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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
218/228

35、「不幸な行き違い」

 ……生きてます。間開きすぎ問題。

 ――結論から言ってしまうと。


 白エルフちゃんたちは、レイちゃんたちと祖は同じとするものの、別系統にあたる存在らしかった。

 つまり、前回の灼熱エリアの襲撃とは別口。500年ほど前の大災害とやらで混乱した宇宙で。敵、と呼ばれていた存在、その生き残りであるらしい。

 いや、生き残り、という表現には少し語弊があるかもしれない。

 正確に言うならば、単に隠れ住んでいた生き残りというわけでなく、別の形に進化することで生きながらえた別の存在らしいので。

 野井さんの推測もかなり含まれているけれど、白エルフちゃんたちは、ボクがレイちゃんに影族としての経路から侵入されてしまったように。少し特殊な影族の子に触れたことで大きな変異を遂げた存在なのだという。

 ……具体的にいうと。

 純粋な影族というのは、元々が実体のない影のような魔法生物を祖としているので、ボクがファナちゃんと【影憑依】するときにはその名の通り、憑依という形でファナちゃんボディにボクの精神が宿る、という感じなのだけれど。

 その影族の子は、純粋な影族じゃあなくって、他の種族とのハーフで。だから、精神的な憑依という形ではなくって、身体を足して2で割ったような、肉体的特徴を混ぜ合わせる様な、むしろ【融合】と呼んだ方がよいような、某マンガのふゅーじょんっぽい【影憑依】だったらしい。

 で、その影族のこの相方が、機人種だった。

 いろんな偶然が重なって、憑りつかれた機人種の子とその特殊な【影憑依】をしてしまい。その結果、機人種と影族と黒いモヤ、それがひとつになったような生物になってしまった。

 その影族の子から、生まれた子供たち。その子孫。それが白エルフちゃんたちで。

 だから実は彼女たちは、レイちゃん達と違って。生まれつきの身体があるのだった。

 ちなみに三つ子ちゃんで、容姿にボクの趣味はあんまり関係なかったよ!

 だからシェラちゃん、安心してね!


「……ふむ。彼女たちは、プロト零族とでも命名すべきだろうかね?」

「野井さん、今は名前とかそういうのどうでも良い気がするんですがー?」

 うん。ほうれんそーはおひたしにするとおいしい。じゃあなくって、報連相(ほうれんそう)は大事。

 いやまあ、何かたくらんでる可能性を考えたら、事前に相手方に連絡とかしないのが当たり前と言えば当たり前なんだけど。

 ……要するに。

 コロニーの人たちは、地上での零族発生の経緯を良く知らず。

 いきなり現れた姫人形 (ボクのジュ・トゥ・ヴーね)および零族のレイちゃんの反応から、生き残りの”敵”が現れたと判断。

 普段ならこういう敵の生き残りを排除しているはずの野井さんとは連絡がつかなくて。それどころか、”敵”と野井さん配下の機人種が戦うでもなく一緒に居る状況。

 これは野井さん配下が”敵”に奪われたとしか考えられない、とコロニーの偉い人たちが迎撃のために出撃させた秘密部隊が白エルフちゃんたちだった、というわけなのだった。

 ボクが最初に言った、「こっちを不審な姫人形とみなして調査に来ただけ」というのが実は大当たりだったと言うわけで。

 まあ、だからちゃんと野井さんはコロニーの人たちにちゃんと情報共有と連絡をしとこうよ、というだけの話なのだった。



 ボクが影族であること。

 機人種のシェラちゃん。

 そして、”敵”の気配がするレイちゃんが、人としての身体を持っていること。

 白エルフちゃんたちのご先祖様である影族と、これだけの共通点があったことで白エルフちゃんたちがレイちゃんのことを「もしかしたら自分たちと同じような存在かも」と気が付いたことで、お互いに認識違いがあったことに気が付いて。なんとか情報交換に成功したわけなんだけど。

