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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第三話「セカイを解放しちゃおう!?」
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13、「優しさにつつまれて」

 ――優しさにつつまれたまま、目を覚ました。


「ピ?」

「あ、うん。おはよう、シェラちゃん」

 いつもはボクより先に起きて、朝食の用意をしてくれているシェラちゃんだけど、今日はボクが起きるまで、ずっと、ボクを抱きしめていてくれていた。

 ……昨日は、色々あって、ボクの精神(こころ)はもうぐちゃぐちゃで、布団にもぐりんでガタガタ震えていたら、シェラちゃんがいっぱい慰めてくれたのだった。怖い目に遭って、お母さんのお布団に潜り込んだ小さな子供みたいに。

 えへへ。

 柔らかいシェラちゃんにぎゅーって頬をすりよせて、優しさを堪能する。

 いつもならボクの方からシェラちゃんにいろいろやっちゃうんだけど、昨日の夜はシェラちゃんの方からいっぱいいろいろされてしまいました……。シェラちゃんと気持ちいいことしただけで、あんなにガタガタ恐怖に震えていたのがウソみたいにすっきり気分になっちゃう自分がなんか単純で笑えちゃう。

 気持ちいいことをすると、生きてるって感じがするから、だから怖くなくなっちゃったんだろうか。

 もう一度、シェラちゃんの優しさを堪能して。

「……ほぇー」

 ……じっと見つめる視線に気が付いてびっくりした。

 ベッドの脇に浮かんだ忍者装束の小さな影が、両手を頬に当ててなんだか興味津々といった感じでボクたちを見つめていたのだった。

「って、デイジーちゃん!? そんなじっと見つめられたら恥ずかしいんだけど……」

「え、あ。ごめん。グレイスから聞いてたけど、うん、アユム。エロ杉~」

「もー、えっちー」

 もそもそと起きだして、枕をつかんで、えーい。

「むぎゃー!?」

 見事命中して、デイジーちゃんがくるくる目を回して床に転がった。上半身を枕につぶされて、足だけがばたばたしてる。その状態でもパンチラしないって、鉄壁過ぎるね、ガード。デイジーちゃん影族だし、スカートの中が見えないように影で絶対ガードとかしてるのかも?

「あれ、そういやなんでデイジーちゃんが……? って、あそっか。昨日は和風エリアからリターンしたからかー」

 とりあえずデイジーちゃんが枕につぶされてるうちにシャワー浴びてこよう。

「ピ」

「うん、お願いね」

 シェラちゃんはいろいろ片づけてから来るそうなので、先にひとりでバスルームに入る。

 いろいろ洗い流していると、片づけを終えたシェラちゃんが入ってきたので背中を流してもらって髪まで洗い上げてもらう。

 アバターの髪、いつもの自分と違ってとっても長いからお手入れが結構面倒なんだけど、シェラちゃんがいつも丁寧に洗ってくれるので艶やかでいい感じ。お返しにシェラちゃんの背中を流して、髪の毛を丁寧に洗う。

 シャワーだけのつもりが、結局お風呂にお湯を張って、シェラちゃんといちゃいちゃすることになったよ! うふふ。




「……ふわー、すっきりさっぱりー」

 お風呂を出たら。

「……んもぉ」

 なぜかデイジーちゃんがす巻きにされて転がってた。いや、す巻きっていうよりなんかえっちぃ縛り方みたいな? 口にも猿ぐつわじゃなくってなんか変なボールみたいなのはまってるし。

「ピ!」

「覗こうとしてたから縛り上げました、って?」

 んー、デイジーちゃんって、意外にそっち方面に興味あり?

 初めて会った時には、「セクハラ禁止だかんね!」とか言われた気がするんだけど。

 忍者だし、くのいちだし? ぼーちゅーじゅつとかいうの、詳しいのかな。

「……興味あるなら、今度一緒に気持ちいいこと、する?」

 でも、サイズが違うから難しいかなー。

「……」

 残念ながら、デイジーちゃんはノーコメントだったよ!




 影分身したシェラちゃんが、ひとりはボクの髪を乾かし、ひとりは朝食の支度、と言った感じにてきぱきとお仕事を片付けていく。出来るメイドさん、すごい。

「……えー、っと。改めて、和風エリアにようこそ、アユム。ようやく来てくれたねぇ! 歓迎するよっ!」

 デイジーちゃんが、何事もなかったかのように歓迎のご挨拶。

「うん、よろしくね。ボクしばらくはあっちこっちのエリア行き来すると思うけど」

「あ、そうなんだ?」

「巨獣エリアも顔見世くらいだったし、あと、なんか掲示板みたまおちゃんが妖精さんをスカウトしに迷いの森エリアに行きたいとかいってたし」

「ピ」

「あ、シェラちゃんは大工房エリアの、ええっと、ディアネイラさんだっけ。ユキノジョウの師匠の。あの人が心配だって」

「ピ」

「そうそう、それに巨獣エリアを探索するにはβエリアのクエクリアして武器手に入れないといけないんだよね」

 うーん、やることいっぱいだー。

 とりあえずまおちゃんから妖精さんスカウトに協力をお願いされてるんだよね。誰か近くまで行ける人いないか、知ってたら紹介して欲しいって。

 でもって。……確かMK2が大森林エリア、通称迷いの森エリアのすぐそばにあるセーブポイント持ってるって前に聞いた覚えがあるんだよね。

 いろいろあって気は進まないけれど。連絡取ってみるかなー。




『……いいぞ? 別に。あんたには一応、世話になったしな』

「え、うん。アリガト?」

 シスタブで連絡したら、意外にあっさり、MK2はOKしてくれた。

 声は相変わらずの幼女だった。まだ樹人族の変装したままあちこちを転々としてるのだろうか。

『ただ、セーブポイントだとアライアンスメンバーは連れてけないだろ? それに俺は知らないやつと一緒に行動したくない。森林エリアの隣にある、山岳エリアのポータルでいいか? 道順は教えるし、山道くらいお前らならどうとでもなるだろ?』

