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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第一話「ルラレラティアへようこそ!」
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 4、「試してみよう」

 ――んー、でも、よく考えてみると。

 カードとかスロットって、正式サービスになって初めて追加されたわけで。βテストとくらべたらちょっとでも強いわけだから嘆くほどでもないのかな?

 ぽじてぃぶしんきーんぐ!

 攻撃手段は微妙かもだけど、それは武器や防具なんかのアーティファクトをそろえればいいだけの話だし。アーティファクトにも魔法とか特殊能力がついてるわけだからきっとなんとかなるよ、うん。

「……アユムがなんかキモチワルイ笑顔してる」

「しつれーな。ところでグレちゃん、スロットとカードの説明は聞いたけど、どうやってセットするのかな?」

「あ、それはね、この画面に直接カード差し込んじゃえばいいよ」

「へー」

 言われるままに、壁のディスプレイに表示されている緑のLv10のスロットに、影族Lv5のカードを押し付けると。するっと画面に吸い込まれるようにカードが消えてしまった。

 とたんに、ずん、と胃のあたりが重くなった。自分の身体の中に何かがぎゅっと押し込まれたような、ちょっと違和感を感じた。

 ……なんかこう、すっきりしない感じ。

 んー、とうなっているうちにだんだんと違和感が消えて来て。気が付いたら色白設定したはずの自分の手がやや褐色になっているに気が付いた。

「あれー?」

「あ、言い忘れてたけど、種族系のカードをセットすると外見的なものも種族の特徴に合わせて変化するよ」

「おー」

 それじゃねこみみちゃんの種族のカードげっとしたら、ボクもねこみみ生やせるってことだよね。欲しいなー。

「カードの差し替えはこのプライベートルームで出来るよ。あ、フィールドに出る前にいろいろ試してみたいよね? プラクティスモード使う?」

 プラクティスモードってあれだよね、格闘ゲームなんかによくあるいろいろ設定変えながら練習できるやつ。

「うん。カードの説明文ってなんか大雑把すぎるから実際に使ってみたいかな」

「おっけーい。あ、じゃ、担当も呼んじゃおう」

「担当……?」

 ボクが首を傾げると、グレちゃんもちょっと首をひねってから、ぽんと胸の前で手を打った。

「あ、えとね。わたしは種族的には"有翼族(リーファ)"だから”影族(シエラ)”の技能については、No.4(タイプフォー)のデイジーの方が詳しいの」

「あ、最初になんか番号言ってたと思ったら、シス子ちゃんって、たくさんいるんだ?」

 wikiにはシス子ちゃんとしか書かれてなかったからグレちゃんのことだと思ってたんだけど。

「βテストではNo.0(オリジナル)が担当してたけど、正式サービスだと人数増えたしね。せっかくなので種族ごとにNo.1~12を新たに用意して、各1000人づつ担当、って感じなんだ」

「へー。でもさっきからずっとボクの相手してくれてるけど、大丈夫なの?」

「ん? 今現在も456人を同時に案内中だよ? ちなみにアユムと同じくらいオバカなことしてきた人は10人くらいいた。ちなみに私のぱんつ脱がそうとしたバカは速攻アカ停止したよ?」

「あ、そっか。普通に受け答えしてくれてるから中の人がいるみたいに思ってたけど、AIなんだっけ」

 おバカなこと、の方を完全スルーしてうなずく。

 グレちゃんぱんつ見られて怒るとか、すっごく人間味にあふれてるからAIだなんて忘れてたよ。

「んー。正確に言うとわたしの中の人にあたるのは、オリジナル・シス子かな。もちろん、グレイスとしての人格もあるけれど、わたしたちSYS-COシリーズは全て一人のオリジナルから分かれたもので、本質的には同じものなの」

