45、「きゃっきゃウフフ」
白い湯煙と、卵が腐ったような温泉のニオイ。
テレビの旅行ものとかでよく見る様な、日本風の露天風呂とはちょっと違っていて、彫刻が施された石が床に敷き詰められていたり、なんか変なポーズした裸婦像とかが飾られていたりする、少し異国情緒あふれる屋外の温泉。
見た目はともかく、少し白く濁ったお湯はあたたかくっていい感じ。
「ひゃっはー! 温泉なのですー! 露天風呂なのですー!」
どこからともなく現れたちびねこちゃんが、かわいいおしりにしっぽをフリフリさせながら、さっそく飛び込んで水しぶきを周りに飛び散らせた。
「……ちびねこちゃんは元気がイイネ」
思わずつぶやくと。
「……ウチのちびねこがはしゃいじゃってごめんねー」
タオル一枚の女神ティア様がちょっと頬を赤く染めて苦笑した。
というわけで……温泉なのですよ。
関係者全員で、温泉宿を借り切って、きゃっきゃウフフの温泉たーいむなのですよ。
なのに。
「……なんでぬこぴー兵を強要されるんだー」
確かにぬこぴー兵はぴちぴちレオタードで、水着とほとんど変わらない感じだけどさ。
ぬこぴー兵のレオタードは脱げないんだよ……。
ぱんつまで脱げるLROなのに、ぬこぴー兵はレオタード脱げないんだよっ!?
いやんでうふふなところを見られないのは、かーなーり、残念なんですけどっ!?
ちなみにさっき飛び込んだちびねこちゃんは、てぃあろと胸に書かれたスク水完備です……。
「いや、それはまあ、ここの露天風呂、脱衣所は別だけど混浴だし、急に水着用意ってのも難しいしね。中身が男性の子もいるし、みんなでお風呂するにはしょうがないんじゃないかな?」
「混浴の露天風呂じゃなくても、普通に男湯と女湯に別れればいーじゃん、って、思うんですけどっ。水着とか邪道だしっ! ……って、そういうティア様は普通にタオルだけ巻いてますけど大丈夫なんですか?」
ぺろんしちゃうのを期待してもいいですかとは口に出して言わないけどっ。
「あー。太郎からも聞いてると思うけど、わたしと太郎のアバターってちびねこのティア・ローちゃんなのよね。だからカード使えないのよ」
「あー。良くわからないですけど、そんな話を前に聞きましたね」
そういえば、ティア様と太郎さんが元は同一人物とかわけのわからない話も聞いたような?
……ということは精神的には男性に近かったりする? のだろうか。ふむ?
「あ、太郎も来た」
「あー。ティアにアユムさん、ども……」
中華なドレス着ていた幼女化太郎さんだけど、脱いだら普通に幼女だ。意味不明だけど。
こちらもバスタオルだけ身体に巻いているんだけど、慣れてないのかそれとも男性の意識が強いのか腰回りにしか巻いてなくって。
「……太郎さん、かわいいですね」
ふくらみはほとんどないけど、かわいいピンク色のが見えてますよ。
「いや、そんなジロジロみないでよアユムさん」
「太郎、脱衣所でタオル巻き直しておいで。胸がない幼女だからって腰回りだけはまずいっしょ?」
「え、誰も気にしないだろ?」
「あまいのおにーちゃん!」
「よのなかはきびしーの!」
突然、太郎さんの両脇に水着姿の双子女神ちゃんが現れて、謎のポーズを取った。
「え、あ、ちょっと」
「いいからこっちくるのー!」
「かわいい水着もってきたから、きがえるのー!」
ああ、引きずられていっちゃった。
「……」
ふと気が付いたら、男性用脱衣所の方からそっと扉を開けて様子をうかがふたつの人影が。
男性用の方だけどちゃんとぬこぴーな格好なので別に危なくはない。
「ふたりともー、遠慮しないで入ってくればいいのに」
声をかけると。
「……いや、そう言われても、流石に、なぁ」
「ぬこぴーじゃない女性もいるようだし」
うじうじ入り口に留まっていたのはアンジーとガチ勢リーダーのバルムンクさん。
「恥ずかしがってる方が恥ずかしいんだよっ! キラッ☆」
そんな二人を突き飛ばすようにして入って来たのが満面の笑みのユキノジョウだった。
「うわ」
「おっ」
押されて、アンジーとバルムンクさんが入ってくる。
二人ともぬこぴー兵なので普通にぴちぴちレオタードのはずなんだけど、身体にバスタオルを巻いているからなんだか裸みたいに見える。ちょっと興奮するね!
「ほら、さっさと入る~」
ユキノジョウに背中を押されてやってくる。
「……」
「……」
なぜか二人とも無言だ。お互いに顔を見合わせて、なぜかこちらを見ようとしない。
もしかしてティアさまが裸バスタオルだから恥ずかしがってるのかな。
「あれ、まだ始めてないんですか?」
「ぬこちゃんいっぱいだーうふふ」
「こんちわー! 幼女だらけだね」
「あれ、他のひとはまだです?」
そこへ、クルリンさん、アリアさん、あやよさん、テトラさんが入ってきた。
意外なことに、テトラさんは男性用脱衣所の方から入ってきたり。普通に丁寧な言葉つかってたから、女性だと思ってたんだけど。ちょっとびっくり。
幼女ハァハァしてたアリアさんならわかるんだけどなぁ。
「……アユムさん、サボリさんやマジゲロさんはまだですか?」
そんなテトラさんに聞かれて、一瞬首を傾げる。
「えーっと、見てないけど」
開発チームの人って、ぬこぴーじゃなかったような?
