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ボク的セカイの歩き方  作者: 三毛猫
第五話「ボク的セカイの歩き方」
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 3、「シロウサギちゃん・いん・わんだーらんど?」

「これ、おとーとのシローです」

「いつも妹のハナカがお世話になってるみたいで」

 ファナちゃんとシロウサギちゃんが同時に言った。

「……いや、弟と妹ってそれ同時には成り立たないでしょう?」

 ファナちゃんの弟なら、ウサギちゃんから見たら姉のはずだし、ウサギちゃんの妹って言うのが正しければファナちゃんから見たら兄のはずだよね。

 んー。もしかして双子だったりするのかな。どちらが兄か姉かって、主張がくい違ってるみたいな? 確か地域とか時代によって先に生まれた方が上か下かって違うんじゃなかったっけ。

 むむむ、と考えていると。

「わたしの方がお姉ちゃんなんだもん! もんもん!」

 ファナちゃんがぷぅ、と頬を膨らませた。かわいい。

「……小さい頃は妹の方が身体が大きかったものですから、勘違いしちゃったみたいで。ハナのやつ未だに姉ぶるんですよ。今じゃあ、1つ下どころか6つか7つは下に見えるくらいちんちくりんなのに」

「あー! シロー、ちんちくりんとかゆった! ひどい! だいたいわたしのことおねーちゃんって呼んだのシローの方じゃない! いっつもわたしの後ろついてきておねーちゃんおねーちゃんって!」

「……そんなの記憶にないもん」

 いい年して、もんとか言っちゃうウサギちゃんカワイイ。ファナちゃんもたまに言うし、そういうとこなんか兄妹っぽい。

「兄妹ゲンカはほどほどにねー」

 まあ、ファナちゃんの主張とは違って、つまるところシロウサギちゃんが兄、ファナちゃんが妹なのが正しいっぽいね。

 そういえば、ぬこぴー兵になった時ってファナちゃん、ほとんど容姿変わらなかったっけ。

ちっちゃい頃は年齢の割に成長が早かったみたいなこと言ってたし。

 ん? ファナちゃんとひとつ違いってことは、シロウサギちゃんもしかしてボクと同学年?

 ボクと同じ早生まれならいっこ上の可能性もあるけど、流石に受験真っ只中の高校三年生がこの時期にオンラインゲーム始めるわけないよね。2月だとギリ終わったばかりの可能性も?

 思わずシロウサギちゃんをじーっと見つめる。

「え、なんですか」

「ごめん、ちょっと気になったんだけど。ファナちゃんとひとつ違いってことは高校二年生?」

「えっと。はい。やっぱり、この時期にゲーム始めるとか、だめですかね?」

 ちょっとモジモジウサギちゃん。かわいい。

「あー。ボクも同じだからひとの事言えない」

 来年、というか、もう2月だから今年になるのか。ボク受験生なんだよね。ウチの学校はかなりの進学校だから、実はとっくに受験体勢に入ってたりする。

 ちなみにウチの学校には夏休みがない。お盆休みが1週間あるだけで、あとは夏季補習という名目で夏休み期間中も普通に授業が進められてしまう。高1の教科書は1学期の内に終わるし、高2の夏休みまでに3年までの教科書は全部終わらせて、あとは全部受験対策で過去問題とかを延々やらされる。

 ……地元から離れたかったとはいえ、なんでこんな高校に入っちゃったかなぁ。

「なんか遠い目をしてますけど、同じってことはアユムさんも高二ですか」

「ああ、うん。そうなんです。お互いにゲームはほどほどに楽しもうね」

 苦笑しながら、ごまかすようにシロウサギちゃんを抱き上げる。

 ああ、やっぱりファナちゃんに似てるとぎゅーってしたくなるなあ。抱き心地がそっくりだし。

 最近はファナちゃんがボク同じ姿なこともあって、ちっちゃなファナちゃんをぎゅーってする感覚が不足しがちだし。

「ちょ、やめてください! 何度も言いますけど中身は男なんですってば!」

 ウサギちゃんがジタバタ暴れるけど気にしなーい。ってゆーかボクみたいなぺったんに抱きしめられたって、どーってことないでしょー?

「ぎゅってされただけで赤くなるとか、ウサギちゃんかわいい」

「痴女ですかっ!? ちょ、どこ触って、ひゃんっ!?」

「うふふ、よいではないかよいではないかー。あとボク、痴女ちがうし」

 んー。まさかウサギちゃんって掲示板とか見てるのかな?

