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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
202/228

20、「女神、襲来」

 ……というわけで、なぜか。

 この間もルイちゃんと一緒に行ったちょっとお高い喫茶店で、とっても怖いオンナノコと一緒にお茶をすることになったんだけど。

「……」

「……」

「……」

 ボクとルイちゃんは、そっとそっぽを向いたまま黙ってお茶をすすり。

 ゆーりちゃんは狐のお面を被ったまま、そんなボクたちをにんまりと微笑みながら黙って見つめている。

 そういうわけのわからない状態になってかれこれ30分が経過しました……。

 なんだろうこの状態。ゆーりちゃんて、ちょっと存在が天元突破しているせいか、非常に感覚がずれているところはあるけれど、決して悪い子じゃあないし、嫌いなわけでは無いんだけれど。ゆーりちゃんに、まおちゃんのお化け屋敷ダンジョンで精神崩壊一歩手前まで追い詰められた身としては、どうしたってあまり親しくしたい相手ではないのだった。

 というか、実際、知り合いというレベルで別に友達というわけではないのだし。なのに、向こうはボクにかなり興味を持っている様子なのが困った感じ。

 イメージ的には街を歩いていたら、隣のクラスのあまり親しくない、いかにも不良って感じの子に妙にフレンドリーに声をかけられて「んな怯えんな、別に何もしねーよ。ちょっと話きかせて欲しいんだけどよォ、そこでお茶でもしようぜ?」って喫茶店に連れ込まれたみたいな?

 うー……。どうすれバインダー。

 そっぽを向いたまま、すっかり冷えてしまったコーヒーを舌先でちろちろ舐めていると。

「(あの、あの……!)」

 不意にルイちゃんが脇をつついてきたので、ちょっとくすぐったいと思いながらルイちゃんに耳を寄せる。

「(なぁに? ルイちゃん)」

 ゆーりちゃんの方を気にしながらも、小声でルイちゃんに問い返すと。ルイちゃんはなんだかとっても限界を感じさせる、あわあわした顔でぷるぷると震えていた。かわいい。

「(アユムさん、この状況何とかしてほしいんですけど。ううー)」

「(ボクに言われても困るなぁ)」

 【影渡り】でルイちゃんと一緒にこの場から逃げ出すことは簡単だけど。

 「知らなかったのか? 魔王からは逃げられない」とか言って普通についてきそうな感じがあるしなー、ゆーりちゃんって。

「(そもそも神さまがどうとか、何の話なんですかっ!? あと、この人って灼熱エリアのイベントででっかい狐に乗ってたひとですよね? NPCかと思ってたんですけどどういう知り合いなんですかっ!?)」

「あー」

 そういえば、ルイちゃんに初めて会ったのって、まおちゃんのお化け屋敷ダンジョン終わったあとだったっけ? リニューアルしたまおちゃんダンジョンにはルイちゃんも入ったことあるけど、ゆーりちゃんには会ってないのか。

 ん? どっちもゆーりちゃんに会った記憶があるのはボクだけなのかな。

「……じゃあ、まずはお互いの自己紹介から?」

 両方の知り合いはボクしかいないので、しょうがないので手短に紹介する。

「二人とも面識はあるけど、まず自分から言っておくと、ボクは城之崎歩です。高校2年生」

 なぜかゆーりちゃんは最初っからボクのこと知ってた素振りがあるけど、ちゃんとした自己紹介はたぶん初めてだよね。

「で、こっちはユーリちゃん。なんか珍しい苗字だった気がするけど、ごめんなさい覚えてない」

「ん。”十六女”って書いて”いろつき”って読む。ちなみに似た苗字で”十八女”で”さかり”というのもある。豆知識、かな」

「へー」

「あと、中学2年生、かな」

「え、そうなの? 意外」

 いつも狐のお面被ってるから、素顔見たことは数えるほどしかないけど。ユーリちゃん中学生だったのか。そういやまおちゃんやダロウカちゃんと仲良いみたいだし、年齢近かったんだね。

「で、こっちはええっと。……ルイちゃんです」

「……アユムさん、私の本名忘れてますね? ひどいですっ」

 ルイちゃんが涙目で訴えてきた。涙目かわいい。

「ごめん、だって1回しか聞いてないし。リアルの連絡先とかなかなか教えてくれなかったから電話とかメールもしたことなかったし」

 実はボクあんまり記憶力は良くないのだった。

「もー。私はルイーズ・ブリュネです。忘れないでくださいね? あ、あと私は高1です」

「うん、もう忘れない」

「……そのやり取りが尊くて大変結構、かな」

 なぜかゆーりちゃんが満足げに頷いていた。解せぬ。



「……それで、神様云々って何の話なんですか? LROの話ですか?」

 簡単な自己紹介を済ませたら、ルイちゃんはいろいろ吹っ切れたというか、ルイちゃんに取ってはさっきまでは名前すら知らなかった人だったわけで、少なくとも知り合いレベルにはなったわけだから話しかける余裕が出来た感じみたい。それともゆーりちゃんが中二だと知って年下だから少しは話しやすくなったというところなんだろうか。

 ルイちゃんは、飲み物のおかわりを注文した後、ユーリちゃんに向かって問いかけたのだった。

「ん。わたしはこことはちがうセカイで女神をやっている」

「……もしかして、厨二病というやつですか?」

 ルイちゃんがボクを見つめて来た。

 なんでこっち見るのかな?

