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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
197/228

15、「ルイーズ・ブリュネの災難」

 ――月曜日がやって来た。


 結局、昨日は防衛戦のあともいろいろあって大変だった。仕様が変わって月曜0時に幼女の国がリセットされるようになって、侵略戦があったんだけど。

 ……キューちゃん、仕様変わったの忘れてて。侵略戦始めるのがだいぶ遅れた上に、20時ごろの防衛戦で幼女保護結界が壊れたままだったので、ぬこぴー兵器とか使えないままで……最終的に今週の幼女の国は早くも終了となっちゃったんだよね。

 まあ、結果的に今週はもう侵略戦も防衛戦も発生しないから、キル子ちゃんに絡まれなさそうなのは良かったかもしれない。昨晩のも激しかったしなぁ、キル子ちゃん。けど、【夢幻泡影】を使えるようになったボクにはキル子ちゃんをあしらうのも簡単なのだった。えっへん。

 ちなみにキル子ちゃんにはボクの姿に見えるキル子ちゃん自身と戦ってもらいました。なんかぶっすり刺されたとか掲示板で言ってたけど、ボクは知りません。キル子ちゃんがキル子ちゃんにやったことだからね。

 ……あとは、ルイちゃんのこととか。

 やっぱり、フォローはしておかないとだめだよね。

 ルイちゃんのことが嫌いだからああしたわけじゃあないから。このままさよなら、というのも寂しすぎるし。告白されたボクがルイちゃんをふったというか、ルイちゃんの方がボクを受け入れられなくてボクを拒否したわけなんだけど。

 たぶんそうなるだろうなってわかってて【影憑依】を使ったわけだから。やっぱりボクがルイちゃんをふった形になるのかなぁ。

 けど、このままルイちゃんがログインしなくなっちゃったりとかしたらイヤだ。

「……ピ?」

「あ、ごめんシェラちゃん。ちょっとぼーっとしてた」

 朝ごはんの途中だったんだよね。

 せっかくのシェラちゃんご飯なんだから、ちゃんと味わって食べないと。

「ピ」

「……うん。今日は帰りにちょっと、寄り道してくる」

 シェラちゃんもやっぱり、ルイちゃんのことが気になってたみたいで。フォローお願いしますと言われてしまった。

 というか。

 んー?

「もしかして、ルイちゃんが急に行動に出てきたのって、シェラちゃんが何かけしかけたりした?」

「……ピ」

「やっぱりそうかー」

 最初はまおちゃんのあみだくじダンジョンで、シェラちゃんとルイくんが一緒になった時だったかな。あの時も何かルイくんから相談を受けて、シェラちゃんが積極的に行きましょうみたいに答えたみたいだったし。

 昨日のも、直接的には妖精さんにイタズラされてちょっと興奮しすぎちゃったのが原因っぽいけど、そのあとシェラちゃんにフォローお願いしてからルイちゃんがなんかずっと考え込んでる風だったし。で、防衛戦のアレと。まさかルイちゃんに押し倒されるとは思わなかったけど。

 ピとプしか言わないシェラちゃんがどうやってルイちゃんと意思疎通したのかちょっと謎だけど。

 シェラちゃんに手招きして、おでことおでこをごっつんこ。

「ふむー」

「ピ?」

「んー。なんでもなぁい」

 ついでに軽くキスしてごちそうさま。

 ……ルラレラティアで冒険ばっかしてると、学校に行くのが億劫になるね。




 いつものように校門前で待ち合わせたハナちゃんに、ルイちゃんのことをフォローしに行くことを話したら。なんだか目をぱちくりさせて何度も頷いた。

「うん、そだね。わたしも行った方がいい? というかアユム本人が行くのって逆効果なんじゃ?」

「んー、大丈夫。出来ればファナちゃんには、シェラちゃんと一緒にボクの部屋で待ってて欲しいかも。たぶん、うまく行ったらルイちゃん連れて来るから」

「ん。お持ち帰りってやつだね! でも、アユムの居ない時にわたしひとりでお部屋を訪ねるのってあんまりいい記憶ないなぁ」

「あー」

 普段LROでばっかりいちゃいちゃしててお互いの家を訪ねることがほとんどないから。

 ファナちゃんがボクの部屋に来たのって、魂の煉獄エリア関連の時くらいなんだっけ?

