表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
219/228

36、「くすぶる火種」

 月末恒例滑り込み更新。

 野井さんとコロニーの話し合いは、思ったよりあっさり終わったみたい。

 どういう結果になったのかはまでは詳しく教えてもらえなかったけれど、白エルフちゃんたちはコロニーに引き渡され、ボクたちは次の場所へ移動することになった。

 レイちゃんは妹たち、というか従姉妹くらいの違いはありそうだけど、白エルフちゃんたちとの別れを惜しんでいた。

 残念ながら、オラクルネットワークというこの世界のインターネットみたいなのは宇宙にまではつながっていない(というか戦争で寸断されて復旧してない)ので、ネット上を黒いモヤになってあちこち移動できるレイちゃんでも気軽に行き来はできない。

「ん。地上と自由に行き来できるようになったら。会いに来る」

「地上には数百人の我々の仲間が存在するのですね。会いたいです!」

「ん。他の妹たちも紹介する」

 レイちゃんが白エルフちゃんたちと、お互いにぎゅーってしてる。黒と白のコントラストがイイネ!

「……ふむ。彼女たちの気持ちも分かるがね、今回の件を考えると、移民に関してはもう少し長期的に調整が必要だと思うよ。少しばかり、私の勇み足だったようだね。”敵”に関する問題が解決したのだから、地上への帰還に障害はないと思っていたのだが、考えが甘かったようだ」

「武力で地上を攻める気があったと思われてもしょうがない状況ですからね」

 流石に40機も姫人形を用意してるとか。ごまかしようがないよね。

「いや、彼らの主張では、あくまでもアレは防衛手段だということだがね?」

「……それ、素直に信じられます?」

 じと目で野井さんを見つめると。

 野井さんはちょっと苦笑しながら言った。

「彼らは地上の様子をほとんど知らないんだ。私や、私同様に長距離転移可能な魔法使いが、わずかばかりは伝えてはいるがね。あくまでも彼らにとっては伝聞に過ぎないし、臆病にも慎重にもなるだろうさ。だいたい私とて、地上の全ての事象を把握しているわけでもないしね。そんな限られた情報しか得られない状況であれば、疑心暗鬼にもなろうというものさ」

「……そうですかね?」

「実際、地上には魔王を名乗る少女の巨大宇宙船もあるし、戦艦ヴェータの艤装が完全になれば、今の現状であれば単艦で地上も宇宙も制圧可能だろう? そして、ヴェータ以外にもまだ地上には残っている可能性があるしね。まあ、流石に組織だって運用できる勢力は無いとは思うがね、宇宙の民にそんな徒におびえる必要はないと懸念を一蹴することも出来ないさ。地上のそういった存在が、宇宙からの帰還民を排除しようと可能性を考慮するならば。それに備えたくなるのは当然だと思わないかね?」

「それは……まあ、そうですね」

 砂漠エリアではキューちゃんのうちうせんを、飛行船みたいので撃墜したプレイヤーとか居たらしいし。ナィアさんの話では他にも戦艦の類が砂漠のどこかに埋まっている可能性は否定できないらしいしね。

 まあ、現代の地球なんかと違ってルラレラティアの場合、どこも人がいっぱいで移民を受け入れる余地がないというわけじゃなく。神様だっているんだし、そんな戦争になるようなことはないとは思うんだけど。

 ……そういうのって、戦争を知らない現代日本人の楽観的観測ってやつなのかな?

 ボクとしては、ルラレラティアの人たちはリアルと違ってそこまで愚かじゃないと思いたいけど。

 コホン。

「まあ、それはそうと。今度の場所は、ちゃんと前もって情報共有と連絡をしておいてくださいね?」

「ん? うむ。まあ、大丈夫だと思うがね」

 ……不安だなぁ。




 最初から大当たり、とかイェーラちゃんは言ってたけど。

 ……結果的には、5カ所全部が大当たりだったりした。

 流石に白エルフちゃんみたいな特殊なケースは最初の所だけだったけど。機人種抜きで動かせるように制御装置を積んだ改造姫人形が、ボクたちの迎撃に出て来るのは毎回のことで。姫人形どころか小型の宇宙戦艦が出てきたところもあった。

 そして。

 そのいずれもが、黒いモヤ、いわゆる”敵”とは無関係で。

「……野井さんってもしかしてうちうでは嫌われてたりするんですか?」

「調停役を自任してはいるがね。内政に口出しはしないようにしているし、求められれば協力は惜しんでいないんだがね。一部では、煙たがられているのかもしれないね」

「んー。たぶん、野井さんって、姫人形とか宇宙船とかそういう技術をもっているし、自分では使っているのに。宇宙に人たちにはその技術を伝えてないみたいだから。野井さんのせいで宇宙に閉じ込められてるとか思ってるんじゃないのかなぁ」

「……それは、あるかもしれないね。敵の脅威に備えての方針、だったのだがね。実際、もし姫人形のような機動兵器を自由にさせたままで、先日のような襲撃が宇宙で起こっていれば。どの拠点もひとたまりも無かっただろうと思うよ? 機人種抜きで動かせる姫人形など、敵にとっては恰好の手駒だろうし、宇宙船が乗っ取られれば1つの拠点だけでなく、全拠点が脅威にさらされただろうしね」

「それはそうでしょうけれど」

 確かに方針は間違っていなかったんだろうけど。

 それにしたって、野井さんって妙に嫌われてるっぽい感じするんだよね。

 そこへ、ずっとそばで黙って控えていた青メイドさんが口を挟んできた。

「アユム、ノイが嫌われている理由は単純だ」

「テッラさん? 何か心当たりがあるんですか?」

「特に初期のころ、ノイと二人で、敵に憑依されそうなものは全て塵にして回ったからだ」

「あー。実力行使しちゃったんだ」

 内政には干渉してないって言ってたけど。

 その辺は徹底して実力行使しちゃってたわけだ。それは、いろいろ恨まれてそうな気がするよね。調停役とか言いながら、実質影の支配者みたいな?

