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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第二話「世界を歩こう」
53/228

17、「たたかい終わって」

 ――祝勝会は、けっこう盛り上がった。


 ペポちゃんやそのお友達の有志が、海岸にいっぱい薪を積み上げて、大バーベキュー大会。

 もっとも、お肉の入手手段は限られているので、主にペポちゃんが発見したこの島の食べられるお野菜や、ツリキチさんたちが釣り上げたりした魚介類がメインだ。

 ちびねこちゃんが、うまうまなのですー!って大喜びしていた。


 海では、水着でさっそく戯れるひとたちが水しぶきを上げて大騒ぎ。

 もっとも、ほとんどは男だったので全然華やかさはなかったけどー。

 ボクもファナちゃんやシェラちゃんとバシャバシャやって大いに楽しんだ。ボクの水着的にあんまりやるとポロリしちゃいそうなので、まあ控えめに、ではあったけれど。

 ポロリするほど立派なものは持ってないんだけどね! ちょっと激しく腰をひねっただけで水着ずれちゃうんだよっ!? あれか、でっぱりが少ないせいなのかなっ!? いやん。

 ナィアさんも下半身が水に浸かっていると、上半身はびしょびしょならぬ美女美女なので、たくさん声をかけられて……弓で蹴散らしていた。軟弱者に用はないんだそうでー。


 現れたダンジョンにさっそくアタックする人たちもかなりいた。どうやら、島のミッションで手に入れた★1~★2のカードを試す、という位置づけらしく、難易度もそこそこ。ミッションではなかなか入手できなかった★2のカードがぽこぽこ出るらしい。大当たりは★3の種族カードや上級職のカードなんかが出るというウワサ。

 現状、種族カードってβ特典のガチャ以外ではかなり入手手段が少ないみたいだったから、これは大きな目玉になると思う。掲示板なんかでも、きっと大騒ぎになってるんじゃないかな。


 アンジーの話では、島に取り残されていたNPC、ってゆーか現地の人たちは、ゴッド・ジーラ撃破以前に、βエリア直通のドアから帰って行ったらしい。一部で、噂を聞きつけて復帰したプレイヤーとのいざこざもあったみたいだけれど、帰れるのであればと、せいぜい一発ぶんなぐって終わり、程度だったみたい。


 ……ネーアちゃんは、戦いが終わったあとはずっとMK2を探していた。まともに歩けないので手で身体を引きずるようにして、プレイヤーたちの間を、声をかけながら尋ねて回っていた。MK2に騙されて島に来た人たちもいたから、少々のトラブルもあったみたい。ネーアちゃんも結構気が強い方だしね。

 でも結局、MK2がどこにもいないとわかると、ひどくうなだれた様子ですっかりふさぎ込んでしまった。

 前から気になっていたんだけれど、MK2とネーアちゃんってパーティ組んでいた訳じゃないようだった。つまり、ネーアちゃんはナィアさんみたいにタブレットを持っていなくって、MK2との連絡手段がないのだった。ひどいよね、MK2。

 βからNPCと一緒に行動しているプレイヤーは、どうにも正式サービス始まってから始まったシスタブを介したパーティを組むという仕組みを知らなかったり、軽視する人が多いみたい。NPCの方でも神殿とかで手続きしなきゃタブレットはもらえないので、街中に住んでない人たちは知らないことが多いみたいで。うっかりさん多いよね……。

 最終的にはネーアちゃんはナィアさんが遺跡の部屋に連れて帰ることになった。

 ネーアちゃんは島で待つと言い張ったのだけれど、あの足じゃ流石に世話をする人が必要だしね。島にはプレイヤーはあふれるようになったけど、ネーアちゃんのお世話をお願いできるような現地の人はいないし。

 ちなみにナィアさんも割と部屋を開けることが多いので、メイドロボに世話を任せてるとか言ってた。ちなみにそのメイドロボって、ナィアさんの部屋にぶら下がってた子で、部屋が片づけられしまうがしょうがない、とナィアさんがため息を吐いていた。

