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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第三話「セカイを解放しちゃおう!?」
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15、「乙女の涙」

 ……結局、シェラちゃんが先にお馬さんに乗って、その後ろにこっそりボクが乗ることになった。シェラちゃんが乗ってるせいか、ボクが乗っても嫌な顔はするものの振りおとそうとはしなかったからね。

「あはは、アユム、動物に嫌われるタイプ?」

「ファナちゃんひどい~」

 そんなことないと思うんだけどなぁ。実家じゃ動物飼ってないけど、犬や猫に嫌われたような覚えとかないし。

「そんなことより行くぞ。俺の後ついてきな」

「はーい」

「わかったー」

 先導するようにMK2の乗ったお馬さんが歩き出したので、後に続く。シェラちゃんが「ピ」ってお馬さんの首をなでたら、とことこ歩き出す。乗馬の経験ってないんだけど、こんな簡単なものじゃないよね。

「ううー。なんか早くもお股いたくなってきた」

 やっぱり生き物の背中って、普通に人間が乗るためにあるわけじゃないからね。(くら)とかないから背骨のあたりが直接当たってごりごりするし、あぶみとかあるわけじゃないから足で踏ん張ることもできないし、常に股裂き状態! 三角木馬ってやつ? 嫁入り前の女の子が、はしたないね!

「あれ、そう?」

 なぜかファナちゃんは全然平気そう。小柄だからボクよりもずっと大変そうなんだけど。横座りとかじゃなくって普通にまたがってるのに全然平気みたい。

 さらに小柄な幼女のMK2は限界まで開脚状態なのに全然平気そう。

「アユムのやつは、無理やり乗ってるから馬が保護してくれてねーんだろ」

「……そうなの?」

 ぐぬぬ、お馬さんめー。




 結局、股裂き状態は苦しいので、ボクだけ横座りしてシェラちゃんに抱きつく格好になった。

シェラちゃんはしっかりまたがって、お馬さんの首に抱きついている。

「おし、じゃどんどん行くぞ」

 MK2の乗った馬が駆け足になり、ファナちゃんの乗った馬とボクとシェラちゃんが乗った馬も続けて駆け足になる。

「わー、ぱっかぱっかお馬さん!」

「う、わ、思った以上に揺れるんだけどっ!?」

 ファナちゃんはすごく楽しそう。遊園地のメリーゴーランドにでも乗ってるみたい。

 ボクはまるでロデオマシーンにでも乗ったような感じ。揺れる揺れる。お尻イタイ。シェラちゃんにぎゅーってしてるけど振りおとされそう。ってゆーかもしかして馬、わざとなのっ!?

「揺れるのはそりゃ生き物だししょうがないだろ。あとあんたに保護かかってないせい」

「ぐぬぬ。MK2のお尻なんかまっぷたつに割れてしまえ~」

「はン。元から割れてるしー?」

「そういや今のMK2は幼女だったっ!?」

 前までしっかり割れてますってかー。

「シモネタかっ!? そういう意味じゃねぇよっ!? だからあんた穢れてるんだろ」

 あっはー、そうかもー。




 お尻と腰にダメージを受けつつ、お馬さんで行くこと数時間。

 そろそろお昼も過ぎるしどこかでご飯にしたいところ。

「もうそろそろ、妖精とか精霊が集まってるとこなンだが……」

「……なんか変な音しない?」

 どんどこ、どんどこ。太鼓をたたく様な音がする。

 それに合わせて、手拍子とか、足ドンしてるような。

「お祭りでもやってるのかもー?」

 ファナちゃんわくわく顔。

 けど、お祭りはお祭りでも、盆踊りとかじゃなくって、なんかアフリカとか南米の密林の奥に居る少数部族がやってるっぽい感じがするんだけど。

「……妖精とか精霊って、メルヘンな感じじゃないの?」

 森自体はかなりメルヘンなんだけど。

「本来、妖精とか精霊ってすごく残酷なもんなんだぜ? 生き物としての生態が違い過ぎるからな。価値観が違い過ぎる。まあ、LROではどうかってゆーと、俺もあんまりくわしくはねーんだが」

「とにかく、行けばわかるんじゃない?」

「そうだな」

 というわけでスピードを落として慎重に近づいたところ。


「誰か、たーすーけーてぇ~」


 ……なんといっていいものやら。

 でっかいツボが火にかけられていて、その上にかわいい女の子がつる草の様なもので縛られてぶら下げられている。

 そのツボの周りを、身体が半分透き通った、精霊です!って感じの半裸な女の人たちが取り囲んでぐるぐる回っている。手には槍のようなものを持っていて、ときおり一斉に地面にどん、と突き立てる。

 空中には、掲示板でも見た全裸の妖精さんがぶんぶんと飛び交い、たまに太鼓にぶち当たってどんどこ音を鳴らしている。

 キャストが精霊と妖精でなかったら、南の島の人食い人種に襲われる美少女の図、といった感じなんだけど。

「……ナニあれ」

「食べられちゃうのかな?」

「あいつ、何やったんだ。精霊を怒らせるようなことなんかしたんだろ?」

 三人でひそひそ話していると、ぶら下げられた美少女がこっちに気がついたらしい。

「あ、そこのひと、助けててぇ~! たべられちゃうよぉ!」

 そんなことをいうものだから。

 周りの精霊、妖精が一斉にボク達の方を見た。

「あ、どもー?」

 とりあえず挨拶をすると。

「つかまえろー!」

「おかわりがきたー!」

「ひゃっはー!」

 妖精さんたちが、ボク達にむかって飛んできた!

