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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
閑話「げつようびが あらわれた! ニア たたかう にげる」
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「万能人型メイドロボの一日」

 メイドロボのシェラちゃん視点です。第一話えぴろーぐ~閑話「月曜日、襲来」あたりの裏側デス。

 わたしは神に匹敵し、さらにそれを超える者として創られたモノです。

 だから、全知全能とまではいかないまでも、この世界において大概のことは知ることが出来たし、大概のことは出来ると自負していました。当然、自分が正式に起動するとこの世界にどのような影響を与えるかを知っていたし、だからわたしは自分で創った自分だけのセカイに引きこもって、ただ世界を眺めている。そんな日々を送ってきたのでした。

 そのわたしを、この世界に引っ張り出したのが御主人様でした。

 確かに異邦人というのは多少は珍しい立場だと思います。けれど、わたしの興味はそこには無く、どんなにせがまれてもヒキコモリをやめるつもりはなかったのですが。

 ……他人と触れ合う、ということを教えてもらいました。

 映像だけ見て全てを知った気になっていたわたしに、自らの身体で体験するということを教えてくれました。

 背中からぎゅっと抱きしめられて、そのぬくもりに心地よさを感じたわたしに。

 出てきたら、ぎゅーよりすごいことを教えてあげる、だなんていうのです。

 たぶん、無理だろうとわかってはいましたが、それでも挑戦せずにあきらめるのは性分ではありませんでした。

 わたしは女神を名乗れそうなスペックを持っていますが、あくまでもそれだけの性能があるというだけの話で、女神としての権能は何も持っていません。かっちり、きっかり役割を定められているこの世界に顕現するには、どこからか役割を、権能を手に入れる必要がありました。

 それは、結局のところ。現状では世界を崩壊させる要因にしかなりえません。

 だけど、わたしは御主人様に応えたかった。世界を変えてでも、御主人様のそばに立ちたかった。

 ……だから、祈ったのです。

 セカイを管理するただのシステムとしての神じゃなく。

 もし本当に神様なんてものが存在するのなら。

 なんとかしてください、と。


 ――おっけーぃ、まっかせっなさいっ!


 ……その言葉に、返答があったのは予想外でした。

 何でも知った気でいたわたしにも、知らないことはいくらでもあるのだと、教えてくれた気がしました。




 そうしてわたしは、御主人様のそばに居られるようになりました。

 だというのに。

 アユム様、わたしを置いて行こうというのはどういう了見なのでしょう?

 異邦人というのがそういうものだと知識では理解していましたが、さあこれからいっぱいお世話をしなければ、と思っていたのに肩すかしです。

 だから、少しばかり細工をしました。

 この世界そのものをいじるのはいくら女神相当の能力があっても難しいですが。そこに乗せられたLROというシステムは、どうやらまだ発展途上のようでわたしにも割り込む隙がいくらでもありました。

 LROにおけるわたしの存在をアーティファクト認定し、所有者をアユム様に固定。書き換えができないように管理者権限でロックをかけます。

 思った通り、アユム様と一緒に移動することが出来ました。

 プライベートルームという場所は、不思議な場所でした。ルラレラティアという、わたしが生まれた世界と、異邦人であるアユム様の世界が半分ほど重なり合っているようです。

 アユム様は、ナビゲーターにわたしのことを任せる、と言い、最後にぎゅう、とわたしを抱きしめて消えてしまいました。

 ……寂しいです。

「えーっと、シェラちゃんだっけ? アーティファクト用に部屋拡張するからちょっとまってて。何か希望とかある?」

 グレイスという有翼族リーファの姿をしたナビゲーターが、わたしに話しかけてきたので思案します。

「……この部屋は御主人様にふさわしくないように思われます。改装の権限を希望します」

「んー? それはアユムの許可とらないとだめかなー。シェラちゃんのお部屋ならある程度希望に沿えるけど」

「では、家事ができるようにお願いします」

「んー、わたしは家事とかできないからなー。何が必要かわからないや。カタログ出すから自分で選んでくれる? ポイントはアユムの使うから、あんまり無茶はしないでね」

 差し出されたウィンドウには、様々な家具や設備が描かれていました。

 ――その中に、ネット機能というものがありました。

 どうやらこのプライベートルームから、アユム様の居る世界への通信機能のようでした。

 カタログに手を触れ、解析を試みます。

 ……解析終了、行けそうです。

 LROというシステムは後付けで乗せられたシステムのせいか、穴だらけです。他人事ながら少し心配になります。こんな穴だらけなシステムでアユム様の身の安全がちゃんと確保できるのでしょうか。

