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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
閑話「LROがリアルにやってきた!」
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「迷宮狂想曲 その1」

「……ん」

 朝の冷気に、目が覚めた。

「……ふわぁ」

 んー、っと大きく伸びをして起き上がる。このところはずっとシェラちゃんに優しく起こされていたから、自分で起きるのはずいぶんと久しぶりだった。

 ――つまり、今日は珍しくリアルの方で寝ていた訳なのです。

 というのも。

 先週末、島のあれこれで金曜の夜からほとんどずーっとLROに入り浸っていたせいで、お母さんが週末、ボクの部屋に来たのに気が付かなかったんだよね。

 前に掲示板でそういう書き込みあったけど、LROでログインしている間は完全にリアルの情報がカットされてる(というかファナちゃん曰く魂みたいなのがアバターの方に宿ってる)おかげで、LROを装着したまま眠っているボクは、お母さんが身体をゆすっても頬を叩いても、まったく目を覚まさなかったのだ。

 ……おかげで救急車を呼ばれる騒ぎになってしまったらしい。

 どういう理屈なのか知らないけれど、LROの仕様でログイン中は部屋から出られないようになっているらしく、救急の人がやってきてもボクを部屋の外に連れ出せず、連続でログインし続けられないボクが、ちょっとだけリアルに戻ってきたときには、ボクは担架に乗せられていてとんでもない騒ぎになっていたのだった。

 混乱を収拾するのに何時間かかかったよ……。

 そんなわけのわからないゲームなんて、やめなさいってお母さんにはすっごく怒られた。

 けど、最終的には節度ある使用をするということで認めてもらった。

 というのも、どこからともなく現れた自称神様がなんか口先で丸めこんでくれたんだよね……。

 まあ、そんなわけで。

 また週末にお母さんが来たときに、LROにログインしたままだったら怒られるかなって。

 今週はリアルで過ごすことにしたのです、まる。

 うん、説明ながかったー。



 んー、ともう一度伸びをして、軽く体を左右に曲げる。

 ちびねこちゃんがたまにやってる、両手を上に上げでぎゅぐーって左右に身体をまげるやつ。

 やってみると、意外に気持ちいいんだよね。

 体操が終わったらバスルームに向かい、軽くシャワーを浴びる。

 シェラちゃんが背中流してくれないのはちょっと寂しい。髪を洗ってくれるのも、気持ちいいんだよね。まあ、リアルのお部屋のバスルームは狭すぎて二人も入れないんだけど。

 タオルでわしゃわしゃと頭を拭きながらバスルームを出ると、いつのまにか自分で用意した覚えのない着替えが用意されていた。

 ……前からちょっと思ってたけど。シェラちゃんってなぜかリアルの方に干渉できるよね。

 ファナちゃんのお家にはシス子ちゃんとか来られたし、たぶん、向こうの人をこっちに連れてくる手段もあるんだとは思うけど。こっちでシェラちゃんの姿を見た覚えはない。

 ……ん。あれ? ちょっと待てよ?

 もしかして、前、夢の中でシェラちゃんとイチャイチャしたのって夢じゃなかったり、する? わお!?

 あの時は、夢だと思って。ちょっと、とんでもないこといっぱいしちゃったし。反省、反省。てへへ。

 まあ、でも。

 ぱんつを穿きながら、シェラちゃんとこっちでも一緒に暮らせたらいいのになーと思う。

 ちなみに。

 今日のシェラちゃんチョイスはグレーのくまさんぷりんとぱんつ。

 んふー、とおしりを横に突き出すと、くまさんの顔が笑った様にゆがむのがお気に入り。

 シェラちゃんにはえっちな下着いっぱいあげたけど、自分用のは割と子供っぽいのが多かったりする。まあ、えっちぃのは高いしね。

 肩にタオルをかけ、ぱんつ一枚で胡坐をかいて座り、テレビをつける。

 あれだよね。

 マンガとかで一人暮らしの女の子が、部屋でぱんつ一枚で過ごすとか、アレ、サービスシーンの都合かなって思ってたけど。実際に自分が独り暮らしするようになると、ついやっちゃうんだよね。ぱんつ一丁。

