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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第三話「セカイを解放しちゃおう!?」
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 3、「おっきいことは、いいことだ!」

「――ここが巨獣エリアだ」

 ダロウカちゃんと共にポータルから移動した先は。

「わー。なんか小人になったみたーい!」

 ファナちゃんが天井を見上げて、バンザイするように両手を上げた。

「ほう」

 ナィアさんも少し興味深げに周りを見回している。

「ここの住人は私たちの数倍の大きさだから、相対的に自分が小さくなったように思えるのではないだろうか」

 ダロウカちゃんが、ファナちゃんを見て小さく微笑む。

 転移した先も神殿みたいなんだけど、とにかく部屋がでっかい。

 単純な大きさは、三階建てくらいのおっきな体育館くらい? ポータルの魔法陣自体も他の場所の十倍くらいありそうな広さ。

 部屋を構成する石のブロック自体がとても大きいものだから、単に部屋が大きいというより、なんだか自分の背が縮んでしまった様な錯覚を受ける。

「……なんだか面白いでござるな!」

「そうだねー」

「ここは巨人種向けの神殿だから、私たちではドアを開けることも難しい。その他にもこのエリアではいろいろ注意しなければならないことをまずは話そうと思うが、よいだろうか?」

 そう言ってダロウカちゃんが話してくれたのは。


 まず、巨人種の人の足元に注意すること。特に巨人種の女性の場合、スカートなどで足元が見えないことが多く、大変危険であるとのこと。

 なので基本的には建物の中では壁際を歩くようにすること。

 飛行や浮遊のカードがあれば空中を移動するのが望ましい。

 仲良くなった巨人種がいる場合は肩に乗せてもらったり、腕に抱いてもらう方が安全。

 なお神殿内には巫女さんがいて、連絡用の鈴を鳴らせばドアの開け閉めはしてくれる。


 だいたいそんな感じだった。

「さて神殿の壁だけ見て次というのも味気ない。友人を紹介したいので少し時間をいいだろうか?」

「巨人種の知り合いがいるの?」

 尋ねると、ダロウカちゃんは大きくうなずいて指を一本立てた。

「うん、それと愛猫だ」

「あいびょう……って、ネコ?」

「ああ。この巨獣エリアでは、条件を満たすと巨獣を仲間にすることができる。このエリアはとにかく広いし何もかもがでかいので、冒険する場合は早めに仲間にした方がよいのではないだろうか」

「そうなんだ?」

 猫……ねこバス、とか?

「ボク、小鳥さんに乗って空とか飛んでみたいなー」

 それとも大きかったら大鳥なのかな?

「わたしは、わんちゃんがいいかも!」

「ファナちゃんは犬派かー」

「拙者の、この重量を支えられる巨獣はいるのでござるか……?」

「まあまあ、皆、まずは外に出た方が良いのではないだろうか。ついてきたまえ」

「はーい」

 先頭に立ったダロウカちゃんに着いて行くと、大きなドアの下の方に赤い紐が天井からぶら下がっていた。

「公共の建物には通常サイズの人間用にこういうものが用意されている」

 神社の鈴を鳴らすように、ダロウカちゃんが何度か紐を引っ張ると、カラカラと音が鳴って大きなドアが開いた。


 ――そのドアから現れたのは、巨大な人影。


「やあ、ミココ殿。お手数だが外まで案内をお願いできるだろうか」

「あら、ダロウカさん、ようこそ、今日はお友達も一緒なのね」

 神殿で見慣れた袴と着物。それを着たとっても大きな女性が、どーん、という効果音でもしそうな感じでそびえたっていた。見た目の年齢は、二十代後半くらいだろうか。

 推定8メートルくらい? 大体ボクが膝の下あたりまでなので、単純計算で5倍くらいだと思う。大きいことは大きいけど、雲を突く様な、というほどではないみたい。

「わー、おっきーい!」

 ファナちゃんが驚きの声を上げて。

 そして、ボクもまた衝撃を隠せなかった。

 巫女さん、袴の下、ちゃんと下着つけてるんだ……!?




「んー、流石に全員はちょっと無理かしらね」

 巫女のミココさん。全員を運べるように大きなバスケットみたいなのを持ってきてくれたんだけど、流石に6人は載せきれないみたい。ボクたち人形じゃないから、結構重いんだよね。特にナイアさんとかしっぽ長いからひとりでもいっぱいになっちゃいそうだし。

「むー。二回に分けるしかないだろうか」

「あ、だいじょぶ。シェラちゃんがホウキ持ってるしボクとシェラちゃんは空飛ぶから」

「ピ!」

 シェラちゃんがすかさずホウキを取り出して、ぽんと胸を叩く。

「空飛ぶホウキ、そんなのがあるのでがござるか?」

「まあねー」

 といってもシェラちゃんしか持ってるの見たことないけどね。

「では、ナィアーツェも浮遊(スウ・ヴィン)を使うとしよう」

「うん、そうしてくれる?」

 ナィアさんはホウキにもちょっと乗れないしね。

「残り3人ぐらいならそのバスケットで大丈夫だよね?」

「うー。わたしもホウキにのっちゃう?」

 ファナちゃんがぐるぐるとホウキとバスケットを交互に見る。

 たぶん、バスケットに入れて運ばれる体験してみたいんだよね。

「ファナちゃんはそっちのバスケットに乗せてもらったら?」

「んー。うん、そうする!」

 ファナちゃんがうなずいてバスケットに飛び乗った。子供みたいでかわいい。

「すまない。ではミココ殿に着いて来てくれないだろうか」

「りょーかい」

「ピ!」

 シェラちゃんのホウキにまたがって、ふわりと浮きあがる。

「わー! ゆれるー! ひゃー!」

 ファナちゃんが楽しそうな悲鳴を上げる。

「おおお、ゆ、揺れるでござるな」

「ごめんなさいねー、ちょっと重くって」

 ミココさんが済まなさそうに、よいしょ、とバスケットを持ち直してまた揺れた。

 うん、ボク、ボウキに乗って正解だったかもー。




 ミココさんと別れて神殿の外に出ると、のどかな村、といった感じの風景が広がっていた。

大きな石造りの建物がぽつり、ぽつりと間をおいて建っている。

 木を使ってないって、もしかして植物は普通サイズなのかな?

