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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第二話「世界を歩こう」
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24、「見えない努力の証」

「異邦人とやらは、死んでも本当に死ぬわけではないというが、さて、どこまでやってもよいのやら」

 舌なめずりをして、軍服幼女なヒフミちゃんが両手の光る剣を構えた。

「ふん、気が済むまでかかって来るがいいのッ!」

 セリフだけは勇ましく。腰が引けた様子で木の棒をヒフミちゃんに突き付けたままマキちゃんが応じる。

 ……意外に強気だよね?

 あのゴッド・ジーラを倒すためにいろいろアイテムとかカード集めてたみたいだから、それなりに自信があったりするのかな?

 よく考えてみたら、種族カードは最低でもレベル5。マキちゃんはそれを2つも差してるわけだから最低でもレベル5のスロットが2はあるはずで、種族カードだけじゃまともに戦えないだろうからメインの攻撃手段がたぶんもうひとつくらいはあると思う。

 スロットレベル合計の初期値が10ってことを考えたら、それなりに鍛えてはいるってことなんだろう。カードと違ってスロットのレベルってすごく上がりにくいらしいし。

 ん? そういや、パーティメンバーのカード構成とかボクのシスタブから見られるんだっけ。

 ふと思い出してシスタブを開く。

 パーティメンバーからマキちゃんを選択して、カード構成を表示させる。

「え?」

 ……思わず二度見した。

 一瞬、ナィアさんのと間違えたかと思った。

 だって、マキちゃんのカードスロットは、7つもあったから。それも、スロットレベルが8、7、7、5、5、4、3と全体的に高め。

 基本がレベル10の1個だけなボクとしてはうらやましすぎるんだけどー。

 ってゆーか、どんだけLROプレイしてるんだか……廃人だよね?

 メインのカードは「ソードダンサー Lv7」聞いたことないカードだけど、たぶん職業カードっぽい? さらっと見たところ盗賊系の上位職のような感じで、しかも攻撃方面に偏ってる。

 それに種族カードが「樹人族 Lv5」「飛沫族 Lv5」。

 「鋭角化 Lv4」「衝撃 Lv5」「スネークバイト Lv8」「空間機動 Lv3」と続く。

 グレちゃんがオススメしてくれた種族や職業を中心として、メインの攻撃手段と補助を入れるスタイル見たい。どうも近接格闘向けビルドっぽいけど。


 ――ジャキン、という音に顔を上げる。

 マキちゃんの緑の髪がひと房、舞うところだった。


「ほう、小手調べのつもりだったがなかなかやる」

「つーか、今もろに首刎ねにきてたろがよッ!?」

 ……マキちゃん、MK2の地がでてるし。

 どうやら、ヒフミちゃんが両手の剣を左右から重ね合わせるようにして振るい、マキちゃんがのけぞるようにしてかわした、というところみたいだった。

 カードのスキルは発動させれば勝手に体が動くけど、勝手に回避してくれるようなスキルとか魔法とかって知らないから、これはMK2自身の身体能力なんだろうか。それとも空間機動ってカードの能力? 字面からは多分立体的に動くのを助けるカードっぽいけど。