 自分用のバックドアの構築と必要な機能のコピーを行いながら、危険なセキュリティホールはふさいでおきました。

「ん、じゃわたしは引っ込んでるけど何かあったら壁のウィンドウから呼んでくれたら顔出すから」

 グレイスはそう言って、壁のウィンドウの中に消えてしまいました。

 わたしのような存在が、ここで何をしているのか、全く気が付いていない、とは。

 ナビゲーターの教育も必要なんじゃないでしょうか。

 ……まあ、人目が無くなったのは都合がいいです。まずはアユム様の世界の情報を入手しましょう。



 ……奥が深いですね。思わず、すっかり見入ってしまいました。あんなものまでネット上に転がっているなんて。ちょっと信じられませんでした。

 気が付いたらだいぶ遅い時間です。アユム様はもうお休みでしょうか。

「……コネクト」

 ネットをつなぐ機能を逆に利用して。

 アユム様の部屋を、こちら側に引っ張り込みます。

「……アユムさま、約束通り、ぎゅーよりすごいことを教えてくださいませ」




 ……いっぱい可愛がってもらいました。

 幸せな気分でいっぱいです。

 わたしのこころの中の時より遠慮がないというか、まさかあんなことまでされるとは思いもしませんでした。

 余韻に浸っている場合じゃありません。部屋の改装の許可もいただきましたので、さっそく模様替えを行いましょう。

 ベッドは大切ですね。この豪華なヤツにしましょう。

 あとはこれと、これと。こんな感じで。

 ベッドにしかこだわってないですね。むー、アユム様がいけないのです。

 なぜか部屋の隅に胸を強調する変なポーズをしたアユム様の人形があったので、ベッドに寝かせました。その隣に潜り込んで、ぎゅーと抱きつきます。

 ……いろいろ研究しないといけませんからね。

 何をしたのかは秘密です。




 アユム様に朝食の用意をしたかったのですが、研究に熱心になっているうちに朝になってしまったようです。

 流石にアユムさまが眠っていない時にこちらに引っ張り込めるほどの力はありません。夕食に腕を振るうことにしましょう。

 壁のウィンドウにアユム様の様子を表示させて、夕食のメニューを考えます。

 そのうちに、アユム様が出かけてしまいました。

 学校という場所に出かけるのでしょう。

 こちらでは義務教育的なものはあまり一般的でないので、学校という場所に興味はありましたが、流石について行くことは出来ません。

 夕方くらいまでは帰って来ないでしょうから、今のうちに家事を済ませてしまいましょう。

 向こう側に影響を残すには、こっちに引っ張り込むのではだめです。

 プライベートルームを反転させて、アユム様の部屋にします。

 ……ここがアユム様の住む世界ですか。

 最初はお片づけをしながらアユム様の部屋の探検です。

 アユム様……なんでこんなものを本棚の裏に隠してらっしゃるのでしょう。


 お部屋を掃除して、お洗濯をして、ちょっと匂いを嗅いでみたり。特に下着は匂いが強くていい感じです。持って帰りたいくらいですが、御主人様のものに手を出すわけにはいきません。

 しょうがないのでアユムさまのベッドに転がって、深呼吸をしました。

 そんな感じで、いろんなことを体験してみました。

 夕食のお買いものにいこうと部屋から出られないかといろいろ試して見ましたが、どうやらわたしはこの部屋からは出られないようでした。すこし残念です。いずれはアユム様の通う学校に行ってみたいものでしたが。

 しょうがないのでカタログから食材をゲットしました。

 お料理をするのは初めてです。大概のことは十全以上に出来る自信はありましたが、それでもやっぱり初めてなので不安でした。

 アユム様は食べてくださるでしょうか。


 誰かを想って何かをする。

 それは、とても幸せなことだと知りました。


 わたしを暗闇から引っ張り出してくれたアユム様に。

 最大級の感謝と愛を――。

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