 ぼんやり眺めていると、道をゆく人の大きさが結構まちまちなことに気が付いた。

 8メートルくらいのミココさんは、実は小柄な方だったらしい。大きい人はそれこそモビルスーツくらいありそうな感じ。巨人種の中でもいくつか種族の違いがあったりするのかな?

 それとも特に男の人が大きい気がするけど、性別の違いだったりする?

「おっきいねー」

「うん、大きいね」

 ファナちゃんに相槌を打ちながら、道行く人をながめる。

 特に女性。なぜかみんなおっきいんだよね。ナィアさん並。

 掲示板で巨乳エリアとかいわれてるのもうなずける話。うん。

「……どこを見ておるのだアユム。比較するように見比べるのは、失礼だぞ?」

 チラ見してたらナィアさんに怒られたよ。



「少し待ってくれたまえ」

 ダロウカちゃんがシスタブでどこかと連絡を取りはじめた。

「お仲間さん?」

「うん、すぐに来てくれるそうだ。では先に愛猫を呼んでおこう」

 言いながらダロウカちゃんが懐から笛を取り出して、思いっきりピーと吹き鳴らした。

「……猫笛?」

「仲間にした巨獣を呼ぶための笛だ。おそらく種別によらないのではないだろうか」

「にゃーん!」

 って言ってる間におっきな猫が。

 全身真っ黒、お目目は金ぴか。つややかな毛並はまるで黒豹みたい。

「おー?」

「にゃんこー! おっきなにゃんこさんだー! あはは!」

 ファナちゃん大喜び。さっそく大きな首に抱きついて、おっきなネコミミをモフり始めた。

 けど、ちょっと待って。

 なんか大きさの縮尺おかしくなあい?

「私の愛猫、クローネだ。仲良くして欲しい」

「にゃーん!」

 虎よりもでっかい。地面から肩までの高さだけで5メートルくらいはありそう。ボクたちくらいの大きさなら、背にまたがって4人くらいは乗れそうな大きさ。乗用車サイズ?

 けど見た目は普通のイエネコ。べろんべろんとダロウカちゃんを舌で舐めている。

「……この子、ミココさんから見てもトラよりおっきくない?」

「ああ、それがこの巨獣エリアの面白い所ではないだろうか。単純に普通のエリアの何倍、というわけでなく、倍率に差があるらしい。元の世界で大きい獣は倍率が小さく、元の世界で小さい獣ほど倍率が大きくなる傾向にあるらしい。だいたいの大きさがおなじくらいになるような調整をされている、というところではないだろうか」

「そうなんだー。じゃあ、小鳥とかもボクを背中に乗せて飛べる大きさかな?」

 シェラちゃんホウキもいいけど、やっぱり鳥の背中に乗って空を飛ぶとか、憧れだよね。

「……大きさ的には問題ないが、残念ながら背中に乗るのは無理ではないだろうか」

「え、そうなの?」

「マンガやアニメでは鳥の背に乗って空を飛ぶものがあったりするが、足に捕まるのならともかく激しく動く羽や背に乗るのは現実的でないらしい。ついでに言うと、犬も上下に激しく揺れるのであまりオススメ出来ない。私のオススメは猫だ。素早く走ってもほとんど上下動がなく、安定していてしかも柔らかい毛でふっかふか。最強といっても過言ではないのではないだろうか」

「にゃーん! ごろごろ」

 クローネちゃんが、お腹を見せて地面に横になる。

「わー! もっふもふー!」

 ファナちゃんがそのお腹にダイブ。ダロウカちゃんも「あはは」と笑いながらそれに続く。

 ダロウカちゃんは猫派かー。

「動物と戯れる幼女……眼福でござる」

 なんでユキノジョウは感涙の涙流してんのさー。確かにかわいいけどね。

「……アユムはいかなくてよいのか?」

 ナィアさんがおっきな黒猫と戯れる二人を指さして、首を傾ける。

 ボクだって、モフモフは嫌いじゃないってゆーかむしろ好きな方だけどさ。

「あー、うん。でも、ちょっと……おっきすぎない? あのにゃんこ」

 実はちょっと怖かったりする。


 へたすると象より大きい猫って。ねぇ。ちょっとじゃれつかれただけでプライベートルームに強制送還されちゃいそう。


「――ダロウカ、来たのじゃ!」


 不意に背後から影が差しこんで。

「へ?」

 振り返ると、巨大な幼女が腕組みして仁王立ちしていた。

 綺麗な金髪を複雑に編み上げて、お花をかんざしのように挿している。

 和風の着物でありながらミニスカなみの丈の短さ。そこから覗くみごとなかぼちゃぱんつ。

 見た感じ、5、6歳なんだけど、驚くことに背の高さはさっき会ったミココさん並み。

 超、巨大な幼女なのだった。

「ああ、紹介しよう」

 クローネちゃんと戯れていたダロウカちゃんが、少し名残惜しそうに離れてこちらへ駆け寄ってくる。

「私の仲間の、モモちゃんだ」

「モモなのじゃー!」

 えへんと胸を張って、モモちゃんがふんぞり返る。


 ……のじゃロリ巨大娘って、なんかすごいね!

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