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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
閑話「LROがリアルにやってきた!」
70/228

「迷宮狂想曲 その8」

「――では、はじめましょうか」


 ボクの混乱などお構いなしに、ラスボスのスラリンちゃんが戦闘開始を告げる。

「スラリンちゃんハァハァでござる~!」

 ユキノジョウがみんなの前に盾をどっしりと構えて仁王立ち。

 ボクは……。

 ええっと、そうだ!

「”かげのなかに いる!”【隠れる】、”穴があったら隠れたい……”【隠形】」

 【隠れる】は盗賊のスキルで、敵から姿を隠すやつ。【隠形】は忍者のスキルでやっぱり姿を隠すやつ。隠れるは見た目だけで、隠形の方は音や気配も消えちゃうすぐれもの。バックスタブと組み合わせると最強。

 だけどとりあえずボクは、この恥ずかしい恰好を見られないようにするために使ったのだった。

 ふう。ちょっと落ち着いた。


「――まずは、小手調べと行きましょう。あなたたちが私自らの手を煩わせるだけの価値があることを示すがよいです」


 ってボクがあわあわしてる間にスラリンちゃんが何かやろうとしてた。

 椅子に座ったまま片側の手すりに身体をもたれかけ、軽く片手をあげる。

 すると。

 床から染み出るように、黄金の輝きをした三つの噴水が吹きあがった。

「うわ、なんやこれ、キモっ!?」

「黄金水でござるぅ~っ!?」

「こんな攻撃は初めて見るっ!? いや、これはっ!? 【フレアさ……」

 ダロウカちゃんが前口上も省略して即座に魔法を展開しようとしたけど。

「もがっ!?」

 突然、ダロウカちゃんの背後に現れた四つ目の黄金色の噴水から現れた何かに、口を封じられる。

 って。

 なんか、ボクそっくりの格好してないっ!? あの黄金色のやつ!

「え、まさか」

 ぼしゅん、ぼしゅんと次々に黄金色の噴水から。

 ユキノジョウそっくりなの、キューちゃんそっくりなの、ダロウカちゃんそっくりなのが現れて、こちらに武器を向けた。

「オレらの複製かっ!? これは、お約束っちゃぁお約束だがヤな感じだなっ!」

「三人だけなのは、ハンデでござるか?」

「ピ!」

 確かにお約束かも、けど、装備そろえたばっかだから、ボクたちのコピーはかなり強敵っ!?

 って、ダロウカちゃん助けなきゃっ! 前にいる他の3体のニセモノに気を取られて、他のみんなはダロウカちゃんが襲われてるのに気が付いてない!

 ダロウカちゃんの後ろから口を押えて、今まさにその喉を掻き切ろうとしてるボクのニセモノの背後に回る。

 うー! こうだあ!