「死なぬのだろう? 首を刎ねるくらいは序の口だ」

「とんでもねーなこの幼女ッ!? って、ぐぅっ!!」

 見ている間にヒフミちゃんの両手が光るように動いて。


 ――マキちゃんの左腕が、ぽん、と軽く宙を舞った。


「ちょこまか動くようだから足からやってもよかったが。ふん、あまり鳴き声は可愛くないな?」

「サド幼女めっ……!」

 マキちゃんの肩口から、血が噴き出している。

「うわー、痛そう」

 ファナちゃんが他人事のようにつぶやいた。

 いや実際、他人事だけどこれはまずいでしょう。

「マキ!」

 ネーアちゃんが思わず叫ぶが、足が不自由なネーアちゃんは駆け寄ることもできない。

「ちょ、ちょっと、これ、殺し合いじゃないんでしょ!?」

「待てアユム」

 思わず割って入ろうとして、ナィアさんに肩をつかんで止められた。

「だって、ナィアさん!」

「……この程度で泣き言をいうようでは、軍艦など任せられん」

「でも!」

 ナィアさんの手を振り払おうとして、そのがっちりした腕から逃れられずにもがく。

「ふん、これくらい、なんでもないの。アユムも、ネーアちゃんも。大人しくしてるの」

 マキちゃんが強がりを言うが、顔は青白い。

 ……いや、強がりってわけでもない? いつの間にが出血は止まっていて、血だまりも消えている。

「見かけだけでなく、樹人族の能力もそのまま使えるのだな。なんとも面妖な」

 ヒフミちゃんが、ひとつ息を吐いて構えた。

「……ッ」

 そこに、口をすぼめたマキちゃんが何かを吐き出し、ヒフミちゃんが剣で弾き飛ばした。

 ……樹人族の能力?

 シスタブからマキちゃんの樹人族のカードを選択して詳細を確認する。


 自己犠牲サクリファイス):自分の命を犠牲にして死者すらを蘇らせる。

 種吐き :種による攻撃。

 回復魔法:下級の回復魔法を使用できる。

 植物使い:植物を操ることができる。

 自己再生:自分の傷を癒す


 今のは自己再生と、種吐きってやつかな?

 そう思ってから一番目のスキルの説明を見て、何度か瞬きした。

 ……このスキル使えば、ネーアちゃん治せるんじゃないのー? 死者すら甦らせるなら、身体の欠損くらいどうにでもなりそうな気がするけど。

 どうせボクたちは、本当の意味で死ぬことは無いんだし、まあ、痛かったり苦しかったりするのかもしれないけど、ネーアちゃんのためならそのくらい我慢できるんじゃないかなー。

 ボクがそう考えたように、ヒフミちゃんもそう思ったのだと思う。

「……では、なぜマキはサクリファイスを使わないのか? 何でもするといいながら、自分の命をくれてやることも出来ないというか」

「ッ!」

 踏み込んできたヒフミちゃんに種を飛ばすマキちゃん。

「ふん、甘い」

 しかしその攻撃は全て弾かれて。

「いや、甘いのはあなたなのっ!」

 次の瞬間、ドン、と低い音が響き渡って、ヒフミちゃんの身体が弾き飛ばされた。

「む、衝撃波か……」

 ヒフミちゃんは膝をついたまま、立ち上がれない。

 マキちゃんから放たれたのは、飛沫族の衝撃波。

 点の物理攻撃を繰り返して、簡単に弾けると思わせておいて、面の振動攻撃。

 ボクやファナちゃんは主に反響を利用しての反響定位に使うけど、こうして攻撃にだって使うことができる。ってゆーか、あれこの近距離でまともに攻撃したら、ヤバくない? ヒフミちゃん大丈夫かな。

 ……マキちゃん、思ってた以上に実戦慣れしてる。

 カードスロットが7つに拡張されて、レベルも結構上がってるっていうのは、確かにそれだけ戦闘を繰り返して経験を積んできたってことなんだろうけど。

 本当のことを知ってるボクとちがって、マキちゃんって、MK2って。この世界のことをゲームだと思ってるんじゃないの? ここまで、本気に、なれるものなの?

 言い訳ばかりで全然ネーアちゃんに会おうとしないMK2のことは、正直口だけの男だと思ってた。

 ……努力は、してたんだね。見えないだけで。

 マキちゃんが、床に落ちていた自分の左腕を拾って傷口にくっつける。あっという間にくっついたらしく軽く手を握ったり開いたりしながら。腰の後ろから短剣を引き抜いた。

「……私の命で、ネーアちゃんを救えるなら、とっくにやってるのッ」

 唇を強く噛みしめて、マキちゃんが吐き出すように言った。

「カードって言っても、あんたにはわかんないかもしれないけど、私のこの樹人族の姿と能力が使えるのはカードのおかげなの。樹人族のカードだって、可能性にかけてたの。でも、異邦人には、サクリファイスは使えないのッ! 死んでも生き返る命に自己犠牲は当てはまらないって!」

