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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
193/228

12、「ときどき怖いファナちゃん」

 まずはお着替えしなきゃね。ボク痴女じゃないし。

 全てをさらけ出して表を歩けるほど変態さんじゃあないのだから。

 【影収納】の中には、シェラちゃんが用意してくれているお着替えもいっぱい入っていたのだけれど。

「……見事にスカートばっかりだー」

 ボク、学校の制服以外は基本的にズボンなので、スカートって穿き慣れてないんだよね。まだ戦わないけないのにひらひらするのもあれだし。おぱんつ見えるの気にしないといけないのもアレだし。

 というかボクが普段いつもズボンだから、シェラちゃんが機会があればスカート穿かせよう、って虎視眈々と狙ってるのかな……。

「アユム、アユム、いったんお部屋に帰る?」

「いや、早くシェラちゃんたちと合流したいし」

「……でもここで着替えるの?」

「そういえばそうだったー」

 LROは装備変更とかでぱぱっと着たものが入れ替わるような仕組みは無いんだよね。ユキノジョウが持ってる聖騎士のカードとかには装備を一瞬で入れ替えるスキルとかあるらしいけど。通常のシステムとしては存在しないので普通にお着替えしなくちゃだめなのだった。

 この格好で冒険者ギルドまで戻るのはどう考えても痴女だし。プライベートルームに戻るしかないよね。

「クローゼットに予備の服あったかなぁ」

 とにかく、今回の防衛戦は敵にやられない限りカード変更とか自由って話だから、いったん戻ってカード構成も変えるべきかな。

 悩むより行動だ。

「いったん戻ってくる」

「わたしもカード構成見直してくるね。単独で戦えるようにしてくる」

「そうだね」

 今のファナちゃんは見た目重視で飛沫族と有翼族の種族カード2枚差ししてるから、攻撃手段が魔法の矢のレベル低い奴くらいしかないのだった。確か飛沫族で格闘も使えるようにはなってたと思うけど。基本ファナちゃんて、とにかくばっきゅーんだからなぁ……。

「じゃあすぐに」

「うん」

 ボクたちはプライベートルームに戻った。



 まずは服を探しながら、シェラちゃんに状況をメッセージで飛ばす。読んでる暇ないかもだけど。

「……アユムちゃんも大変ねぇ。なんでこういろいろ巻き込まれるのかしらねぇ?」

 人魚なハーマイオニーちゃんが、しっぽをくねらせながら首を傾げてたけど。それボクの方が知りたい。

「またあの自称神様の仕込じゃなきゃいいんだけどね」

 まあノリが違うから関わってなさそうだけど。

 おっと、ズボン見つけた。これはリアルから持ち込んでシェラちゃんにいろいろ着せようとしてた時のかな。

 おぱんつの替えは……【影収納】にはなんかえっちぃ下着しか入ってないけど、誰かに見せるわけじゃないからこれでいいかな。上はともかくとして、紐ぱんとか穿くの初めてなんだけど。

 うう、なんか普段穿いてるのと違うから妙にハズカシー。なんかくいこんでる気がするし。

 ばたばた着替えながらカード構成を考える。攻撃系のカードはだいたいスロットに余裕のあるシェラちゃんが使ってるから、影族をベースとして基本は職業カードになるんだけど。

「……悩んでる暇はないかー」

 見た目が痴女じみた裸ペイントなみに生地の薄いぴちぴちハイレグレオタードになってしまう「コラボ記念カード」。見た目はアレだけど、盗賊と武闘家に忍者のジョブが全部使えてしまうという割とぶっ壊れカードなので、ガチ戦闘するなら使わないという選択肢はないのだった。

 あと【空歩き】はいろいろ有用だし。あまり使ったことないけど【近接武器(上級)】も入れとくと使える技が増える。遠隔攻撃手段が欲しいとこだけど、それは盗賊の投てきで何とかするしかないかな。

「よし、カードセット完了!」

 あとは痴女な見た目をごまかすために、上からジャケット羽織って、下は……ってズボンどこに消えたんだろ。

 ああ、めんどくさい!