「必要なことだったんだよ」

「うーん。否定は出来ないですけどね」

「それよりも、だ。地上に降りたものは全て零族になってはいるが、あれがこの宇宙に存在する全てだったかと言えば疑問ではあるし。こうしてアユムくんの協力を得て見回っているように、宇宙ではまだまだ警戒が必要だと思う。移民の件は、もう少し長期的に計画を練って行うと神様方に伝えてくれるかね」

「はい、それは了解しました」

 宇宙でもいろいろ問題がくすぶってそうなことは実際に見て来たしね。

 というか、結局。宇宙でもうひとりのイェーラちゃんがらみで何か起きそうなのって、何もなかったなぁ。

「晩御飯には少し遅い時間になっちゃったけど、帰ってご飯にしようか?」

「中華を希望します!」

「ピ」

 いいね。シェラちゃん中華。

 餃子と八宝菜とか食べたいかも。

「ところで、帰りはどうするつもりなの? アユム」

「ん? 行きと一緒で……。あ」

 ジュ・トゥ・ヴーの増幅機能でうちうまで、ばびゅーんって飛んできたけど。

 影族の【影渡り】って転移先に対象となる人が居ないといけないので、ちょっと面倒なのだった。

「……野井さん、地上と連絡とれます?」

「……仕方ないね。私がマーカーになろう。準備が出来たら研究室からアユムくん宛てに連絡をいれるよ」

「お手数かけます」

「いや、こちらこそいろいろ考えさせられたよ」


 そんなこんなで。ボクたちは短いうちう旅行を終えて地上に戻ったのだった。




 地上に戻ると。レイちゃんは妹たちに宇宙の妹(姉?)たちのことを伝えたいと、すぐに帰ってしまった。4Pならず、残念?

 シェラちゃんご飯の中華を満喫しながら、そろそろお風呂でみんなとウフフなことをしようかと思ってニヤニヤしている時のことだった。

『ちょっとアユム、いつになったらこっち来るのよっ!? 何時間待たせる気っ!?』

 怒鳴るようなイズミちゃんからの連絡に、イズミちゃんを手伝う約束があったことを思い出した。

「あ。そういえばイズミちゃんの方もあったんだっけ」

「どうしたのよ、アユム?」

 自分の身長の半分はありそうな餃子を頭から齧っていたイェーラちゃんが首を傾げた。

「身体が空いたら手伝うって、約束してたの忘れてたんだよ」

 ええっと。魂の煉獄エリアで、新人さんが一人、行方不明で見つかってないんだったっけ?

「イズミちゃん、新人さんはみつかったの?」

『掲示板に書き込んでたから、酒場に来るように言ってなんとか合流できたわね。あとは迷宮クリアしなきゃいけないんだけど、流石にド素人と魔法使いのあたしだけじゃちょっときついのよ。前衛やれるヤツいないと』

 流石のイズミちゃんも、本人とあと初心者の二人だけで魂の煉獄エリアの迷宮クリアとか無理そうだしね。

「んー。3時間で、いけるかなぁ」

 イズミちゃんもボクも、一度最下層まで行ってるからマップはわかってるし。エレベーターで一気に9階までいけるから、単純にクリアするだけならほとんどボス戦だけだし。行けそうかな。

「これからイズミちゃんの手伝いに行ってくるね。シェラちゃんはお手伝いお願いできる?」

「ピ」

「え、わたしは誘ってくれないの?」

「ファナちゃんは夜更かしして明日大丈夫? 今日は二人とも学校サボちゃったし。明日はちゃんと学校行かないと」

「大丈夫だもん」

「そう?」

 身体が小さいせいか、ファナちゃんって急に電池が切れたみたいに眠っちゃうことあるんだよね。ちょっと心配なんだけど。

「わたしも手伝ってあげるわよ。今日は結局、わたしの思いつきで1日振り回しちゃったし」

「イェーラちゃんも来てくれるんだ」

 そうすると、ボク、シェラちゃん、ファナちゃん、イェーラちゃん、イズミちゃんに新人さんで丁度6人かな。

「イズミちゃん、こっち4人いるから今から行くね」

『こっち3人なんだけど。1人多いわね』

「あれ、新人さんって残り1人なんじゃなかったの?」

『あんたのとこのメイドちゃんみたいなロボ子ちゃんが居るのよ』

「そうなんだ?」


 機人種のひとも、魂の煉獄エリアにいっちゃうことあるんだね。

 まあ、機械の身体とはいえ、魂はあるんだろうから。

 ……でも、以前閉じ込められたときって、機人種の人って見かけたこと無かった気がするんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