 家族の目とかないし、暖房が効いてるとぱんつ一枚って意外に楽だし。

 なにより、ちょっとムラムラしたときにすぐ出来るのは都合がいいし? なんてね、えへ。

「んー、土曜の朝だと特に面白い番組もないかなー」

 ドライヤーで髪を乾かしながらチャンネルを回していると、不意にLROの文字が目に入った。

「ん?」

 テレビに映っているのは、外国の子だろうか。銀髪で金色の目をした、お人形さんみたいにとってもかわいい小さな女の子と、アナウンサーらしいスーツ姿の女性。

「――今日は、ヴァーチャルリアリティ技術を利用した新しいゲーム施設をご紹介させていただくということで、オープン前の会場を訪れています。こちらは、代表のシルヴィスティア・サークリングスさんです。今日はよろしくお願いします」

 女性アナが、隣の小さな女の子に手を差し出して、握手をする。

「うむ、こちらこそよろしく頼む。しっかり宣伝させてもらうとしよう」

 代表って、社長さんとか、偉い人のことだよね? こんな小さな女の子が?

 ボクが疑問に思ったように、当然、司会の人も視聴者の人がそう思うと考えたのだろう。

「まずは、シルヴィスティアさんのご紹介をさせていただきます。シルヴィスティアさんは大変にお若い、というか幼い容姿ですが……。こう見えてちゃんと成人された大人の方で、海外でいくつものこういったテーマパークを経営なさっている、すごい方なんですよ!」

 驚いたことに、どう見ても小学生なのに成人した女性で、ほんとに偉い人みたい。

 まあ、ファナちゃんとか、そのお姉さんとか、見た目と実年齢が会わない人、結構身の回りに居るから、へーそうなんだーとしか思わないけど。

「まあ、見た目に関してはあまり突っ込まれても困るのお」

「いえ、ぜひその若さの秘密をお伺いしたいところですっ! が、話を戻しますね! 本日は、ついに迷宮アトラクションが日本に進出ということで、まずはどういったものかをご説明いただきたいと思います」

「簡単に説明すると体験型のアトラクションということになる。LROの技術を利用したもので仮想の世界をまるで現実の様に楽しめるものだ。まあ、口で説明するより体験してもらった方が早かろう」

「はい、ではさっそく私! 体験させていただきます」

 女性アナが、シルヴィスティアちゃんに案内されて、なんだか全身を覆うカプセルの中に潜り込んだ。LROの技術っていうけど、ヘッドギア型じゃないみたい。

「ずいぶんと大がかりなんですね!」

「まあ、半分は飾りだの。身体の方が完全に無防備になる関係上、全身を覆う方が都合がよいだけのこと。中に入ったら、内側からロックを掛けるがよい」

「なるほどー。はい、ロックOKです」

「では、スタートだ」

 シルヴィちゃんがカプセルのスイッチを入れると。

 LROのスタート時の様にカプセル内に無数の星が見えた。それがさーっと縦に流れていって。

 部屋の正面にある大きなディスプレイに明かりが灯った。

 光が集まるようにして人型を形作り、カプセルに入った女性アナの姿になる。その姿は先ほどまでのスーツ姿ではなくて……いわゆるビキニアーマー。ちょっとえっちぃ!