「大丈夫だよ」

「あんまり信用できないけど、信じまーす」

「もー」

 くすくす笑うハナちゃんと靴箱で別れた。




 さて。

 時間を見計らってシスタブでルイちゃんの現在位置を確認する。普通ならとっくに学校とかに着いてる時間だし、そうでないなら自宅の場所が分かると思う。

 幸い、ルイちゃんはパーティから離脱はしていなかった。あるいは、そんなことにも気が回らない状態でログアウトしたのかもしれない。もしくは。二度とログインするつもりがないからどうでもよかったとか。

 むー。

 前に自称神様主催の打ち上げやった時に普通に来てたから、ルイちゃんってそこまで極端に離れた所には住んでないはず。

 ……と思ったけど県またいで反対から反対くらいの距離あるね。

 放課後に行ったら間に合わないかも。

 しょうがないので午後は授業サボって早退かな。

 避けられたら困るから、連絡は直前にすることにしよう。



 で、シスタブの現在地表示を頼りにやってきました、ルイちゃんの学校。

 ……なんか、すっごいお嬢様学校なんですけど。

 とても日本とは思えない様な、洋風のレンガ造り。蔦とか生えててものすごく時代とか感じさせる建物なんだけど古臭いという感じはしない。

 あの、ルイちゃんが、ねぇ。いや確かに見た目だけは箱入りお嬢様っぽかったけど。お外で妖精さん相手に頑張る姿からは想像もつかないね。

 警備員とか居るし、よその学校に勝手に入るわけにもいかないので校門の外でひたすら待ち続ける。2月に外でひたすら立ち続けるのはすごく寒かったけど、近くにコンビニとか喫茶店みたいの全然ないんだよね。

 待ち続けること数時間。

「……居た」

 びっくりするほどかわいいルイちゃんは、お嬢様学校の制服を着ているとさらにかわいかった。というか周りから浮いてるというか、お嬢様学校の他の生徒と比べてもなんていうか際立ってるよね。