 うん。しばらくはボクも様子見に、会いに行った方がいいかも。


 なんだかんだで、ボクもMk2の姿を探してみたのだけれど。

 掲示板で来るように、って言ったのにMK2は結局のところ島を訪れなかったようで、誰もその姿を見かけた人はいなかった。

 お互いが、お互いのことを、どう思っているのかはわからないけれど。

 すれ違ってるみたいで。

 ……少し、寂しいなって思う。




 お昼から始まった祝勝会も、夕方になれば流石に騒ぎ疲れてお開きになってしまった。

 海の水も冷たくなってきたしね。

 ペポちゃん達がバーベキューの片づけを始めたので手伝っていると。

「あっちゃー、もう店じまいしてたかー」

 残念そうな声が聞こえて。振り返ると、どこかで会った記憶のある女性が立っていた。

 あまりボリュームがあるとは言えないけれど黒のビキニを着た上に、なぜか白衣を着ている。

 丸いメガネをかけたその顔は……えーっと、自称、神様の人だったっけ?

「ピ!」

 気が付いたシェラちゃんが、自称神様に小さく頭を下げた。

「あー、ねいこなのです!」

 ちびねこちゃんが、走り寄ってきて自称神様の脚にぎゅぐーっと脱きついた。

「あははー。相変わらずちびねこちゃんはぷりちーだねっ!」

 抱き上げてぎゅぐーっと頬ずり。

 なんとも微笑ましい光景だねー。

「寧子さんもきたのー? でも、ちょっと遅かったねー」

 ファナちゃんが、神様とハイタッチ。仲良いんだね……。

「ハナちゃんもすごかったねー。あたしびっくりだよー」

 ちびねこちゃんの頭と、ファナちゃんの頭をなでなでする神様。

 ううー。ボクだけ仲間はずれ?

「あー、えーっと神様? まだちょっと残ってるけど食べます?」

 後で持って帰って晩御飯にでもしようかなって思ってた売れ残りを差し出すと、神様はにんまりとした笑みで割り箸を割った。なんでこの人割り箸だけ持ってたんだろ。

「ん、もう冷えちゃってるけどおいしいねっ! この料理を作ったのは誰だーっ! 褒めちゃうぞ~!」

 どこぞの食通みたいに大騒ぎする神様。なんか微妙にウザイかも……。

「え、ペポっすけど? 普通に焼いただけっすよー?」

 きょとんとした顔のペポちゃんに。

「ちゃんとした調理用具もないのに、この焼き加減っ! 実にいいね!」

 にやにや笑いながら、神様がペポちゃんにカードを差しだした。

「……戦闘に参加しなかった子たちにはドロップ品なかったでしょ? そういう子たちに配って回ってるんだよ」

「え、ありがとうっす?」

 誰だろこの人、みたいな顔で神様を見ていたけれど、もらえるものは素直にもらう性分らしく、ペポちゃんが神様にぺこりと頭を下げて受け取った。

 ちなみに。

 ゴッド・ジーラを倒した報酬は、記念品に近いものだった。

 一度でも戦闘に参加した人全員に配られたのが、ゴッド・ジーラ人形のカード。スロットを1個まるまる消費するのに、アバターにデフォルメされたゴッド・ジーラの人形がくっつくってだけのカードだった。くっつく場所は選択で来て、左腕か左肩か、頭の上。ちょっとだけギミックがあって、「ぎゃおおぉん」と怪獣の鳴き声を真似すると、人形が口から何の威力もない蒼いビームを吐く。ネタ装備枠だ。

 MVP報酬というか、あとは貢献度順にカードがばらまかれたらしい。

 とどめをさしたボクも何枚かカードをゲットしたけど、プライベートルームに戻ってないので確認できていない。

「……でもってー」

 くるんと踊るように一回転して、白衣をひらひらさせながら。

 神様がボクに、ピストルのようにした指を突き付けた。

「まさか、最後のアレを見破って、初見で全部撃破するとはねー。やるねーアユムちゃん」

 ちょっと悔しそうに、頬を膨らませながら頬をひきつらせて笑う神様。

「……あなたが、アレ、用意したんですか」

 グレちゃんたちや、女神様たちが言っていた、上の方に居るそういうことをしそうな人って、やっぱりこの人だったわけだ……。

 シェラちゃんの時には助けてもらったし、そのことには感謝もしているけれど。やっぱり、仮に意図したものではなかったとしても、あの怪獣のことや、この島の状況を作ったのが、この人なんだとしたら。