 かわいいウサギしっぽ(とかわいい小さなおしり)の感触を存分に楽しんでいると。

「あゆむ、このシローは可愛いけど、本当はこんなかわいくないんだからね? ひょろ長くなっちゃって、全然かわいくないんだから」

 ファナちゃんがウサギちゃんのお耳をぎゅって手でつかんで引っ張った。

「ひゃあ」

 ウサギちゃんが可愛い悲鳴をあげる。

「み、みみ、敏感なんだから、やめて、ハナ」

「もー、シローのくせに生意気だー。あむ」

「ひゃうんっ!?」

 ファナちゃんがシロウサギちゃんのお耳をハムハムし始めた。

 ボクもやってみたいなぁ。

 ってゆーか、シロウサギちゃんぷるぷる震えてかわいすぎるね。

「……これ、兄妹らしいが流石に本人が嫌がっていることはやめぬか」

 流石に見かねたのか、ずっと傍観していたナィアさんが止めに入ってきた。

 その時。


「――どもー女神です。えー、ハラスメント行為の通報を受けてやってきましたー」


 どこかのヒーローの変身ポーズみたいなのを決めながら、いきなり女神装束のティア様が現れた。

「……え?」

「って、アユムちゃんにハナ?」

 やってきたティア様が目をぱちくりさせて。

「ダメじゃない、アユムちゃん。自分がされて嫌だったことを他人にしちゃあ」

「……あ」

 初めてルラレラティアに降り立った日。

 パーティを組んだレッドとバーンに、変なことをされそうになって。それを助けてくれたのがティア様だった。

「……ごめんなさい」

 ウサギちゃんを地面に下して、謝る。

 ウサギちゃんは、顔を真っ赤にしてぷるぷる震えていた。怒っているのか、恥ずかしかったのか、すごく嫌だったんだろうと思う。

 最近はファナちゃんともだいぶ気安い関係になっていたし、シェラちゃんとは言わずもがなで、普通の感覚ってやつを忘れていたんだと思う。そりゃあ、同性であってもお尻とかしっぽとか、お耳とか撫でまわされたら嫌だよね。反省。

「お詫びにボクのお胸でもお尻でも好きなだけ触っていいから」

「……」

 シロウサギちゃんは真っ赤になったまま黙っていた。

 しょうがない。

「ボクのぺったんお胸だと物足りないなら、ナィアさんに協力してもらって……」

「そういうことじゃないです! 何度も言いましたけど、僕、中身は男なんです。こんな格好ですけど、男なんですから! その、あの、出来れば女性としての慎みを持ってですね、接していただけると、嬉しいんですがっ」

 シロウサギちゃんが真っ赤な顔でまくしたてた。

「シローってむっつりだから。アユムにぎゅーってされて変な気起こしそうになって困るから止めてってことみたい」

「ファナちゃん通訳なるほど?」

 同学年なはずだけど、ずいぶんと初心な。

 ボクが男の子だったら黙ってニヤニヤしちゃうけどなぁ。

「んー? ……なんかこのウサギちゃんどこかで見たような気がする、ってハナに似てるわね」

 ティア様がじーっとシロウサギちゃんを見つめた。

「え? あの、女神様って、LROにおけるいわゆるGMってやつですよね? ウチのハナの知り合いですか??」

 ウサギちゃんが困惑したように目をぱちくりさせた。

「あー、知愛お姉ちゃん。これ幼女になってるけどシローだから」

 ファナちゃんがウサギちゃんを指さす。

「え、マジで? これが、あの、シロー? やだかわいい! ちっちゃい頃にハナの服着せたの思い出すわねっ!」

 きゃーとなんだかかわいい声を上げながら、女神ティア様がシロウサギちゃんを抱き上げた。

「え? え? ちょ、ドウイウコトデスカ?」

 シロウサギちゃんは、混乱している!

 ティア様に抱きかかえられて、頬ずりされて、目玉がぐるぐるになってるし。

 あ、そう言えば、ティア様ってハナちゃんのお姉さんでもあるんだっけ?

 正確にはお兄さんの太郎さんと同一人物だとかなんとか。

 そう考えるとファナちゃんって兄弟多いね。

「あ、シローは知愛お姉ちゃんに会ったことないんだっけ?」

「チアお姉ちゃんって誰っ??」

「えーっと。お父さんの隠し子ってことになってる。たろーにーちゃんと同い年のおねーちゃん」

「あ、そういえばこの姿になってから会うのって始めてだった。俺だよ俺、太郎ダヨー」

 ティア様がシロウサギちゃんをぎゅーってお胸で抱きしめて。

「え、な、なんだってーっ!? にーちゃんそういう趣味がっ」

 情報過多で頭がパンクしちゃったみたいで。

 シロウサギちゃんが、きゅう、と目を回してぐったりしちゃった。

 ……ティア様が止め刺した気もするけど。




「……なんかうやむやになっちゃったけど、今回は注意だけでペナルティはなしね。合意の上でなら誰も文句は言わないけど、相手が嫌がってるのに無理矢理するのはダメ、絶対」

「はい。反省シテマス」

 ぺこりとティア様に頭を下げる。

「……けど、シローウサギちゃんは可愛過ぎだったから気持ちはわかるわね」

 ティア様もかなりシロウサギちゃんをいじりまわしてたしね。

「ハナともども、シローのこともよろしくね、アユムちゃん」

「……ヨロシクしちゃっていいんですか?」

 手籠めにしちゃって、良いんですかねっ。

「あれでも中身はちゃんと男の子だから、あんまりからかわないであげてね? アユムちゃん自覚ないみたいだけど、最近とっても女の子らしさが上がってるから」

 ティア様がちょっと苦笑交じりに、ボクをじっと見つめてきた。

「……しょっちゅう男の子に間違われるんですが。ボクのどこに女らしさが?」

「そう? このところは男の子と間違われたことないんじゃない?」

 にんまり笑うティア様。どことなく、自称神様みたいな雰囲気があった。

 言われてみると、確かに最近男の子と間違われたような記憶はないかもしれない。

 まあ、ぬこぴー姿だったり、幼女の国と化した島エリアだったりだから、幼女姿が多かったせいかもだけど。

「……そう、ですかね?」

「なんていうか、つるんてした体型だけど、なんだかすごくえっちな体つきなのよね。思春期の男の子には毒だわ」

「……ティアさまのえっち」


 掲示板とかでたまに言われるけど。

 凹凸少ないボクの身体にエロス感じるとか変態が多すぎだと思う。

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