「……それでは、既に、”敵”の脅威はないと?」

 リーダーの白エルフちゃんが、まだ警戒は緩めない様子ではあったものの、驚きで放心したかのようにつぶやいた。

 ちなみに全裸なのは、白いぴちぴちレオタードみたいなのが使い捨ての宇宙服で、空気に溶けてしまったせいなのだそうだ。野井さん疑ってゴメンネ。

「うん。一応、レイちゃんたち零族とは和解が成立して、地上では機人種のサルベージ計画が進行中だよ」

 どうも野井さんからその辺の事情すら聞いてなかったらしい。

 ほんと野井さんはてきとーだなぁ。宇宙からの移民計画を実行しようって言うのにそんなことすら話してないとか。

「ん。500年虚空を漂っていたレイたちと違って。妹たちはかしこかわいい」

「レイちゃんたちより先に受肉してるんだし、むしろ白エルフちゃんたちのがお姉さんなんじゃないかな? かな?」

「ピ」

 レイちゃんとファナちゃんが白エルフちゃんたちにジリジリ近寄って警戒されてるし。

 というかいつまでも白エルフちゃんっていう言い方も変かなぁ。彼女たちも成り立ちは少々異なるとはいえ、たぶん零族ではあるんだろうし。

「イェーラちゃん、結局、彼女たちのことは偶然ってういうか、考え過ぎだったってことでいいのかな?」

「……そうね。少なくとも、お互いに誤解があって不幸な出会い方をしただけともいえるわね」

「不幸な出会い……って? あ」

 そういえば。

 20機の姫人形を撃墜して、白エルフちゃん3人って。

「もしかして、ボクたち、17人も殺しちゃった……!?」

 思わず絶句したボクに。

 白エルフリーダーさんは首を横に振った。

「……心配するな。姫人形のパイロットならわたし達3人だけだ。1人で複数機を1部隊として運用している」

「わお」

 そっか、白いモヤモヤがあるわけだし、そう言うこともできるわけだ。

 ボクもアユムセカンドとか、分身みたいなの創ったりしたしね。

 そもそも幼女化兵器で幼女化しただけだし、死者はでてないよね。よかったー。

「……ところでこの幼女化?とやら、解除してはもらえないのだろうか」

「プ」

「え? あ、そうなの?」

 シェラちゃん曰く。

 キューちゃんの幼女化兵器と違って幼女保護結界内限定の仕様ではなく、黒いモヤモヤ等の敵を弱体化して捕獲する目的で作成された兵器のため、今のところ解除用の装備がないらしい。

「……えっと、ごめんなさい。とりあえず若くなったってことで?」

「……いや私は。男、だったのだが」

「あー。それはご愁傷様です?」

 がっくりと肩を落とした白エルフリーダーさんだけど。白エルフちゃんかわいーからそのままの方が良いと思うなボクは。

「ところでだね」

 野井さんが腕組みしながら問いかけた。

「姫人形およびそれに類する機動兵器の製造及び使用は協定で禁止されていたはずなんだがね?」

「……黙秘する」

「しかも、明らかに戦前のものでなく、新造された機体だね。魔王系列の劣化版かな。感応兵器がないのは技術的な問題……いや、違うね。先ほどの話からして、むしろ発展型で機体そのものを感応兵器として運用しているということか。ふむ、興味深いね」

「野井さん、機体に関する興味は置いといてー」

「まあとにかく。不幸な行き違いがあったとはいえ。君たちが禁止されている兵器を隠し持っていたことは事実なわけでね。そのことは君たちの上層部に抗議させてもらおう」

「……野井さんは抗議より先に情報共有してくださいね?」

「……善処しよう」

 まあ、野井さんだけの責任じゃないかもだけどね。




「ん。こうする」

「こうでありますか?」

「ん。ちがう。こうする」

「わかったであります!」

「だからそうじゃない」

 レイちゃんが白エルフちゃんたちに服を着せようとがんばってるんだけれど。

 白エルフちゃんたちはレイちゃんより見た目年齢が大きいので、こう、ぶらじゃあの付け方というやつがうまく説明できないようで見ていて眼福だった。てぇてぇってやつだね。

「……アユムはやっぱり、幼女なら誰でもいいのかな? かな?」

「ボクはロリコンじゃないよ、ファナちゃん」

「だって、白エルフちゃんたち見つめる目が完全に事案なんだもん」

「プ」

「うぐっ」

 シェラちゃんにまで疑いの眼差しで見つめられてしまった。

「……チガウヨ? かーいーなぁ、って微笑ましい目で見てるだけだよ? ほんとうだよ?」

「ちゃんとわたしの目を見て言って?」

「……ファナちゃんもすごくカワイイヨ?」

「イチャついてるとこ悪いんだけどさ、コロニーの走査終わったわよ」

 イェーラちゃんが飛んできた。

「どうだった?」

「撃墜したやつ以外に、姫騎士が40機。もっとも、プロト零族がこっちで拘束してる以外だと2、3人てとこらしくて、全部稼働できるわけじゃあなさそう」

「そうなんだ?」

「1人でだいたい6機前後使えるらしいし。まあ予備の機体もあるんでしょうけど。これどう見てもどこかに戦争仕掛ける気だったっていわれてもしょうがないわね。その意味では真っ黒なんでしょうけれど。でも、もうひとりのわたしはたぶん、この件には関わってなさそうね。ただ、大元では……あなたの会った神が関わっていそうだけど」

「そっか、黒幕さんか」

 偶然をかなり意図的に起こしてるっポイっもんね、あの人。

 そうすると、他の4つのとこにも何か……仕込まれてる可能性があるのかな。


 ……晩御飯までに帰れるかなぁ。

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