「よくわからないなー」

「まあ、あんまり深く考える必要はないかな。ん、デイジーもすぐ来てくれるって」

 話しながらウィンドウで連絡をとっていたらしい。

 しばらくすると、部屋の中央の空中に小さなグレちゃんサイズの扉が現れて、中から黒い忍者装束の女の子がひょっこりと顔を出した。

「こんにちわー。わたしはSYS-CO、No.4(タイプフォー)のデイジーでっす」

 羽もないのにグレちゃんと同じように空中に浮かんだ格好で、デイジーちゃんはぺこりと頭を下げた。

 羽の生えたグレちゃんと違って、デイジーちゃんは見た目は普通の人間だった。髪は黒、目も黒で、なんとなく日本人っぽい感じ。ただ肌がやや黒っぽくで、お耳はとんがってないけどなんかダークエルフのようなイメージが浮かぶ。マンガやアニメに出てきそうな、異常に裾の短い忍者っぽい服を着て、腕や脚には編みタイツみたいなのを着ている。

「あ、ども城之崎きのさき(あゆむ)です。よろしくおねがいね」

 頭を下げると、デイジーちゃんが空中を滑るようにして近づいてきた。

「最初にいっとくけどさ、アユム」

「え、なに? なんでしょう」

「……セクハラ禁止だかんね?」

「もー、グレちゃん、デイジーちゃんに何ふきこんでるのさー」

 忍者装束の下がどんなぱんつなんのか気になってたのにー。

 もしかしたら、ふんどしかもしれないとかちょっと期待してたのにー。

 むっちり網タイツがいろっぽいなーって思ってたのにー。

「だから言ったでしょう? SYS-COシリーズは本質的には全員同じなんだってば。わたしが知ってることは全シス子が知ってるんだから」

 グレちゃんが腰に手を当てて、少し怒ったような顔で言った。

「さっきも言ったけどさ、次はないからね? アユム」

「……はぁーい」

 まあいいや。あんな裾の短い忍者服着てる時点でパンチラしないわけがないしね。




 デイジーちゃんは、ボクのそばにくると、ボクの周りをぐるぐるとしながら黙って見つめて来た。グレちゃんの浮遊とは少し違う感じで、軽くなって浮かんでいるというよりなんか座標だけ書き変わっているような変な移動の仕方をしている。忍者っぽい?

「んむー……。ふーむ」

 なんかじろじろ見つめられて、ハズカシイ。

 デイジーちゃんはたっぷり五分ほどかけて、上から下までじーっくりとボクのことを見つめた後、ようやくひとつうなずいた。

「……んー、すでになじんでるっぽいかな? じゃ、始めよっか。グレイス~! プラクティスモード起動お願いねー」

「らじゃー」

 グレちゃんが頷いて、ウィンドウを操作する。

 すると、真っ白な部屋の天井と壁がすーっと薄れて消えてしまった。

「わー」

 どっこまでも続くちへいせーん?

 真っ白な床だけがどこまでも続いているよ。

 某精神と時の部屋みたいな?

「プラクティスモードの説明はグレイスに任せるよ?」

「ん、おっけー」

 デイジーちゃんがちょっと下がって、代わりにグレちゃんがボクの肩に座って来て、小さなウィンドウを目の前に突き出した。

「アユム、プラクティスモードの説明するね。まず、ここで出来るのはカードによるスキルや魔法の確認ね。アーティファクトと呼ばれる特殊な装備群を手に入れた場合には、そっちも試せるよ。このモードの起動はプライベートルームのメニューから選択するか、わたしに言ってくれればいいよ。ここの利用に特に制限はありません」

「具体的に何ができるの?」

「プラクティスモード用の簡易メニューがあって、カードの入れ替えはこれでできるよ。持っていないカードは選択できないけど、持っていればカードのレベルはある程度自由に変更可能、スロットの数やレベル、色も自由に変更して組み合わせを確認できる。ただし、ここでの行動による経験値は一切入らない仕様」

「練習モードなのに経験値はいんないんだ。ちょっと残念~。けどスロット増やせるのはイイネ! 初期カードも試してみたかったし」

 グレちゃんが表示させたウィンドウのメニューを操作して、新たに3つスロットを用意する。

 色はカードに合わせた方がいいから、初期カードに合わせて青2つに赤1つだ。

「ん、準備おっけー! で、どうやってスキルとかってつかうの?」

 やっぱり必殺技は大きな声で叫ばなくっちゃだめなんだろうか。

 ええっと、初期カードは魔法の矢と、スラッシュと、癒しの光だったっけ。

「えっとねー、基本的に魔法もスキルも、思うだけで発動するよ。だけど、ほら、考えただけで勝手に発動しちゃうといろいろ危ないでしょう? だからデフォルトでは安全装置としていくつか制限がかかってるんだよ。例えば射出系の魔法・スキルの場合、デフォルトでは、対象を指でさすこと、魔法・スキルの名前を口に出すこと、っていう条件が付いてる」

