変換させた世界は元に戻りません。
・失った命は復活できません。
・創造神は基本、不老不死となります。
・創造神は世界に干渉できません。観測のみとなります(ただし例外有り)
・創造神が何らかの方法で死ぬと次の創造神をランダムで選定します。選定後『世界変換プログラム』は再起動します。
・世界に干渉できるのは設定時に『世界に託す』を選択しなかった項目となります。下記が選択しなかった項目です。
未選択項目:武器・道具・種族
以上の項目のみ創造神が干渉し生成、誕生させる事が可能です。
「ああ……ああ……」
この画面を見た瞬間。無力で弱者で脆弱な『神』が生まれた瞬間だった。
終わった。もう終わりだ。世界を元に戻すことも出来ず、干渉も出来ない。ただの観測者……蚊帳の外。世界の歯車からはずされた哀れな観測者。
さあ、新しい世界をはじめよう
マウスを動かしポインターを『さあ、新しい世界をはじめよう』に乗せてマウスの左クリックに力なく指を置いた。
「ヴォオォォオオォオオォォォオオ~~~~~~~~~~~!!」
「オオオオオオオォオオォオオン~~~~~!」
耳を切り裂き、突き破るくらいの、今まで聞いたことがない声音。それは生命の咆哮。新たな命が産声をあげる瞬間だった。
「……おめでとう。あんたは勝ち組だ」
強大な白龍が……動き出した龍が吹きさらしの部屋越で俺を睨んでいる。木を跨いで俺は巨大な龍と眼をあわせた。
「教えてくれよ。あんたは『人間』だったのか? それとも『動物』か?」
「……」
「さみしいね。だんまりか?」
俺を睨んだままの龍は巨躯よりも大きな翼を羽ばたかせ、飛び去った。
「ああ……そうか。そういうことか」
わかってしまった。神になった俺はわかってしまった。
「主人公や……登場人物を設定できなかったのはそういうことか」
これは人生という名のRPGだ……どの種族も登場人物で誰もが主人公。たった一度きりの……リセットなんて効かない自分だけの人生。二週目なんてない。ましては強くてニューゲームなんてのもない。HPが尽きればそこで終了。死亡はゲームオーバー。
魔物設定でHPもMP設定できなかった訳いまだったらわかる。設定する必要なんてない。だってそうだろ? この世界は『現実』になるんだから。
「なんて言う……無理ゲーだよこれ……」
ああ、もう。ここはもうすでに俺の知っている世界じゃない。ここは……俺が、神となってしまった俺が作り出した新しい世界。
「違うか……はは、本当なのかな……誰か冗談だと言ってくれ……」
作ったんじゃない。『上書き』したんだ。地球に俺が設定した『ユグドラシル』というファイルを地球の上に書き換えたんだ。
受け入れられない冗談といえる現実。だけど世界は俺を無視して動き出している。俺が設定した世界観そのままに。魔物が蔓延り、天使と悪魔が舞う。そして龍が吠え、霧が覆いそれをエルフが魔法で吹き払う。人々は恐怖で震える日々送る。すべて、すべて俺が思い描いた世界だ。なにも考えずに、後先考えずに設定し、実行してしまった救いのない世界。
ディスプレイに視線を戻す。
『・一度変換させた世界は元に戻りません』
ふざけるなよ……元に戻せ……
『・失った命は復活できません』
おいおい。蘇生魔法ぐらい禁断の魔法かなんかで設定させろよ。
『・創造神は基本、不老不死となります』
うれしくない特典だな。殺せよ。
『・創造神は世界に干渉できません。観測のみとなります(ただし例外有り)』
なんでだよ。観測だけかよ。干渉させろよ。俺は神だろ?