「わー」

「きゃー!」

「ちょ、待てやこらァ」

「プー!」

 下手に暴れると小さな妖精さんたちを傷つけてしまうから、あまり抵抗も出来ないでいるうちに。あっという間につる草で縛られて、ツボの上からぶら下げられてしまいました……。

「あちゃー……」

 うなだれる先にぶらさげられてた美少女ちゃん。

「えーっと、これどういう状況だか説明してもらえる?」

 思わずじと目で睨み付ける。

 状況はよくわからないけれど、たぶんボク達ってこの人の事情に巻き込まれちゃっただけだよね?

「……あれ、もしかしてキミ、掲示板で見かける痴女さん? 写真で見たことある」

「痴女ちがうし」

 言い返してから、ふと思い出した。

「そう言うあなたはもしかして、掲示板でずっと森の中さまよってた人?」

「あー、はい。それ、たぶん私のことですねー……」

「掲示板で音沙汰無くなってたと思ったら、妖精さんたちに捕まってたのかー」

 ってゆーか。女の子だったんだ。掲示板じゃたしか、「俺」って言ってたし妖精さんにハァハァしてたから男の子だと思ってたんだけど。

「リターン使えば逃げられるだろ。なんで大人しくぶら下がってんだ?」

 MK2がぶらぶら揺れながら回転する。

「いやそれが、リターンも使えないしシスタブとられちゃって運営にも連絡できないし。ログアウト予定時間過ぎてるのにオートログアウトもされないし。昨日の夕方からずーっとぶらさげられたままなんです……」

 深いため息を吐いて、美少女ちゃんが乾いた笑いを浮かべる。

「なに? デスゲーム化したなんて話きいたことねーけど?」

 MK2が驚いた顔で。次の瞬間消えた。

 つる草だけが、ぶらんぶらんしてる。

「あれ? MK2は……」

 思わず下を見る。まさか、ツボに落ちたわけじゃ。

「普通にリターン使えるじゃねーか、うぉっ!?」

 次の瞬間、再び現れたMK2が。縛られてないのでそのまま自由落下しそうになってあわててつる草をつかんだ。そこへ妖精さんが何人かすすすーっと寄ってきて、「にげちゃだめなのー」と縛り直す。

「んー。じゃあ迷子ちゃんだけ? リターン出来ないの」

「あー、私のことはルイと呼んでください」

「あ、ボクはアユムです。こっちはシェラちゃん」

「ピ」

「ファナトリーアでーっす」

「コージだ」

 なんかMK2だけ偽名っぽいの名乗ってるけどまあいいか。

「それより、どうしてこんな状況になってるのか教えて欲しいんだけど。掲示板の感じから見て、妖精さんにえっちなことさせようとして反撃された感じ?」

「痴女さんと一緒にしないでください」

「だからボク痴女とちがうし」

 掲示板関係者はもう、これだから嫌だね。

「……理由は、わからないんですけど。可能性的に、もしかしたらって」

 なんだか言いよどむルイちゃん。

「ナニやらかしたんだよお前。巻き込まれたこっちの身にもなれ」

 縛り直されたMK2が、逆さまで顔真っ赤になりながらぼやく。

 MK2は人の事言えないと思うんだけど、この件に関しては同じく被害者だよね。

「私は、涙族(ティア)の種族カード持ってて。こう、ひとりで泣いてるとこ、妖精さんに見られちゃって」

「あ、まさか。下のツボって煮るためじゃなくって汗かかせるためかっ!?」

 んんん? 何か分かり合ってるようだけどさっぱりボクにはわからない。

 涙族ってWIKIにも載ってなかったし、新種族?なんだよね。シス子ちゃんめぐりした時にひとり居たと思うけど、見た目的には普通の人間とどこも変わらなかったと思うし。

「MK2、ひとりでわかってないでこっちにも説明してよ」

「……種族カードも結構出回ってるけどな、12種族の中でも入手が難しいのが2つある。それが飛頭族(デュラ)涙族(ティア)だ。デュラは置いとくとして、ティアってゆーのはな、端的に言うと体液が全て宝石に変わる種族だ」

「ほえー?」

 泣いてるところを妖精に見られたって、つまり涙が宝石になるところを見られて、でもって汗を宝石にさせようとして、下から湯気で熱せられてるってこと?

「妖精とか精霊って、けっこう宝石とか好きだよね」

 ファナちゃんがなんだか目をキラキラさせてルイちゃんを見つめる。ファナちゃんも宝石とか好きなのかな。ボクはあんまり光りものって興味ないんだけど。

「汗どころか、もう、昨日からずっとぶら下げられたままだし……」

 顔を真っ赤にして、ルイちゃんが口ごもる。

「……もしかして、大とか小も宝石になるの?」

「そういうこといわないで~!!」


 縛られたままぐねぐねと悶えるルイちゃんが、とってもかわいかった。

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