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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
222/228

39、「異変」

「……ここの敵を斬るのも飽きたかなー。変わり映えしないし」

 10階の途中だったけれど、キル子ちゃんがつまらなそうに剣を納めたのでボクたちの出番となった。

「アユムちゃん、あとで殺し合いしない? こないだずっぶし奥まで貫かれたのがまだ忘れられないんだけど?」

「キル子ちゃん、誤解される様な表現はやめてくれる?」

 それは夢幻泡影で生み出したもうひとりのキル子ちゃんの仕業であって、ボクがナニかしたわけじゃあないんだし。

「殺し合うほど仲がいいっていうけど。……あんたらナニしてんの?」

「イズミちゃんは変な勘違いしないでね? あとそんな格言とかないから」

 背負っていたユーちゃんはリェピュタちゃんに任せて前に出る。

「お手伝いに来たのに暇だったから腕が鳴るねー」

「アユムどうする? 【影憑依】する?」

「単体で強いの多いからした方が良いかな? 手数より火力上げよう」

「りょーかい」

 というわけでさっそくファナちゃんと【影憑依】しようとしたんだけど。

「あー。ところでさぁ、今気が付いたんだけど。そのロリっ子だぁれ?」

 キル子ちゃんがファナちゃん見て首を傾げていた。

 そう言えば、初めてキル子ちゃんに会った時って、ファナちゃんボクの姿だったっけ?

 一応、名前だけは紹介したと思うけど。キル子ちゃんが魂の煉獄エリアに行っちゃったり、島の防衛戦でいきなりバトル状態だったりでまともに話もしてないしね。

 ……ん? ファナちゃんがボクの姿だったのに。キル子ちゃんって一度もボクとファナちゃん間違えたことなかった気がする。

「ファナちゃんだよ。まあ、前に会った時はボクの姿してたと思うけど。バグが直ったんで本来のファナちゃんの姿に戻ったんだよ」

「へぇ……。なんかウサギちゃんと同じものを感じるわぁ。結局、ウサギちゃんも一回も斬れてないしぃ。代わりに斬ってもいいかしらぁ?」

 なんか変なよだれ垂らしてキル子ちゃんがじりじり近づいてくるんですけどっ。

「似てるのはファナちゃんって、シロウサギちゃんとはリアル兄妹だからだね。あと斬ったらダメ。ダンジョンクリアを優先してね?」

「クリアしたら斬ってもいい?」

「ダメでーす」

 ファナちゃんも笑顔で首を横に振った。

 まあ、変態人斬りとバトりたくはないよね、ファナちゃんも。

 ……いやでもファナちゃんって実は意外と好戦的だよね。攻撃魔法ばらまくの大好きだし。

「つまんなーい」

 少しは学習したのか、キル子ちゃんも無理強いすることはやめたようだった。でも、島エリアの侵略戦とかが元に戻ったら問答無用でふっかけてきそうだから気を付けとかなきゃね。

「それより、アユム、はやく、ね?」

「はーい」

 というわけで。

 おねだりされちゃったのでファナちゃんと【影憑依】。みんなに見られてるのになんか気持ちよくなっちゃって、ちょっとはずかしー。

「ピ?」

「んー、シェラちゃんまで合体しちゃうと火力過剰過ぎかも?」

 それにイズミちゃんパーティが既に6人なので【影憑依】すると人数オーバーだしね。

「ロリっことひとつになったの? ふゅーじょんとかいうやつ?」

 キル子ちゃんがなぜか興味を示したようで、なんだか妙に顔を近づけてくる。

「影族の能力で【影憑依】ってやつだよ」

「……ふーん」

 チャキ、と金属音がして。

 キル子ちゃんが剣を抜く前に、ファナちゃんが無言で発生させた魔法の矢がキル子ちゃんの目の前に突き付けられていた。

(キル子ちゃんは甘いのだった)

「……ダメっていったでしょ?」

「ちぇー」

 ちょっと肩をすくめて、キル子ちゃんが離れて行った。

 ホントにもう、油断も隙もない。迷宮の敵だけで満足してくれてればよかったのに。

「あんたら仲良く遊んでないで、行くわよ?」

 イズミちゃんが呆れたような声でドアを蹴破った。

「あいあい。任せてねー」

 道中で拾った剣を適当に装備して。

 ボクたちは現れた敵を、えいやーってやっつけた。




「人数いると、流石に早いね」

 ボクが突撃して、イェーラちゃんが魔法で援護。キル子ちゃんは飽きたって、何もしなくなっちゃったけど、【影憑依】状態のボクとファナちゃんがぺぺぺのぺって感じで敵を蹴散らしまくって。

 あっという間にボス部屋前なのでした。

 最初にクリアした時は4人だったけど、今は9人いるしね。ユーちゃんはお荷物状態だけど。

「イズミちゃん、そういや今ボスってどんな感じなの? 自称神様じゃあないんでしょう?」

「魔法使いのかわいい三毛猫が出て来るわね。たまーにあの白衣メガネの変態も出て来るらしいけど」

「あー。そういや邪悪な三毛猫の実験室とか書いてたね」

 本当に三毛猫が出て来るとか。

 イズミちゃんなら、どんなにかわいい猫ちゃんでも、敵だとわかってれば笑いながら動物虐待しそうだけど。

「あ、ボス戦のあとどうなるんだろ? リェピュタちゃんとユーちゃんって。どこのエリアに出るとかわかる?」

「知らないわね。あたしが最初にクリアした時は、いろいろあった後、姉が活動してた大都市エリアに出たけど。新人どもはどっかランダムに飛ばされたんじゃないの?」

「うわー。イズミちゃん、新人さんの面倒、最後まで見てあげなかったの? 島に連れてってあげるとか、βエリアにつれてってあげるとかさ」

「しょうがないじゃない。1回クリアしてるあたしと、部外者?のキルコはダンジョンに残ったままだったし。ここのダンジョンクリアしてやっただけで十分でしょ? あたしがどんだけここに閉じ込められてたと思うのよ。数時間で済んだんだし感謝してほしいものねっ」