「ほほー」

 つまりさー。

 ぴしっ、って敵を指さして。

 ふふふ。光弾よ敵を貫き穿て! 魔法の矢! とかさ、カッコつけてやっちゃえーってことだよね。

 なんかかっこいい呪文とか考えようかな。……ってボクの場合このプラクティスモードでしか複数カード使えないんだっけ。ちくしょー。

「なんかアユムの顔が気持ち悪くにやけてたり暗くなったりすっごく忙しそう」

「うん、グレちゃん。ほおっておいてください」

「まあ、とりあえず使ってみるといいよ。練習用のダミーとか出したげるから」

 グレちゃんが何か操作すると。

 床からうにょーん、と何かが飛び出してきた。

「もー好きなだけ、ぼっこぼこにしちゃっていいよ!」

 にやにや顔のグレちゃん。

「……ってゆーか、なんで的がボクの姿してるわけ?」

「さっきプレイアバター作った時の外見データをそのまま流用してみましたー。中身はがらんどうだから血しぶきとか飛ばないし、遠慮なくKILL! YOU!」

 グレちゃんは、YOU! ヤッチャイナYO!みたいなノリで言ったぽいけど、キルユーってお前を殺す!って意味じゃなかったっけ。

「……まあいいや」

 自分で自分に攻撃って、ちょっとヤナ感じだけど。

「ふむー」

 まあとりあえず。

「……ってアユムはなんでダミーのズボンを脱がそうとしてるのよっ!?」

「え? まさかこれもセクハラにカウントするの? ダミーは流石にノーカンでしょ。だいたいボクの姿してるんだし、いいじゃないー」

「ダメだこの人……頭おかしい」

「えへへ、そんなほめなくてもー」

「褒めてないから……」

 疲れたような顔で、グレちゃんがため息を吐いた。

 ってゆーか、ボク、グレちゃんにぱんつ見せてないのになんでこのダミー、ボクと同じの穿いてるんだろう? 謎だ。あと自分のぱんつみてもあんまりおもしろくなかった。ちぇー。

 気を取り直して。むふーと深呼吸。

 ダミーのボクに、しぇー、のポーズを取らせて少し距離を取る。

 ええっと指さし確認してっと。

 人差し指を銃口に見立ててダミーを指さす。

「まほーの、や~」

 キーワードを口にすると。指さしたボクの腕に沿って、肘から指先くらいの長さの細長い紡錘形の光の矢のようなものが現れた。

「おー」

 2秒ほどで完成した光の矢は、ばしゅん、と空気を切り裂くようにして放たれ、狙い過たずダミーのボクの胸に突き刺さった。痛そう。

「初めてにしてはやるじゃない」

 グレちゃんがぱちぱちと小さな手で拍手してくれた。

「んー、思ったより発動に時間かかるんだねぇ」

 呪唱えるとこまで含めたら、1、2、3、4、5秒くらい?

「カードのレベルがあがったら、発動とかクールタイムとか改善されてくから、初期はまあ、そんなものよ」

「あ、クールタイム制なんだ?」

「MPどころかHPって概念もないからねぇ」

 クールタイム制っていうのは、一度使ってから次に使えるようになるまでの時間を制限する方式のこと。同時にMPを消費するようなゲームも多いけど、ステータスっぽいものが存在しないLROでは再使用時間による使用制限だけっぽい。

「ん? そいえばカードのレベルってどうやって上げるの? 経験値とかってスロットにたまるんだよね?」

「同じレベルのカードを合成することで1こレベルを上げられるよ。詳しい説明は同じカードを手に入れたときにでもするね」

「そうなんだ? って……最大レベルってカードも10って言ったっけ? とすると」

 2レベルにするのに1レベルのカードが2枚。

 3レベルにするのに2レベルのカードが2枚。1レベル換算だと4枚。

 10レベルだと……ええっと、1レベル換算で512枚?

 うわー。

 ボクのスロットに合うカードをゲットできるまで、まだまだ先は先は長そうだね。

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