「【バックスタブ】”これでもくらえー”【ネメシスファング】」

「……っ!!?」

 黄金色のボクのニセモノは。

 ……なぜか薄いレオタードみたいな忍者服を、派手に弾き飛ばして。

 いやーんな姿を衆目に晒したのちに、ぱしゃん、ともとの水に返って床に広がった。

 脱衣仕様まであるの? 忍者ってー。これ、ボク絶対攻撃受けられないよ……。

「ゴホッ、すまぬアユム殿、助かった!」

 ダロウカちゃんがゲホゲホとむせながら床に崩れ落ちた。

「なぬ? 後ろにもおったんか!」

 今頃気が付いたようで、キューちゃんが慌てている。

「いや、暗躍しそうなニセアユム殿を真っ先に倒せたのは、僥倖ではないだろうか」

「……そうかもしれないけど、暗躍とかいわれるとフクザツー」

 よく考えたら、姿を隠していきなり後衛に襲いかかるって、ボク結構凶悪なジョブだよね。

「って、次にやばそうなのは魔法使い系のニセモノか! って、詠唱はじめてやがる!」

 キューちゃんがニセダロウカちゃんを止めようと向かうが。

「……」

 無言でニセユキノジョウがガードに入る。

「うわ、くっそ、タンクって敵側におるとやなもんだな!」

「……」

 その影からニセキューちゃんが飛び出してくる。

「ぬわ、オレのニセモノかっ!」

「ピ!」

 ニセキューちゃんの両手の剣に対抗するかのように、シェラちゃんが両手に持ったメイスで迎撃。

「くっそ、奥まで踏み込めねぇ!」

 いったん仕切り直しと、キューちゃんが下がったところに。

「――――【フレアサークル】」

 ニセダロウカちゃんが杖をこちらに向けた。

「って呪文完成しとるっ!?」

「拙者にまかせるでござる! ばりばりでござる! 【ラウンドシェル】!」

 ユキノジョウが床に盾を突き立てると、盾から光が広がるようにして巨大なバリアを作りだす。

「わー! もえちゃうよー」

 ボクも、あわあわしているまおちゃんと、ダロウカちゃんをを抱きかかえて慌ててバリアの中に潜り込んだ。少し遅れてキューちゃんとシェラちゃんが飛び込んでくる。

 とたんに業火がバリアを取り囲んだ。

「うひー! ケツちょっと焦げた! やべぇ! さっきまで無双してたのやり返されてる感じやわ!」

「これは作戦が必要ではないだろうか。ただのモブモンスターと違って、向こうもきっちり連携してくるようだ」

「ニセまおちゃんがおらんくって助かったなー。いや、ラスボスがまおちゃんポジションなん? ってことはラスボスは大魔導士枠かい。メイドがおらんのはなんでやろ?」

「私が賢者であるし、シェラ殿のニセモノがいないのは同じジョブが出ない制限とかではないだろうか?」

「こういうのって、全員で一人づつつぶしていくか、こちらに有利になる組み合わせでバラバラにやるものだよね?」

「タンクのニセユキノジョウをどうにかせんと無理やろ!」

「ふひぃ~! もうスキルが持たないでござる!」

「作戦会議の時間もなしかい! キバレやゴザル!」

「前口上の余裕なんかなかったでござるよっ!? 気合ではどうにもならないでござる! ふひぃー!」

「フレアサークルは持続時間が長い。クールタイムが長くて連発できないのは幸いであるが、むう」

 その時。

「ピ!」

 シェラちゃんがわたしにまかせろー、とばかりに胸を叩いて。

 いきなりバリアから飛び出した。

「ちょっとシェラちゃん!?」

 手をのばしたけれど。

「ピピピ♪」

 シェラちゃんはにっこり笑って。 ……ってゆーか、ニヤリに近い感じ?

 効果時間が切れかけた炎の壁を突き破って突進する。

「……」

 ニセユキノジョウが盾を構えて、その前に立ちふさがる。

「シェラちゃん! がんばれ!」

 信じることにする。

「……【ダブルストライク】⇒【オクタストライク】」

 シェラちゃんは、最初からねらいはお前だとばかりにニセユキノジョウを盾の上からごっついメイスでぶんなぐった。

 ごがががががが、とものすごい打撃音が鳴り響き。

「……!?」

 盾を構えたままのニセユキノジョウがぐらりと体勢を崩す。

「へ?」

 もしかして、複数回数攻撃武器で複数回攻撃スキルを撃つと、まさか倍々になるのっ!?