 そういうもんかなぁ。

 まあ、新人さんはランダムで飛ばされて、イズミちゃんたちは残る感じなのね。

 もしかしたら新人さんたちって、成仏しちゃったのかもしれないから何とも言えないけど……。

 ユーちゃんはそっちかなぁ。リェピュタちゃんはどうなるんだろね?

「じゃあ、この先は1パーティしか入れないから。行くわね。キルコもラスボスくらいやる気出しなさい」

「あの猫、意外にすばしっこいからなー。追いかけるのだるいわぁ。あとカワイイからなんか罪悪感あるしぃ?」

「あんたが罪悪感とか、冗談でしょ?」

 イズミちゃんが鼻で笑った。

 激しく同意。罪悪感とか感じる様なまともな神経ないよね。

「メイドちゃんは借りてくわね。なんかキルコのやる気がないし」

「うん。シェラちゃんお願いね」

「ピ」

「ユーちゃんももう少しだから、起きて?」

「……んー?」

 リェピュタちゃんに背負われたままだったユーちゃんが、目をこすって背中から降りた。

「もう終わり?」

「あとボスだけ。ユーちゃんはシェラちゃんの背中に隠れてればいいから」

「……うん」

「よし、じゃあ行くわよっ! あたし晩御飯まだなんだからね!」

 あー。そうなんだ。

「がんばってねー」

「ふん、秒で片づけて来るわ」

 イズミちゃんたちが、ひらひらと手を振って。

 ドアの向こう側に消えてしまった。



「さて、ボクたちもお役御免だし、帰ろうかな? それとも決着がつくまで待っとくべき?」

 【影憑依】はいったん解除。

「一応、待ってた方が良いんじゃない? シェラちゃん置いてくのは悪いし」

 背伸びをするファナちゃん。【影憑依】だとボクが身体動かしてるからやっぱりちょっと窮屈だったりするのかな。

「イズミちゃんの話だと、新人さん以外は残ったままになるみたいだよね。クリアしたら自動で元のエリアに飛ばしてくれたらいいんじゃないかと思うんだけど」

「そういえば、このエリアからってどうやって帰るの?」

「んー。前の時は別の異世界扱いでルラレラティアと行き来できなかったけど。今はつながってるみたいだしプライベートルーム経由で帰れるんじゃないかな」

「そうなのかな?」

「……わたしも、残っていた方が良いと思うわ。なんとなく、だけど」

「イェーラちゃん何か気になる?」

 妖精さんなイェーラちゃんが、ボクの頭の上にちょこんと乗った。

「よくわからないんだけど、何か違和感があるのよ」

「違和感、ねぇ」

 いわかん、いわかん。

「あ。そう言えば、今思うと、ボクもちょっと気になることがあるんだよね」

「何かあったっけ?」

「ユーちゃんさ。ちょっと変なこと言ってたよね?」

「それは、アレのせいなんじゃない?」

 ファナちゃんも事情は知ってるから、自称神様案件だと察してたっポイね。

「それなんだけどさ。ユーちゃん、気が付いたらここに居た、ネットで調べてみたらLROってゲームみたいだった、とか言ってたよね?」

「確かそんな感じ、だったよね? なんかおかしい?」

 首をこてんと斜めにするファナちゃん、かわいい。抱きしめたい。

「それってさ、ユーちゃんLROのことそもそも知らなかったんじゃないかって気がしない? 参加しようとしてて、そのアレしちゃったんじゃなくってさ。イズミちゃんだって、ボクの時だって最初はプライベートルームでゼノヴィアちゃんから説明受けたのに。ユーちゃんってプレイアバターですらなくって、ゲストアバターのままっぽかったし」

「あー。そういやスマホ持ってたね」


『――――!!』


「……え?」


 今、何か。

 もしかして。

 シェラちゃんの、SOS?


「……アユム? 今、なんか変な感じしなかった?」

「シェラちゃんが助けを求めてる。いかなきゃ」

「わかった」

 すぐさまファナちゃんがボクに背を向けて。

 抱きついて即、【影憑依】。

「何があったの?」

「わかんない。何かあったみたい。イェーラちゃんは……転移魔法とか使える?」

「アユムたちと一緒じゃないと流石にこのエリア?からは出られないわよ」

「じゃあ、悪いけど一緒に来て」

 ドアに手をかけたけど。

 ……開かなかった。

 1パーティしか同時には入れないっていう、仕様のせいなんだろう。

「こじ開ける。イェーラちゃん、ボクの背中に隠れてて」

(ばっきゅーん、しちゃう!)

「わ、わかったわ」


 以前、シェラちゃんとの【影憑依】で空間をぶっ壊しちゃった時みたいに。

 今のボクとファナちゃんなら、きっと出来るはず。


「――砕け」


 一切の手加減なしで、魔法の矢を収束してドアにぶちかました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばそろそろ物語内で1年ですねぇ... 次々章辺りで「1年と2ヶ月」が経ちそうですね、現章の名前的に計画しているかは分かりませんが...
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