 ……というか、お友達らしき姿も見えないし、実際に周りから少し遠巻きにされてる感じあるね。あれだけかわいいと実際、なかなか近寄りがたいのはわかる気はするけど。

 おっと、見惚れてる場合じゃなかった。

 少し離れたところから、ルイちゃんに電話する。

 ルイちゃんは通知を見てボクからだと気が付いたのだろう。じっとスマホの画面を見つめたまま、結局取らずにそのまま鞄にしまおうとして。

 ボクと、目が合った。

「……や」

 小さく手を振ると。

「……な、な」

「はち?」

「なんで、アユムさんが、ここに、いるんですか」

 まあ確かに、教えてもいない自分の学校とかで待ち伏せされたらすごくびっくりするよね。

 にっこり微笑みながら、ルイちゃんに駆け寄る。

 一歩下がろうとしたルイちゃんの手を握って。

「こっちで会わないと、もうLROにログインしてこないんじゃないかなって思って。ごめんいま時間あるかな? 少し、話せない?」

「……」

 ルイちゃんは、黙って(かぶり)をふった。

「これ以上、私をみじめにさせないでください」

「(ボクがルイちゃんのことをどう思ってるかだって、あの時わかってくれたと思ってるんだけど)」

 耳元で囁いたら、ルイちゃんの顔が真っ赤に染まった。もともと肌の色が白いからすごく目立つね。

「な、な、な」

 目を白黒させて、思い出しちゃったのか。ボクの妄想って結構えぐいからね。

「それより、こんなとこでお話してると目立つし。どこかゆっくり話せそうなところないかな?」

 元々遠巻きにされてたみたいだけど、なんだかヒソヒソ話が聞こえて来るね。

 あのブリュネ様にあんなお相手が、とかキマシタワーとか。よくわからないけど。

「……こっちです」

 顔を真っ赤にしてうつむいたまま。それでもボクの手を振りほどくことなく、ルイちゃんが急ぎ足で進み始めた。



 ルイちゃんに案内されたのは、すごくお洒落な喫茶店だった。高そう。というか普通にコーヒー1杯が1000円とかした。ルイちゃんやっぱお嬢様だ。

「……お話というのは、何でしょうか」

 温かいミルクティーを飲んだら少し落ち着いたらしく、ルイちゃんが少々のため息交じりに言った。

「まずは、シェラちゃんがいろいろ焚き付けちゃったみたいなのでそのことを謝りたいのと、」

「いえ、シェラさんは関係ありません。全て、私の意思で、私がやらかしたことですので」

 ボクの言葉を遮って、ルイちゃんが深く頭を下げた。

「……その節は、大変申し訳ないことをアユムさんにしてしまいましたこと、お詫びいたします」

「まあ、その辺はお互い様なところがあるから」

 苦笑気味にボクもコーヒーを口に含む。すごく香りがいいね。お高いだけのことはあるみたい。

「もう一つは、ボクの事情についてかな」

「……アユムさんの事情?」

 ルイちゃんがわずかに首を斜めにした。

「うん。【影憑依】はね、お互いの記憶や感情が筒抜けになっちゃうけど、古い記憶や感情まで常にわかるものでもないから」

 たぶん、ルイちゃんの記憶を感情を知らなければ。わざわざ話す気にもならなかったと思う。

 けど、ルイちゃんの記憶と感情を知った以上、このことを伝えないのはフェアじゃあない。

「……ボクは昔、大好きだった女の子に。自分の感情を押し付けて、傷付けてしまったことがある」

 だいぶオブラートに包んだ言い方になっている。

 本当はもっとひどくって、ボクが地元に進学できなくなった理由でもあるし。

 ルイちゃんがボクにしようとしたことは未遂で終わったけれど、ボクは実際に幼馴染の彼女のことを傷付けてしまった。

「だから、ルイちゃんが暴走しちゃった気持ち、わからなくもない」

「……違うんです」

 ルイちゃんがゆっくり首を横に振った。

「ん? 何が」

「アユムさんが、自分に寄せられる好意に臆病だってことは知っていました。自分に対する好意が、どういう種類の好意かって、確証を得られない限り、決して一定以上の気持ちは返してくれないって」

「え?」

「そうなった原因は今聞きましたけど……」

「んん?」

「だから、私が、どうしようもなく気持ちを抑えきれなくなったのは。あの時にも言いましたけど、私がどれだけアユムさんのことを想っているかって、知ってほしかったからです。そういう意味で好きなんだと、知ってほしかったからです」

「……うん」

 その気持ちは、あの時確かに受け取った。

「そう、思っていたのに。私が本当は、アユムさんじゃなくてもよかったのかもしれないって逆に気付かされて。そう思ったら急に怖くなって、自分の気持ちが全部信じられなくなって。だから……」

「わかる」

 というか、つながってたしね。

「そう私が思ったことだって、アユムさんには伝わっちゃってたんですよね」

「うん。そう言えば、もう一個言っとかないといけないことがあったんだった」

 これも言っておかないと、フェアじゃないからね。

 ちょっと、口に出すのに勇気がいるけれど。

「……えっとね。実は、初めてファナちゃんと【影憑依】したとき。ボクの方が受け入れられなくって失敗した。だからね、ルイちゃんも。ボクを受け入れらなかったことを、そんなに気に病むことは無いと思うんだ」

「……アユムさんの方が、なんですか?」

 ちょっと驚いたようで、ルイちゃんが目を何度も瞬かせた。

「……うん。ファナちゃんってその時までずっと、ボクのこと男の子だって思ってたみたいで。ボクは、女の子同士でお互いに好きあってたつもりだったから。ああ、ボクの勝手な勘違いだったんだって、ファナちゃんのことを拒否しちゃった」

「……」

「もっとも、その後すぐにファナちゃんにキスされて。本当の両思いになったんだけど」

「惚気られてます?」

 ちょっと呆れ顔のルイちゃんが、じと目で睨んできた。

「んー。そうかな、そうかもしれないけど。というより、だから、かな。ボクがルイちゃんに会いに来たのは」

「……ファナトリーアさんがアユムさんにそうしたみたいに、私にキスでもしに来たんですか」

「お望みなら、そうしても」

「……アユムさんって、ひどいですよね。残酷です」

「よく言われる」

「……アユムさんのばか」



「……こんなところでするんですか?」

「人目につくところでやるもんじゃないでしょ?」

 まあ、路地裏でこっそりって。あんまり女の子がやることじゃあないと思うけどさ。

 って。

「え、あの。どうかしましたか?」

「気のせいだと思うんだけど。今そこをイズミちゃんが通ったような」

 前、御見舞いに行った病院とかだいぶ違うとこだし。この辺に中学校は無かったと思うけど。

 うん、やっぱり気のせい。

「じゃあ、覚悟はいい?」

「何の覚悟しなくちゃだめなんですか?」

「んふー」

「アユムさんの笑顔がかなり不安なんで、きゃ」

 黙らせるように、ルイちゃんのほっぺに軽いキス。仮契約完了だね。

「じゃあ、行くよー」

 【影移動】あーんど【影渡り】。

「はい到着~」

「え? え?」

 ルイちゃんが目を白黒させている。涙族じゃなくっても、涙目ルイちゃんは可愛いね。魅力的だね。

「アユムおかえりー。っていうーかどうやって帰って来たの??」

「ピ!」

 ハナちゃんとシェラちゃんがお部屋で迎えてくれた。

「仮契約して一緒に【影渡り】で」

「……こっちリアルだけど?」

 ハナちゃんがなんだか首を傾げてるけど。別におかしなことないよね?

「それより、準備できてる?」

「ピ!」

「あの、何の、準備なんですか?」

 ルイちゃんはなんだか混乱してるらしくって、あわあわしてる。かわいい。

「んー。温泉で何度か一緒にはなったけどさ。裸の付き合い。しちゃおうか?」

「な、な?」

「はち?」

「なんでなんですかーっ!?」


 この後、4人で滅茶苦茶お風呂で洗いっこした。

 もちろん、いっぱい手が滑ったよっ! えへへっ!

 31日までに書こうとして間に合わなくって1日も超えちゃって結局今です……。

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