「こほん。どうだ、そちらは?」

『うわー。これ、本当に仮想空間の中なんですか?』

「そちらからこちらも見えるようになっておる」

『わー、本当ですね! こちらからもさっき入ったカプセルがみえますー! すごーい』

「おぬしの格好もなかなかすごいがの」

『って、わー! なんですかこの破廉恥な格好はっ!? 聞いてないですよっ!?』

 しゃがみこむ女性アナ。

 LROと違って、現実世界の服をそのまま取り込むような作りじゃないみたいだね。

「さて、この仮想空間の中では、いわゆるコンピュータゲームのような特別なスキルや魔法といったものを使うことが出来る。それを駆使して迷宮を探検しようというのがこのアトラクションの内容になる。ほれ、弱めの敵を出してやるからやっつけてみるがよい」

『え、え、え? ちょっと、そんなの聞いてないですよ? 打ち合わせとちがぁうっ!?』

 でろん、とした粘菌の様なスライムが、ぼて、と降ってきた。

 女性アナがきゃぁきゃぁわめきながら手をばたばたするが、スライムはお構いなしに女性アナの足から這い上がってくる。

『きゃ、きゃー! あ、服が溶けてる~っ!?』

「ファイアと唱えてみよ。そやつには魔法しか効かぬ」

『きゃー! きゃー! ぬーげーちゃーうーっ!?』

 ……なんか、ちょっとえっちぃんですけどー。

 あ、ぽろりしそう。おしいっ!?

 ドキドキしてたらテレビの画面が「しばらくお待ちください……」になってしまった。

 ニ、三分待っても回復しないので、しょうがないのでテレビの電源を切った。

 うん、きっと放送事故ってやつだね!

 ってゆーか、リアルの方でもああいうのやっちゃうんだー。




 LRO関係の技術を使ってるってことは、シス子ちゃんたち、何か知らないかなってちょっとだけLROにログインしたら。

「ぱんぱかぱーん! LROのコラボイベントのお知らせだよっ!」

「いえー」

 グレちゃんとハーマオイニーちゃんが、なんかクラッカーをパンパン鳴らしながら出迎えてくれた。

「おはよー、グレちゃんにハーマイオニーちゃん」

「おっはよー! アユム!」

「島エリアはハーマイオニーちゃんが担当なのに、グレちゃん割とよく居るよね?」

「気にしないの! ってわけでコラボイベントのお知らせですっ!」

 そう言ってグレちゃんが教えてくれたのは、ついさっき見たばかりのテーマパークとのコラボイベントだった。なんでも、現実世界のそのテーマパークに入場することで、LROで使える記念カードがもらえるらしい。

 またLROのプレイヤーは優先的にそのテーマパークを利用できるようになっているそうで、LROのアバターをそのまま使えるんだとか。

「カードとか、アーティファクトとかは持ち込めないけどね!」

「ふーん。って、あ」

「プー……」

 シェラちゃんが残念そうに息を吐いた。

 同じ技術を利用してるならシェラちゃんも一緒に行けないかなって思ったけど、ダメっぽいね。

「あ、ハナちゃんから連絡きたけど、つなぐ?」

「ん、直接こっちに来てもらってー」

 答えた瞬間に、ばん、とドアから転がり込むようにしてファナちゃんが飛び込んできた。

「アユム! 遊びに行こう! コラボカード欲しいっ!」

「うん、デートだね! やったあ」

「きゃー!」

 ぎゅぐーってファナちゃんを抱きしめたらじたばた暴れた。

「でも、まだオープン前なんじゃないの?」

「LROのコラボイベントで、今ならLROプレイヤーだけが参加できるんだよ! ってゆーか、いちから説明する必要のないLROプレイヤーをつかってβテストやっちゃう的な?」