「あー。彼らは室内の男湯でのんびりしてるよ。ぬこぴーじゃないから」
代わりに応えてくれたのはティアさまで。
「え、男湯あるんなら俺らそっちの方がいいんじゃないか?」
「気まずい混浴よりそっちのがいいよな」
「じゃ、行きます?」
アンジー、バルムンクさん、テトラさんが出て行ってしまった。
「……えー。この流れだとユキちゃんもいかなきゃいけないかんじぃー?」
ユキノジョウもちょっと悩んでいたようだけど、男性陣ということで男湯に行くことにしたらしい。ちいさくこちらに手を振って、男湯の方に行ってしまった。
ぬこぴー姿で押しかけられたら男湯の方も困るんじゃないかと思うけど。
しばらくしたら遠くから悲鳴が聞こえた気がしたのは気のせいだと思うよ。うん。
「……」
「……」
少し離れたところで、なんだか見つめ合っていい雰囲気なのが、ネーアちゃんとMK2。
うん。邪魔をするのはやめとこう。馬に蹴られたくないからね。
精霊姫とかいうとんでもない隠し玉もってたんだよね、MK2は。詳しく聞いてみたい気もするけど今は邪魔するのやめとこう。
そういえば、ダロウカちゃんもおかしなカード持ってたみたいだけど。そっちも気になるなー。
二人とも課金ガチャで引いたのかな。聞いた時には内緒って言われたから、やっぱりアレなんだろうなぁ。
なんて思っていたら。
「うむ? アユム殿とティア殿とは珍しい組み合わせではないだろうか」
「おっふろ~! おおきなおっふろ~!」
ダロウカちゃんとマオちゃんがそろってやってきた。
……バスタオルすら巻かない全裸で。
「ぶふぉっ!? ここが天国ですかっ!?」
「ちょ。アリアさん汚いですよ」
興奮したアリアさんが、鼻血噴いて倒れたんですけどー。
クルリンさんに介抱されてるし。
「ちょっとダロウカちゃん、マオちゃん、ぬこぴーでって自称神様に言われなかった?」
「風呂に水着やタオルをつけるのは邪道ではないだろうか? ましてやレオタードなぞ言語道断ではないだろうかと思う」
「いや、ここ混浴だし男性陣も来るし」
「む? 男性は遠慮して男湯に向かったと聞いたが、違うのだろうか」
「アユムさん、アユムさん、ちみっこダークエルフちゃんはいないのー?」
「あー。レイちゃんはね、妹ちゃんたちと一緒に別の温泉借り切ってるよ」
妹ちゃんたち、最終的に500人近くになったんだよね。
温水プールみたいなちょっと大きなところを借りてみんなで仲良くしてるみたい。
「……それは初耳、かな」
「ぎゃーっ!?」
いきなり後ろからお胸をわしづかみにされて、思わず変な声あげちゃった。
って、ゆーりちゃんだしっ!?
「ろりっこをもみもみする約束だった、かな?」
「いや、最終戦でボクたちが頑張ってた時に、レイちゃんの妹たちとキャッキャうふふしてたってきいたけどっ!?」
「レイ自体は揉んでない、かな」
「いいからそろそろその手を離してほしいんですけどっ!?」
ボク、自分がするのはイイけど他人にやられるのはあんまり好きくない。
「……ん。ちいさいと感度がいい、かな」
「やーめーて!」
そういやゆーりちゃん、キューちゃんのことも揉むとかゆってたような。
「ほ、ほら、むこうにキューちゃんいるし!」
ぬこちゃん三匹にかこまれて、余は満足じゃ状態のキューちゃんが優雅にグラスを傾けている。
ってよくみたらキューちゃん達も普通に全裸だった。ぬこぴーのオリジナルなぬこちゃん将軍たちは普通にレオタード脱げるらしい。
「ん。魔王のきゅーちゃんもかわいがる、かな」
すすっとゆーりちゃんが離れて行った。
とりあえずキューちゃんのために合掌しておく。
「ぬおわっ!? ひゃんっ!? ちょ、どこさわってんのやっ!? あっ」
かわいい悲鳴が聞こえて来た気がしたけど、きっと気のせい。
「ゆーりちゃんは相変わらずだねぇ」
ティア様が苦笑してる。
「世の美少女は全て愛でるためにあるのではないだろうか」
「ひゃっはー! ちびねこちゃんげっとだぜー!」
「にゃにゃっ!? マオなのです。裸なのはえっちなのです」
こっちはこっちでマオちゃんがちびねこちゃん抱きしめてハッスル中。
ダロウカちゃんもなんか変なこと言ってる気がするんだけど気のせいかなっ!?
「……ところでアユム殿、いつも一緒にいるシェラ殿やファナトリーア殿はどうしたのだろうか」
「あー。えっとねー」
ちょっと説明しづらくて言葉に詰まる。
「……もう少ししたら来ると思うんだけど」
ぬこぴー死神兵で影憑依したり、いろいろやった影響で。
ファナちゃんのアバターがちょっとおかしなことになっちゃったんだよね。
キューちゃんは「バグちゃうで!? オレのせいと違うわー」って言ってたけど。
……なんでかいろいろ、混ざっちゃったっぽいんだよね。
えぴろーぐとして書いてたんだけど1話に収まらなかったしキャッキャウフフが書き足りないので第四話はもうちょっとだけ続きます……。




