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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
201/228

19、「神様人生相談」

 ログアウトして部屋に戻ってくると。シェラちゃんが心配そうにボクの顔を覗き込んでいた。

 ちょっと連絡だけしてすぐに戻って来るよって言ったのに、自称神様の取り調べのせいでだいぶ時間が経ってしまっていたから心配をかけちゃったみたい。

「ピ?」

「ん、大丈夫だから」

 何か問題でも?と聞かれてそう答える。

 けど、そうだなー。シェラちゃんもある意味でルラレラティアの神様の一人なわけだし。

 ちょっと聞いてみようかな。

「……シェラちゃんはカミサマってどう思う?」

「……ピ?」

「ごめん漠然としすぎてたね」

 自称神様に突き付けられた選択肢のことをかいつまんで説明すると、シェラちゃんは目をぱちくりとさせて、それから「おめでとうございます」とばかりに小さく胸の前で拍手してくれた。

「いや、あんまりめでたい話でもないんだけど。シェラちゃんはカミサマってどう思う?」

「ピピ」

「あー、そうだっけ。位置づけ違うんだったね」

 双子女神ちゃんや自称神様がルラレラティアを文字通りに作り上げたカミサマなのに対して、光神ミラ、闇神メラといったルラレラティアで祀られている神様というのは”そのセカイの神様として”カミサマに用意された存在に過ぎない。その世界におけるある種の力、権能を司る存在であってセカイの小道具という意味合いの存在でしかない。

 ……シェラちゃんに至っては、野井さんが創った神様だし。

「ピ」

「うん。いきなりカミサマやるかいっ?って言われても困るよねぇ」

 というか、ええっとハナちゃんのお兄さんの太郎さんとか、女神ティア様とかと同じような立場らしいけど。自称神様って、カミサマを増やすのが目的?

「ボクはただ、ふつーにシェラちゃんやファナちゃんと、あ、あとついでにルイちゃんも入れてあげるとして。LROで、ルラレラティアで、冒険を楽しみたいだけなんだけどなぁ」