「うん、それでいいよ。えーっといつが都合がいいかな」

『ポータルの開通なんかすぐだろ? 今行こうぜ』

「じゃ、どこで待ち合わせしようか。島やβエリアはMK2にとって鬼門だろうし、砂漠あたりかな」

『んー。一応、女のあんたにお願いするのもあれなんだがだが、プライベートルームに招待してくれねぇ?』

「一応、ってのは余計だと思うんだけどー。別にいいけど、なんで? 合流してからでいいような」

 まさか、ボクに、不埒なことしよーとかゆーんじゃないよね?

 美幼女なMK2なら、うん、まあ、悪くないけどー。

『……ちょっとやらかして、今、俺、普通のポータル使えねぇんだよ。どこも指名手配っつーか、見張られてる感じでな。だから、アーティファクト使って移動すんだ』

「そんなアーティファクトあるんだ?」

 そういや、MK2が最初に島から逃げ出すのにもなんかアーティファクト使ったって話だったっけ。

 ってゆーか、それ以前にMK2今度は何やらかしたんだろ。

『大都市エリアの抗争知ってるか? アレに巻き込まれてな、両方の陣営から目の敵にされてんだ。お前らと一緒に居るとこ見られても、お前らに迷惑かかりそうだし。わりィけど』

「ん、了解。デイジーちゃん、MK2から承認要請あったらドアつなげちゃってー」

「つなげたよーっ」

「あー。……お邪魔します? 手土産もなしにわりぃな」

 デイジーちゃんが答えたとたん、ノックもなしにドアが開いて。小さな幼女が入ってきた。

「ん、いらっしゃーい」

「ピ」

 シェラちゃんがさっと、MK2を案内して椅子に座らせる。

「はー。あんた、なんかすっげぇ豪勢な部屋に住んでんだな」

 キョロキョロと部屋中を見回して、MK2が呆れたように息を吐いた。

 言われてみると、すっかり慣れちゃったけどボクの部屋ってなんか高級ホテルっぽい感じなんだよね、調度品とか。天蓋付きのベッドはホテルにもないかもだけど。

「ピ」

 シェラちゃんがお茶を出して、すっと脇に下がる。

「MK2、まだ幼女やってるんだ?」

「おう。でもなー、この顔も売れちまって、そろそろどうにかしねぇとまともに活動できねぇわ。最初に樹人族のカード手に入れたときはこれだーって思ったんだがなァ……」

 はぁ、とMK2は深いため息を吐いた。

 それから小さな両手でカップをつかんで、んく、んく、とかわゆくお茶を飲み始める。小動物みたいで実に愛らしいね。ぎゅーってしたい。けど中身は普通に男の子なんだよね……。

「まあ、MK2の自業自得でしょ?」

「そりゃわかってんだがなー。まあ、話を進めようぜ」

 MK2がシスタブを出して、地図を表示させた。

「ここがポータルで、俺がアーティファクトで転移できるのがこの辺り。でもって大森林エリアはこっちの方だ。このあたりにセーブポイントがあるからお祈りしとくといいぞ」

「ふむふむー」

 自分のシスタブを出して、マップをコピーさせてもらう。

「ああ、ついでだ。全部もってけ」

 MK2がちょいと操作して、山岳エリア以外のマップも全部ボクのシスタブにコピーしてくれる。

「ありがとー。って、MK2って、ほとんどソロなんでしょ? どんだけエリア制覇してんのさ」

 12のエリア全部開通してる上に、それぞれのマップが7割以上埋まってる。

 廃人だー。いや、廃神様だよこれ。

「便利情報もマップに書き込んであるからよかったら利用してくれ」

「うん、助かるよ」

「んじゃそろそろ行くか」

 ずずず、とお茶を最後まで飲み干してMK2が立ち上がる。

「うん、お願いねー」

「うし」

 MK2は腰のポーチからなんだか虹色に輝く石を取り出した。

「こいつはポータブル・ポータルって言われるアーティファクトだ。二個セットで、片方を置いておくと、もう一方を使用して置いた場所に転移できる。あんまりたくさんは一緒に移動できないが、あると便利だぜ? 森林エリアはポータルがないから拠点代わりにするのに1セットあると便利だぜ」

「それ、どこで手に入るの?」

 すごく便利そう。だけどβプレイヤーの人たちが持ってるの見たことないんだけど。

「山岳エリアから行ける天空城ってダンジョンで手に入ることがある。1セットはやるよ。あとは自分で手に入れてくれ」

「何から何まですまないねぇ」

 山岳エリアもあんまり話聞かないよね。掲示板で、なんか「バルス!」って叫ぶのが流行ってるとか言う話だっけ。

「はン、いろいろあったが、まだあんたに全部の恩を返せたとは思ってねーよ」

 にやり、とMK2が幼女の顔で笑い。


 ――ボクたちはポータブル・ポータルで山岳エリアに移動した。

※改稿前の第二話 19、「彼が会わない理由」でアユムたちは山岳エリアを訪れていましたが、改稿版では、アユム達は山岳エリアを訪れないため、今回初めて行く描写になっています。またMK2が幼女化しているのも同様に改稿版の仕様です。

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