 ……なるほど。そういうわけなのか。

 じゃあ、なんでそんなスキルがカードにくっついてるかってゆーと、たぶん本当の樹人族の人たちを元に設定されているせいなんだろう。

「ふむ、そうか」

 ヒフミちゃんは単に事実を了解したとばかりに頷き、特に何も感じていないようだった。

「まあ、これは手合せではない。貴様の覚悟を知るためのものだからな。とりあえず、1回」

 ピン、と高い音が一瞬して。

「……死んでおけ」

 何をしたのか、まったくわからなかった。

 居合切りのようにして、斬撃のようなものを飛ばしたのだと気が付いたのは、マキちゃんの全身から、血が噴き出してからだった。

「アハハ、ぬるいの……」

 マキちゃんが強がりを言うが、流石に立っていられなくて木の棒を杖のようにして血だまりの中に崩れ落ちてしまう。

「……全身をバラバラに切り刻んだつもりだったが、しぶといな?」

 止めを刺そうとヒフミちゃんが剣を下して無造作にマキちゃんに近寄る。

 その瞬間。

 マキちゃんが握っていた木の棒が、真ん中から二つに割れて二本の短剣になった。

「【鋭角化】【致命の一撃】【スネークバイト】【ソードダンス】!」

 崩れ落ちたままの、MK2が。

 くるんと回転しながら両手に持った短剣を振り回す。

 カードによるスキルは、発動すれば身体が勝手に動く。だから。

「……これで、どう、なの!」

 ピタリとヒフミちゃんの首に短剣を突き付け、マキちゃんが睨み付ける。

「覚悟が足らぬな。手合せではないと言ったはずだ」

 次の瞬間、マキちゃんの両腕がぽとりと床に落ちた。

「……あはは、そうきたの」

 マキちゃんは、ヒフミちゃんに叩きつけるようにヘッドバッド。

「ぐ」

 さらに。マキちゃんの髪の毛が、編んだ三つ編みが、まるで手のように振りあげられて。

 その先には短剣がくくりつけられていて。

 くるんと回転した三つ編みが、ヒフミちゃんの小さな首を。

「【衝撃】!」

 おもちゃのように刎ね飛ばした。


 ――ごろんごろんと転がった首は、数回瞬きをして言った。


「まあ、よかろう。自分が死ぬ覚悟だけでは兵器は扱えぬ。殺す覚悟も無くてはな」

「ピ!」

 勝負あり、とばかりにシェラちゃんがマキちゃんの三つ編みをつかんで持ち上げた。

「……ヒフミはやり過ぎだとヨイムは思う」

 ちょこちょこと歩み寄り、ヒフミちゃんの首を拾い上げたヨイムちゃんが、胴体の方にくっつけると。

「久しぶりに、いい運動になった」

 何事もなかったようにヒフミちゃんが肩を回しながら立ちあがった。

「化けものなの……」

 シェラちゃんに両腕をくっつけてもらいながら、マキちゃんがぼやいた。

「戦艦の運用に個人戦闘能力はまったく関係はないが、まあ、ただの民間人よりはマシ程度にはやるようだとヒフミ・ヴェータはマキを評価する」

 握手を求めるように手を差しだすヒフミちゃん。

 その手を、くっついたばかりの手を、嫌そうに握って。

 次の瞬間、シェラちゃんが片手で何かをつまんでいた。

「プ!」

 め、とばかりに光の剣をくしゃくしゃと片手で丸めてつぶして、シェラちゃんがヒフミちゃんの頭をこつんと小突いた。

「……むぅ、確かに勝負がついた後では、卑怯かもしれぬが。戦場では最後に生きていたものが勝利者であるから」

 ヒフミちゃんはもごもごと口ごもっていたが、シェラちゃんの無言の視線に耐えられなくなったように「すまぬ」と頭を下げた。


 ……よっほど悔しかったんだね。

補足:

【致命の一撃】:ソードダンサーのスキル。必中+魂な感じ。

【ソードダンス】:ソードダンサーのスキル。指定した近接武器攻撃を連続で行う乱舞系スキル。

 髪の毛による攻撃は樹人族の「植物使い」。緑色の髪は実は細い葉っぱだったりします。

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