 なんでこんな訳わからないことになっちゃってるんだろ。




 ――翌朝。


「おはよー、ハナちゃん」

「おはよー、アユム。寧子さんに聞いたんだけど……こっち来て」

 校門で待っていたハナちゃんは、挨拶もそこそこに物陰にボクを引きずり込んだ。

 ドキドキ。まさか学校でイケナイコトとかしちゃわないよね。

「……ねーこさんって、自称神様の人だっけ?」

「そうだよ。で、アユムが神様になっちゃったって本当?」

 なんだか目を輝かせて、ハナちゃんが顔を寄せてくる。これはキスしなきゃね。

「んちゅ」

 ハナちゃんの鼻の頭に軽くキスをすると、ハナちゃんはちょっと顔を赤くした。かわいい。

「ひゃ! もう、アユム! イタズラしちゃだめでしょ! ……こんなとこで」

「大丈夫、ちゃんと影で見えなくしといたから」

 なのでこのままでぃーぷなヤツをしてしまってもよいでしょうか、えへへへへ。

「そういう問題じゃないんだけど。で、本当なのかな? かな?」

「んー、ほんとーみたいだよ。いまいち実感わかないけど。といってもまだ足を一歩踏み入れた程度らしいんだけど」

「へー。じゃあアユムも新しいセカイを創っちゃったりするのかなー?」

「それはまだわからないかな」

 とういうか、限定的な空間内の事象改変しかできないし。この能力でどうやってセカイを創れって言うのかな。

「知愛おねーちゃんが、ルラレラティアとは別の世界を創ってるみたいなんだけど、連れて行ってくれないんだよね……。なんか恥ずかしいからって」

「あー、うん。その気持ちわかるかも」

 ボクだって真っ先に考えたのがかわいいネコミミちゃんがいっぱいのセカイだったし。

 ルラレラティアはあんまり双子女神ちゃんっぽくないけど。きっとティア様が創ってるセカイは趣味丸出しというか性癖だだ漏れなシロモノなんだねきっと。行ってみたいなぁ。

「アユムが創るときにはわたしにも協力させてね?」

「うん」

 まあ、自分の思うようなセカイを創れるというのは。すごく魅力的ではあるよね。

「あ、あとアバターのことなんだけど」

「うん、そっちは今日の夜、ボクのプライベートルームで会える?」

「なんとかなりそお?」

「たぶん。念のためレイちゃんも呼んだ方がいいかな」

 ちょっと心苦しいけど。最悪の場合、零族のレイちゃんに介入してもらってファナちゃんとの影族の契約をリセットしてもらえば何とかなりそうな気もする。

「ん、じゃあ夜に。後でメールしとくね」

「うん」

 ちょっとだけファナちゃんをぎゅってして、エネルギーを補充。

 これで今日も一日たたかえるよ。




 放課後。

 お友達と寄るところがあるらしいハナちゃんと別れて、ひとりで帰宅。ちょと寂しいけど夜には会えるしね。

 帰りの電車の中でシスタブをいじりながら、昨日送ったメッセージの確認をする。

 ユキノジョウは来るみたい。ハナちゃんはログインしなかったのか返事なし。朝確認しとけばよかったかな。ナィアさんも来られるみたい。シロウサギちゃんも参加と。……キル子ちゃんも来るのかー。ルイちゃんはまだ返答無し。イズミちゃんは……。

 そう言えばイズミちゃんはルイちゃんの学校の近くなんか行ったことないって話だったっけ。

 あの後、結局、新人さんの歓迎会に参加するかどうかは回答きてないね。

 ……というか、ボクが見たのが仮に見間違いでなくて本当にオサちゃんだったと仮定して。

 なんであんなところをうろついてたんだろう?

 イズミちゃんが知らない心当たりは無いってことは、双子のオサちゃんの方だって行動圏内って感じがしないよね。

 んー。ルイちゃんまだ学校にいるかな。【影渡り】で行って、あのあたりちょっと調べてみようかな。

 とりあえず、適当な駅で降りてルイちゃんに電話すると幸いまだ学校の近くらしかったので人気のない所に移動してもらう。でもって物陰から【影渡り】でルイちゃんに合流、と。



「……あの、いきなり背中から抱きついて来るの、やめて欲しいです」

「あ、ごめん。ルイちゃんなんか良いにおいするから、ちょっと堪能したくて」

 ルイちゃんの綺麗な金髪に顔をうずめて深呼吸。すーはーすーはー。

「あの、アユムさん?」

「大丈夫、大丈夫。このくらいのスキンシップは女の子同士でやるのは普通だし」

「……人ことはあまり言えませんけど。アユムさんも大概、ちょっとおかしいですよね?」

「ボクは欲望に忠実なのだー、わはは」

「なんか、思ってたのと違う……。前はもっとかっこいい感じじゃありませんでした?」

「え、ルイちゃんからはボクってそんな風に見えてた?」

 まあ、冷静に考えてみると。何度かルイちゃんの危機を救ったことあるし。

 ある意味、イイトコロだけルイちゃんには見せて来たのかなぁ。意外と乙女なところもあるんだね。

「まあ、ボクってえっちで自分勝手だから。覚悟しておくことー」

「……素のアユムさんを見せてくれるようになったと思えば、仲が進展しているということになるんですかね?」

「なんで疑問形……?」

 しつれいしちゃうなー。

「一昨日はいっぱい仲良くしたじゃん」

 お風呂とベッドでね。健全にだけど。


「――そこのところちょっと詳しく、教えてほしい、かな」


 不意に割り込んできた鈴の音のような声に。

 背筋がぞぞぞとして。

 振り返ってはいけない、見てはいけないという感情が沸き起こるのに。身体が勝手に動いて背後を振り返ってしまう。


「久しぶり、かな」


 そこには。

 全身真っ黒なセーラー服に、白い狐のお面を付けた女の子が。

 お面の下でにんまりとした笑みを浮かべながら立っていた。

「ゆーり、ちゃん?」

「ん」

 お面以外、上から下まで真っ黒なのに。闇の中にぽっかりと浮かび上がるようにゆーりちゃんはただ佇んでいた。ただ立っているだけなのに。強烈な存在感。

「ねいこから、神が自然発生したと聞いて見に来た、かな」

「……」

 ボクの方はあんまり会いたくなかった、というか。イベント終わったしもう二度と会わないんじゃないかと淡い期待をいだいてたんですけど。


「わたしも自然発生の神。だから」


 ゆーりちゃんが、音もなく、ゆっくりと近づいてくる。


「興味ある、かな」


 狐のお面を少しずらして。

 ゆーりちゃんが小さな舌をぺろりと出した。


「あなたとそこの子の愛の営みに」


「いやそっちっ!?」

 名前の通り、ゆーりちゃんてそっちの趣味ありまくりなのは知ってたけど。

 別の世界からやってくるほど暇人だとはしらなかったよっ!?

 天井に手が届かないので未だに電灯なし生活……卓上ライト買ってきました。手元が明るくなったよ!

 

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