「んー。ボクも正確に理解してるわけじゃあないんだけど。LROとは別のシステムの世界があって、そこで女神様やってる人ってことだよ」

「LROみたいなゲームって、他にもあるんですか……。どんなところなんでしょう?」

「ん。レベルとスキル制。特殊な能力はあまりない、かな。こっちのせかいにレベルとスキルがあると想像するといい、かな」

「へー。ちょっと興味ありますね。それLROMで出来るゲームですか?」

「……ルイちゃん意外にゲーマーだね?」

 LRO開始から1ヶ月も延々ひとりで大森林エリアを彷徨ってたって話だし、異世界旅行のノリでLROを楽しんでるのかと思ってたけど。

 まあLROって敵と戦って経験値稼ぐようなゲームではないから、一般的なコンピュータゲーム的なシステムでLRO的な冒険してみたいかって言われると、ボクも興味があるかもしれない。

「ん。えるろむにはたいおうしていない、かな。データのフォーマットがこんぽんから異なるから、直接来るしかない、かな」

「んー、残念です。……え。直接来るって、どこかそのゲーム見られる場所ががあるんですか?」

「……ん?」

 なんかルイちゃんよくわかってない感じ?

 魂の煉獄エリアの時に、ルイちゃんもルラレラティアが本当の異世界だって、知ったんだと思ってたけど。もしかしてルイちゃん、認識してない?

「あー、女神ってつまり、運営側の人なんですか? 中学生なのにすごいですね!」

「ん。まあ、そんな感じ、かな」

 ちょっとだけ首を斜めにして、ゆーりちゃんが小さく頷いた。

「ってことは、アユムさん、LROの女神様になるってことですか?」

 ちょっとだけ目を輝かせてルイちゃんがボクに顔を寄せてきた。キスしちゃうぞ?

「え、いや。誘われたことは確かだけど。まだ返事はしてない」

「いいですねー! 私もいつかゲームに関わるお仕事したいんです!」

「……そうなんだ?」

 リアルのルイちゃんって、どこか現実味がないというか、ふわふわしたなにか綺麗な物だけ集めたようなところがあったけど。夢を語るルイちゃんはどこか少年じみていて。ルラレラティアでのルイくんを感じさせた。

 ……というのはおいといて。やっぱりルイちゃんって、LROをちょっとすっごいゲームとしか思ってない様な?


「――興味があるなら、創ってみる?」


 え、誰?

 いきなり脇から声をかけられて。見ると白衣のメガネをかけた女性が、どこかイタズラっぽい笑みを浮かべて立っていた。

「自称神様……じゃあ、ない?」

 何の脈絡もなくいきなり出現することといい、白衣にメガネというスタイルであることといい、自称神様が来たのかと思ったんだけど、よく見ると別人だった。

 いや、顔も結構似てはいるんだけど。大人にも子供にも見える年齢不詳な自称神様と違って、明確にオトナの女性で。何より雰囲気が違う。いつもどこかおちゃらけた雰囲気のある自称神様と違って、どこか冷たく、それでいて優しいような、不思議な雰囲気。

「……えっと、どなたですか?」

 思わず問いかけると。

「あたしは神様よ。元、が付くけどね」

 不思議な女性は、そう言ってウィンクした。

「もうひとりの自称神様っ!?」

 自称神様とかもう、お腹いっぱいなんですけどっ!?

「ああ、君たちは寧子とも知り合いなんだっけ? じゃあ、三池(みいけ)沙羅(さら)と名乗っておくわね。 既婚者だし、日本の慣習に合せると本当は苗字変わっちゃうんだけど。わかりやすい方がいいでしょう? 気軽にサラちゃんって呼んでいいわよ?」

「え?」

 あえて同じ苗字を名乗るって、それ、自称神様のご家族ってこと?

「同席してもいいかな?」

「かまわない、かな」

「ありがと」

 ゆーりちゃんが少し奥の方にずれて、サラさんが隣に座る。

「それで、ルイちゃん。さっきの話の続きね。興味があるならセカイツクールあげるけど。創ってみる? とっても根気が必要だけど」

「え、え? あの、それってゲームを創れるツールか何かなんですか」

「ルラレラティアだって創れちゃうわよ?」

 にんまりとした、どこか自称神様っぽい笑みを浮かべて。サラさんが名刺大の紙にさらさらとどこかのURLっぽいものを書いてルイちゃんに差し出した。

「えー! いや。流石に個人でVRMMOとかまでは」

 ルイちゃんが頭を振って断ろうとしたけれど、サラさんはルイちゃんの手を取ってその上に乗せた。

「大丈夫。別に全部ひとりで創る必要なんかないわけだし。お友達だっているでしょう?」

 ちらりとボクの方を見て、サラさんがウィンク。

「あたしだって、寧子と二人でこのセカイ創ったんだよ。まあ、結婚してセカイから離れることになって、運営は寧子にまかせっきりだったんだけどね」

「この世界?」

 首を傾げるルイちゃんに。

「最初に言ったでしょう? あたしは神様だって」

「……?」

 さらに首を傾げるルイちゃん。

 まあ、口で言われるだけだとなかなか信じられないよね。ボクも未だにあの人のことは自称神様呼ばわりだし。

 ……って、あれ。

 じゃあ、もしかして、なんだけど。

「……このところのルラレレティアでの、一連のアレってもしかして」

「あら、アユムちゃん。レポートでは結構、状況に流されてるだけなイメージあったけど意外に鋭い所もあるのね?」


 黒幕、来ました。わお。

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