『・創造神が何らかの方法で死ぬと次の創造神をランダムで選定します。選定後『世界変換プログラム』は再起動します』
なんらかの方法ってなんだよ。教えろよ。
『・世界に干渉できるのは設定時に『世界に託す』を選択しなかった項目となります。下記が選択しなかった項目です』
武器・道具・種族だけかよ。ケチるなよ。
「はは……なにやってんだ俺は……」
一通りディスプレイにツッコんで力なく笑みがこぼれた。
「ここも……双子月か」
現実からの逃避。俺は空を見上げて双子付きを眺めた。
◆
もう何時空を見ていたのだろう。気が付けば夜が明けた。太陽が天空へと登り、世界が光に包まれていく。
・一度変換させた世界は元に戻りません。
・失った命は復活できません。
・創造神は基本、不老不死となります。
・創造神は世界に干渉できません。観測のみとなります(ただし例外有り)
・創造神が何らかの方法で死ぬと次の創造神をランダムで選定します。選定後『世界変換プログラム』は再起動します。
・世界に干渉できるのは設定時に『世界に託す』を選択しなかった項目となります。下記が選択しなかった項目です。
未選択項目:武器・道具・種族
「……っ! 認められるかよ……こんなバッドエンドが」
燻ぶっていた俺の感情が太陽に照らされて突如収束し、机を両のこぶしで叩きつける。
『・一度変換させた世界は元に戻りません』だと。なら、もう一度作り直してやる。誰もが平和で幸せに出来る世界に!
俺が死ぬと新しい創造主をランダムで選定して世界変換プログラムは再起動する……なら、もう一度俺が選ばれればいい。もし俺が選ばれなくてもこんな世界を終わらせて、誰もが平和で暮らせる優しい世界を作れる奴に託せばいい。それするにはどうしたらいい……?
滑稽だな……いま答えを出さなくてもいい。 だってそうだろ? 俺には無限といえる時間を手に入れた。ゆっくりと考えるさ。俺がもう一度創造神として選ばれる方法を。
まずはこの世界のことを知らないといけない。ただ作り直すだけじゃだめだ。自分の目で見て、自分で設定し上書きした世界を見て回らないといけない。
ワールドマップなんて設定してない。村や町なども設定していない。だけどあるはずだ。人類種はまだ9%残っているはずだから。隠れた村や町があるはずだ。それを見つけて話を聞かないといけない。そのためにまず、どこにいるかわからない人類を見つけだそう。
だから俺は……この世界に干渉することにする。干渉し生成できる項目は武器と道具。そして種族。十分だ。道具さえ生成できれば十分だ。
「道具名。光翼の羽。効果、一度言った場所へ瞬間移動」
言葉を発し胸の前に差し出した右手のひらを天へと向ける。空間がゆがみ、手のひらに手のひらサイズの小さい羽が一枚姿を現す。その効果の通り一度行った場所へは瞬時に戻ってこれる。空を飛べる道具を作れば必要ない道具だけど、上から見た世界と下から見た世界は違う。上から見るのは世界を見回った後だ。
これでいつでもここに戻ってこれる。そして、もうひとつ創造し作り出した物。
『布の袋』
『地図』
紐が上下に垂れている形で生成し創造したなんの変哲もない布の袋だが、これはこの世界の全ての物を際限なく無限に収納できるふくろだ。さすがに建物並の大きさの物は無理だが、両手に持てるサイズの物は収納できるはずだ。
地図は俺が見た風景をそのまま俯瞰の視点で書き記してくれる地図だ。うまく創造できたがわからないけど、すでに地図には地形が書き込まれている。どうやらうまく機能してくれているようだ。
「よし」
地図と光翼の羽をふくろに入れ、袈裟かけに背負い紐を胸の前で結ぶ。
続く
こんばんは、間宮冬弥です。
まずは、この稚拙な作品を最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
今回も連投で2話連続投稿です。
どう転ぶかわからないのですが、次も2話連投になり
完結予定です。
最後までお付き合いしていただければと思います。
それでは、引き続き第8話をお楽しみください。




