6、「シス子めぐり」
「次は近い所で島議事堂?かなー」
「グレちゃん……いつそんなの出来たのさー?」
掲示板機能を利用して、有識者による島議会が行われてるのは知ってるけど。いつの間に建物ができたんだろう。
「え? アユムが今朝、島に来た後? 領主決まったし」
「……むちゃくちゃだー」
一行にオリジナルのシス子ちゃんを加えて、案内されて着いたのはお役所風の建物。
5人のシス子ちゃんがお出迎え。みんなそれぞれ特徴のある格好をしている。
「No.2のブリジットです。島の政務全体の統括をしています」
ブリジットちゃんは、出来る女って感じのスーツ姿。
「No.4のデイジーだよ。島のエネルギー関係担当ね」
影族の師匠でもあるデイジーちゃんは、相変わらずの忍者装束。裾が短いのに、なぜかパンチラしないのも相変わらず。
「No.9……樹、です」
樹ちゃんは、なんか山伏?っぽい恰好をしていて、額にちょこんと角が生えている。なんかブリジットちゃんの後ろに隠れてモジモジしてるのがカワイイ。
「No.5のエリスだ。島の食料関係を担当する」
エリスちゃんは、ちっちゃいのにおっきい! どこかとは言わないけど。ばいんばいーん。
「No.10のユリア。資材関連全般」
ユリアちゃんは、どこか口数少なく、クールな感じ。
「うわー。シス子ちゃんがいっぱいだー」
「アユム~、大活躍してるみたいじゃじゃない?」
忍者姿のデイジーちゃんが、空中を滑るように飛んできてボクの目の前でくるりと一回転した。
「さっきウチの和風エリアにも来てくれたでしょ?」
「うん、まだポータル開通しただけだけど、この後も一度行く予定だよー」
「でいじーだー!」
まおちゃんがなぜか大喜びで、デイジーちゃんに手を伸ばしている。
「……いつもと違う場所で会うと、妙な気持に。この妙な居心地の悪さはなんなのだろうか」
「ダロウカは、私が嫌いか……?」
ダロウカちゃんは、ばいんぼいんなエリスちゃんを頭の上に乗せてなんだかむむむと唸っている。
「もしかして、エリスちゃんって、巨乳エリア担当?」
「巨獣エリアだ。たまに間違えるものがいるが、なぜだろう……?」
エリスちゃんがお胸を強調するように胸の下で腕を組んで持ち上げて、かくんと首を傾ける。
わざとなの? それ、わざとなの?
「美少女そろい踏みで眼福でござるな!」
ユキノジョウはにこにこしてる。
「異邦人と女神をつなぐ存在だというが、かようにたくさんいるものなのだな……」
ナィアさんはなんかちょっとウズウズしてる。ちっちゃいのがいっぱい空中をふわふわしてるから、猫がにゃんこパンチしたくなるような衝動を抑えてるのかも?
「……ところでデイジーちゃんは影族で、角生えてる樹ちゃんは、有角族?で、あとはみんな普通の人間っぽく見えるんだけど」
≪ブリジットは冥族、極寒エリア担当です≫
≪デイジーは影族、和風エリア担当です≫
≪樹は有角族、山岳エリア担当です≫
≪エリスは竜族、巨獣エリア担当です≫
≪ユリアは飛頭族、大都市エリア担当です≫
「そうなんだー」
オリジナルシス子ちゃんが解説してくれて、褒めてとばかりに胸を張ったので頭を撫でてあげる。
ん? 聞いたことない種族がいるね。デュラってwikiにも載ってなかった気がするけど。
「ほらー、アユムー。みんな忙しいんだからそろそろ次行くよー?」
「え、うん」
グレちゃんに促されて、5人のシス子ちゃんに手を振って別れる。
はい、でもって裁縫ギルドに到着。
「裁縫ギルドはー……確か、りり子さんとこだっけ」
アンジーの知り合いの、祭りり子さんが裁縫ギルドマスターになって切り盛りしてたはず。
怪獣退治では水着を大量に作ったりとかして大活躍だったんだよね。
「あら、アユムじゃないの。珍しい」
「あ、りり子さん」
ウワサをすれば、というやつだ。丁度ログインしてたみたいで、職員っぽい人に何か指示をしていたりり子さんがこっちにやってきた。
「どうしたの、ご領主さまが大勢引き連れて。島の視察でもしてるのかしら?」
「えとね、シス子ちゃんめぐりをしてるんだー」
「そうなの。アリス、お客さんよ」
カウンターの向こうに声をかけると。
「No.1のアリスです。裁縫ギルドの業務を補助してます」
アリスとしか言いようのない、金髪でエプロンドレスのシス子ちゃんがぺこりと頭を下げた。