 右のメイスを振り切ったシェラちゃん。

 そこになんとか踏みとどまったニセユキノジョウが、手にした剣で反撃しようとしたけれど。

「……【ヘビーストライク】⇒【テトラストライク】」

 シェラちゃんはくるり、と一回転して今度は左のメイスで怒涛の連打。

 盾を構えたままのニセユキノジョウががくんと膝をついた。

「すっげー! 賢者こえー!」

「いや、まだ終わってない! 打撃スキルはまだあとひとつ残っている!」

「……【ヘキサストライク】⇒【ヘクタストライク】」

 さらに一回転した。

「……ッ!?」

 ついにはニセユキノジョウの盾が弾き飛ばされた。

「おし、今ならイケルでっ!」

「あ、待って」

 キューちゃんが飛び出そうとしたので首根っこつかんで止める。

「ちょ、なんで」

「まだ終わってない」

 シェラちゃんはさらにもう一回転。

「……【ヘビーストライク】⇒【テトラストライク】」

 盾を失ったニセユキノジョウにさらなる連打。

「無限ループかよっ!?」

「いや、クールタイムの関係上、連続では次が最後かな」

 シェラちゃんがさらにもう一回転。もう何回、まわったんだか。

「……【ダブルストライク】⇒【オクタストライク】」

 シェラちゃんの止めの連打が、ニセユキノジョウを兜ごと床に叩き潰した。

「うひー!?」

 こっちのユキノジョウが、思わず頭を押さえて悲鳴を上げる。

 あれは痛そうだもんねぇ。

「なるほど、ヘビーストライクでなくダブルストライクから始めたのはクールタイムの関係か」

「たぶんそう」

 前に出ながら、ダロウカちゃんに答える。

 一応、物理法則には従うらしく。小柄なシェラちゃんでは振り切ったメイスの反動で体勢が崩れている。そこを狙って斬りかかってきたニセキューちゃんを拳で迎撃。

 するりと懐に入り込んで、胸倉をつかみ上げる。

 うふふーニセモノだし、いいよね。役得役得~! キューちゃんは流石にお胸まったくないけどね!

 盗賊は短剣スキル。武闘家は格闘スキル。忍者はその両方に加えて投げ技系があるんだよね。

「”ごめんね、キューちゃん”【跳ね(こんま)】」

 膝で腹を蹴り上げて、回転しながらそのまま床に体重をかけて叩きつける。

 もちろん、お腹には膝あてたまま。えぐい。

 ばしゃん、とそのまま水になって床に消えるニセキューちゃん。

「……【天雷】」

「わー!?」

 ばしん、といきなり雷に打たれて全身がしびれた。

 ニセダロウカちゃん!?

 ううう、でも雷はグレちゃんに何度も喰らったからちょっとだけ慣れてる。

「おっしゃー! 最後のはもらったで! 【無明の剣】・【双】」

 飛び出したキューちゃんが、左右の剣で同時に三連突きを繰り出してニセダロウカちゃんをズタボロにした。

 しびびびび~。

 まだ全身ピリピリしてるけど、なんとかHPは残ってる。

「ピピ!」

「ん、シェラちゃん回復ありがとね」

「さーて、残るはボスだけやぁ。気合いれてやってまうでー!」


「――よいでしょう。相手をしてあげます」


 ラスボスのスラリンちゃんが、椅子から立ち上がった。

 途端にものすごい重圧感が全身を襲った。

「……っ!」

「ぐ」

「ちょ、なに!?」

「これは……きついな」

「プ!」

 やっぱりボスだけに、威圧的なスキルでももってるんだろうか。


「……と思いましたが。どうやら時間切れの様ですね。お疲れさまでした」

「え?」

 周囲がぼやけていく。昔々のコンピュータゲームのように、小さなドットがバラバラと空中に溶ける様にして周りの空間がほどけて行く。

「ちょ、せめて一発なぐらせろやー!」

「しまった、もう残り時間がなかったのか!」

「無念、力及ばずでござる~」

「……んー」

 あと数秒で出来ること。何かある?

「”あなたのそばに行きたいの”【縮地】」

 影移動みたいな移動技。からのー。

「えい」

 ラスボスさんはどんなぱんつはいてるのかなー。

 おお、幼女な見た目の割に意外と落ち着いた雰囲気な水玉模様の布ぱんつ。かわいいね。

「……」

 消える一瞬前に、ラスボスのすらちゃんと目が合った。


 ……なんか、すっごい困った顔してた。ごめんね。てへへ。

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