 いったんコラボカードを引っこ抜いて、ズボンも脱いで、コラボカードを差してからズボンを穿く。よし、これでOK! ほんと謎な仕様が多いよね、LROって。



「ごめんファナちちゃん、思ったより時間かかった」

「んー、待ってないよ。それより急ごう」

 合流したファナちゃんは相変わらずボクの姿だったけれど、飛沫族と有翼族の特徴が消えていた。種族カードは入れてないみたい。

 ということは。確か職業カードほとんど持ってないから、ファナちゃんもコラボカードかな? 白スロットのことは教えてあるし。

 迷宮アトラクションは一緒に出来なかったから、どういう感じかわからないけど。ファナちゃんならやっぱり魔法系だよね。

「どういう構成?」

「支援特化にしてきたよ。サポートは任せて」

「お願いねー」

 ええと、島議事堂は向こうか。

「【浮遊】と【飛翔】入れて来たから、飛ぶよ」

「え」

 いきなりファナちゃんに後ろから抱きしめられて。ふにょんとした幸せな感覚にちょっとびっくり。

 今、ファナちゃんってボクの姿だから、ボクのおっぱいの感触なのかもしれないけどっ。

 ちょっと言葉に表せないくらい幸せ。女の子のお胸って、やっぱり癒しだよね。なんかさっきキル子ちゃんと戦って嫌になった気分があっさりどこかにいっちゃった感じ。

「ぼーっとしてないで、ほら飛ぶよ」

「わー」

 両脇の下に手を差し込まれて、持ち上げられる。【浮遊】はくっついてるものにも影響を与えるらしくて、あまりボクの重さは感じてないみたい。ふわり、とファナちゃんと一緒に浮き上がって、空を一直線に駆ける。

「あはっ。いつもはアユムが後ろからぎゅーってしてくるけど、今日は反対だね」

「うん」

 ふにょんふにょん。

 ボクのぺたんこおっぱいでもこんな気持ちいいのかー。

 ……そういやルイくんが落ち込んでた時にサービスして上げたことあるけど。これは元気になるね。ってそう言えばルイくん、今日はルイちゃんだったっけ。だいぶおかしかったけどあれからどうしたかな。いつもは天使で参加してるけど。

「……っ!?」

 不意に下から飛んできた魔法の矢を、とっさに影収納から出した適当な武器で迎撃する。

「イズミちゃんたち以外にも天使が居たのっ!?」

「違うみたい、あれ普通のプレイヤーっぽい?」

 見ると、数人が固まって、ボクに向かって腕を伸ばしていた。天使なら空飛んで来ればいいし、確かに普通のプレイヤーっぽい。

「……そりゃあ、この機会に天使側でポイント稼ぎたい人も出て来るかー」

「ずっと幼女の国だったしねぇ。もしくは、わたしたちが一直線に島議事堂目指してるから迎撃された可能性も?」

「あ、味方の可能性もあるのか」

 いつもみたく、ぬこぴーの格好じゃないから敵味方の判別がつきにくい。ボクたちが空を飛んでたから天使側と間違われて攻撃された可能性もあるわけだ。

「ファナちゃん、やりすごせる? どっちにしたって相手してる暇ないし」

「出来るけど、しないよ。フレンドリファイアなしなんだから、やっちゃえばいいだけじゃない」

「え」

「【集中】【多重詠唱】からのー【魔法の矢】で【マジック・アロー・レイン】」

 周囲に、無数の魔法の矢が浮かび上がって。

「ばばばばばっきゅーん! あははっ。倍返しだー!」

 まるで、雨のように、地上に降り注いだ。

「倍どころじゃないでしょファナちゃんっ!?」

 ……後には何も残っていなかった。合掌。

 味方の可能性もあったけど、結局天使側に着いてたみたいだね。

 それにしても。

 ファナちゃん、支援特化とか言ってたけど。思いっきり攻撃に特化してないっ?




 一気に空を飛んで、島議事堂、いやキューちゃんの魔王城に到着した。

「うわー、大乱戦」

「全体アナウンスでキューちゃんを倒す、護るのがそれぞれの勝利条件言ってたし、そりゃあここが主な戦場になるよね」

 にゃーにゃーと叫びながら、ぬこぴー兵の格好をした子たちがバリケードを作って魔王城の入り口を固めていた。

 幼女の国では女の子用の子供服を用意するのが面倒で、普段からぬこぴー姿で活動している子も多い。けれど今回は幼女保護結界なしなので、ぬこぴー兵器が使えないから単なるユニフォームみたいになっちゃってる。

 それに対して天使側のプレイヤーが魔法の矢などを撃ちまくる。

 ぬこぴーな子たちはどこから持ってきたのか、それに対して火炎瓶を投げつけたり、石を投げたり、にゃーにゃと叫びながら結構楽しそう。

「いつもの侵略戦だと思ってぬこぴーでログインしてきた人たちも結構いるのかな」

「防衛もぬこぴーでしたいってこだわりなのかも」

 って眺めてる場合じゃないや。

「一気に突入しよう」

「あいあい」

 ファナちゃんが加速して、魔王城の3階に突入。

 ええっと、キューちゃんは……それに、シェラちゃんは。

「……んっ」

 ボクの意識に、シェラちゃんが反応して位置を知らせてよこす。たぶんキューちゃんも一緒だ。【影渡り】は……だめだ、シェラちゃんが激しく移動してるせいで座標が定まらないみたい。

 イズミちゃんと激しくやり合ってるのかな。

「ファナちゃんこっち、急ぐよ」

「了解! 援護は任せてっ」

「……ボクごと撃っちゃいやだよ?」

「……当たっても、だいじょうぶだよ? フレンドリファイアなしだから」


 にっこり笑うファナちゃんの笑顔がちょっぴり怖かった。

 時々、ファナちゃんに愛を試されてる気がする……。

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