「そうなんだー」

「ってわけで、今日これからいっちゃう? でかけちゃう?」

「いえーす! おふこーす!」

 いぇーい、とハイタッチ。

「あー。でもファナちゃんとリアルで待ち合わせって……初めて?」

「あ、アユムはわたしのリアルの姿見たことあると思うけど、わたしはアユムの姿知らない」

「ん、リアルのボクはね、髪がベリーショートな感じ」

 アバターは腰までの長い髪を三つ編みにしてるけど。現実のボクは結構短めにしている。頭洗うの楽だからね。

「ちゃんとリアルであって、連絡先とか交換しようね?」

「はーい。じゃ、わたし準備があるから戻るね!」

 待ち合わせの駅と時間と場所を決めたら、ファナちゃんは風のように去ってしまった。

「プー……」

「ごめんねー、シェラちゃん。なんかお土産買ってくるからね」

 シェラちゃんが、なんかすごく残念そうにしていたので、ぎゅーってして頭をなでなでしてあげた。

「……ん、待てよー? アバターがそのまま使えるならもしかして」

 ダメかもしれないけど、まあ、試すだけならタダだしね。




 リアルで誰かとお出かけするなんて、何年振りだろう。

 ボク、ぼっちだしー?

 うふふ、ファナちゃんとデートだー。

 精一杯おめかしして、念のため下着もえっちぃのに穿きかえた。

 まあ、まだファナちゃんとそう言う関係にはまだなってないけどね! 一応ね、可能性はゼロじゃないってことでー? えへへ。

 約束の時間の三十分以上前に着いて、わくわくしながらファナちゃん、いやハナちゃんを待つ。誰かを待つ時間って、悪くない。

 ちょっと暖かな気持ちでいると。

「アユム~……ごめーん」

 なんだか少し沈んだハナちゃんの声が。

「え、大丈夫。そんなに待ってない、か、ら……?」

 声の方を見て、思わずぽかんと口が開いた。

「冒険の旅にでるの!」

「ひゃっはー! なの!」

 なぜか、普通におめかしした、双子女神ちゃんが居た。

「あ、アユムちゃん、こんにちわー」

 女神装束じゃない、普通にオシャレをした女神ティア様が居た。

「やっはろー! 今日はいっぱい遊ぶよっ!」

 なぜかコスプレっぽい白銀の鎧を着た自称神様が居た。

「ああ、ハナの友達のアユムくんだったかな? こんにちわ」

 あまりぱっとしないけれど、動きやすそうな服を着た男の人……ハナちゃんのお兄さんだったっけ。

 なんか鼻息荒く、ふん、とボクを見ながら腕組みして突っ立っていた。

 確か太郎さん、だよね。普通すぎて今時は逆に珍しい名前なので憶えてた。

「……ええっと。こんにちは」

 状況が良くわからないながらも、ぺこりと頭を下げる。

 すると、太郎さんはなぜか鼻息荒く、むふーと吐き出し。

「あー、困ったなー、もう6人だからなー。いっぱいだしなー。残念だけどアユムくんはあぶれちゃうなー」

 なんか、地獄のなんとかみたいなちょっとムカツク口調で、ちらちらボクを見ながらそんなことを言った。

「……あはは」

 ってゆーかさ。

 ちょっとハナちゃん、これどういうことかなー……?

 閑話はなるだけ短めに4話くらいのつもりでいますが、なんか長くなりそうな予感。


 あと、まだ未確定ですが第二話をまるっと書き直すかもしれません。最低週一の更新を止める気は無いので直すとしても相当先の話になるとは思いますが。現在のが最初の想定通りではあるのですが、なんか色々消化不良ですっきりしないんですよね……。特にネーアちゃんの扱いが。第二話を書き上げるまではと、とりあえず突き進めまて来ましたが、正直自分の力量では手を出すべきでないテーマでした。

 閑話で補足的な話をやろうかと思っていましたが、それよりいっそのこと第二話を書き直した方がいいのかとうじゃうじゃ迷い中。直す場合、ネーアがとっても前向きになって、途中引きこもらずにストーリーに関わる感じにする予定。MK2は小悪党化、あるいは悪ガキ化してネーアとバカップルな感じに。重いのよりコメディよりのが自分向きな気がしますので。

 まあ、予定は未定。修正する場合は矛盾がでないように一気に全部変えます。

→2018/05/12 第二話の大幅改稿完了

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