 ……少しばかり、文句を言いたくもある。

「あの、」

「言わなくってもいいよ? 言いたいことは全部わかってるから。ごめんね、正直言って、こっちも計算違いだったこと多いんだよね。こういう多人数で集まって何かやる系統の遊びってどうにも結果が読めないところがあってねー。いやーまさか、ポータル起動できなくなるほど人が減っちゃったってのが最初の設定ミスだったね!」

「……自称神様なのに?」

「……世の中にはね、かんっぺきなシステムなんか存在しないのでっす! それこそ自己矛盾発生するしね! 神様だってついうっかりで世界滅ぼしちゃうこととか稀に良くあるし。うっかりサーバーのコンセントに足引っかけちゃったりとかね!」

「をいをい」

 どこから突っ込んだものやら。世界ってオンラインゲームみたいにサーバーで動いてるんですかっ!?

 まあLROも、少なくともゲーム的な部分はどこかにあるゲームサーバーで動いてるんだろうけれど。うっかりで滅ぼしたりしないでほしい……。

「ちょーっと予測ミスって、バランス調整に失敗しただけなんでっす! 一応、開発サーバーでやった時には同規模でだいたいこれくらいの設定で大丈夫だったんだもん。もんもん!」

「いや、人がいなくなるのに怪獣のやって来る頻度が結構あってしかも来るたびに進化してるとか、いくらなんでもバランス悪すぎでしょう……? ゲーマーとして一言物申させてもらえば、難しくすりゃいいなんてのは製作者の自己満足にすぎないと思います」

「ぐぬぬ。だってせっかく用意したのに簡単にクリアされたらくやしいじゃなあいっ!? だいたい実際に”今の状況と設定ではまずクリアできないはず”だったのにアユムちゃん、クリアしちゃったし! 次こそは覚悟してて欲しいなっ!」

 にやあ、と邪悪な笑みを浮かべて、神様が両手を広げた。

「……またこんなこと、繰り返す気なんですか」

「うん。神様は全知全能だけど、だからこそ思い通りにいかないことが面白いんだよっ。世の中にはいわゆる勇者って呼ばれる様な”世界の在り方すら変えてしまう”特異点とか居るし」

 そう言って神様が、じっとボクを見つめる。


「――アユムちゃんも、素質はありそうだね?」


 にんまりと笑う。

「……いや、どうでもいいですから。変なことに巻き込むのはもうやめてくださいよ」

 ため息とともに吐き出す。

「あはは、気に食わないならチェーンソーであたしをぶったぎってみるかいっ!?」

「それどこの神様の話ですかー」

「ん、まあ、行きすぎちゃった部分はフォローするけどね。丁度都合のいいものがあるから、海の中を探してみるといいよっ?」

「……何の話なんですか?」

「あっはははー。神託ってやつだから、思わせぶりなことだけ言って、そそくさと退却するのでっす!」

 神様は好き放題に言いたいことだけ言って。ばっははーい、と手を振りながら消えてしまった。

 後に残ったのは空っぽになったお皿だけ。

「……なんだかなぁ」

 ちょっとだけ、疲れてしまった。




 プライベートルームに戻ったボクとシェラちゃんを出迎えてくれたのは、ハーマイオニーちゃんだった。

「おかえりーアユム。大活躍だったねー」

 おさかなのしっぽをフリフリしながら褒め称えてくれる。

「……うん」

 だけど。

 ……結局、ボクがしたことはなんだったんだろう。

 あの島の現状を何とかしたいと思って、いろいろやった。そのことには手ごたえを感じている、けれど。


 ――うなだれたネーアちゃんの姿が、忘れられない。


 結局、MK2はネーアちゃんのことを捨てたってことなんだろうか。ナィアさんは、男女の仲など放っておくがよいって笑ってたけど。

 ……どうしたら、いいんだろう。何かボクに、出来ることは無いかな。

 所詮たかだか十六年程度しか生きていないボクには、わからなかった。


 だいたいボク、女の子同士の恋愛しか経験したことないからね!

 男女の仲とかわっかりっませーん。

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