某でずにーアニメから抜け出してきたようなアリスっぷりだ。
「アユム様は、ポータル開通だけで草原エリア、つまりβエリアをまったく探検していらっしゃらないようなので、初めましてですね」
「あー。ごめんなさい……」
ファナちゃんに連れられてポータル開通しただけで、あとは待ち合わせとかにしか使ってないね、βエリア。
「他の皆さまは、お馴染みですね」
「うー」
ボク以外のみんなはなんか生暖かい笑顔。
βプレイヤーじゃないのってボクだけだから、みんなβエリアはよく知ってるみたい。
「あ、巨獣エリア用の武器手に入れるために、クエクリアしなきゃだから、ちゃんとこれから冒険しますっ!」
「よろしくおねがいしますね?」
「はーい!」
たまには普通に顔出しなさいよ、というりり子さんに「またね」と手を振って別れた。
鍛冶・彫金ギルドに居たのは。
「No.3のクラリスです。担当は灼熱エリアね」
こめかみにツノ生えていて、お尻にはしっぽ付き。竜人族なんだって。
竜族のエリスちゃんがツノもしっぽもないのに、ハーフのクラリスちゃんがツノとしっぽ付きなのが変な感じ。
鍛冶とか発展する前に島が工業生産できるような体制にまで発展しちゃったので暇らしい。
「鍛冶とか彫金って、大工房エリアのシス子ちゃんが担当だとおもってたのになー」
≪ロリータは種族的に錬金術ギルド担当です≫
というわけで錬金術ギルドにごー。
ってゆーか、魔法だけじゃなくって錬金術とかもあったんだね、この世界。
現実世界だと錬金術って科学の範疇に入っちゃうけど。ここだとどんな扱いなんだろ。
「No.12のロリータだよ。担当は大工房エリアだよ」
名前の通りのろりっ子がいました!
でも種族的に錬金術担当ってどういうことなんだろ。
≪ロリータは涙族です≫
また聞いたことのない種族でてきたよ。
ティアって、tear? 涙ってこと? 泣き虫ロリータちゃんなのかな。むー?
そんなしょうもないことを考えていたら、ロリっこシス子ちゃんが、ぱたぱたと空中を走るようにしてユキノジョウの所へやってきた。
「あ、ユキノジョウお兄ちゃんもいっしょなんだぁ」
「……ユキノジョウ、キミ、シス子ちゃんにお兄ちゃん呼びさせてるんだ?」
「むぐおっ!? い、いや、拙者が強制したわけではないでござるよっ!? ロリータ殿の初期設定ではござらぬかっ!?」
そういやグレちゃんも最初に呼称を決めてとかいってたねー。最終的にはアユムって呼び捨てになっちゃったけど。
「……アツアツの新婚夫婦っぽく、あ・な・た(はあと)とか呼ばせようとしたアユムがなんでユキノジョウお兄ちゃんにツッコんでるのかなー?」
「グレちゃんばらしちゃだめー! ってゆーかグレちゃんもお兄ちゃん呼びってことはやっぱそういう設定してるでしょー」
「ふひー! せ、拙者は知らないでござるよーっ!? 濡れ衣でござるっ!?」
「あっははー! わたしもユキノジョウお兄ちゃんって呼んだ方がいいかな? かな?」
「ファナちゃんはだめでーす」
「ぶー! ぶー! じゃあアユムお姉ちゃんってよんじゃうからー!」
「同い年でしょファナちゃん……」
まあ、学年はボクのが一個上だけど。いやまあ、確かにファナちゃん見た目的には妹みたいだし、お姉ちゃんって響きにはどうにも心惹かれるものがあるけれど。
「……え? ハナカ殿、いや、ファナトリーア殿はてっきり自分と同じくらいだと思っていたのだが、ずっと年上だったのだろうか」
「……あれ、ダロウカちゃんって見た目通りの歳なの? ファナちゃんみたく見た目が幼いだけだとばっかり」
LROは一応、R15なんだけどー。
見た目通りだとすると、ダロウカちゃんは十歳前後?
まおちゃんも同じくらいだったりする?
……ダロウカちゃんは十歳、小学五年生。でもってまおちゃんは十五歳、中学三年生だと発覚。ファナちゃん、ダロウカちゃん、まおちゃん、三人って同い年くらいに見えるんだけど。
「……え、まおちゃん中三って、受験とか大丈夫なの!?」
LROとかで遊んでる場合じゃないような。いやボクもそろそろアレだけどさ。高二だし。
「ウチエスカレーター式だからだいじょーぶ!」
「いいなー」
ボクも受験のこと考えたらそろそろLROは控えた方がいいのかな……。
「……本当のロリっこがダロウカ殿だけだったとは」
いやなんでユキノジョウは血涙ながしてんのさ……。




