27、「第二次スーパー幼女大戦!」
間が空いてすみませぬ……。
いろいろ決定した方針に従って、太郎さんが公式HPで正式にイベントの告知を掲載した。
■スーパー幼女大戦
・このイベントは全員でぬこぴー兵になって迫りくる敵を迎撃するのが目的です。
・灼熱エリアの街に攻めてくる敵を迎撃する防衛戦と、敵の本拠地を発見して破壊する侵攻戦によって構成されます。
・街を守りきり、同時に敵の本拠地を破壊することが勝利条件となります。
・イベント期間は明日、日曜昼~敵の本拠地を破壊出来た時点で終了となります。
・当日は各所にイベントエリアへの直通ポータルが開通されますので、灼熱エリアを訪れたことがない方も参加可能です。
・なお、防衛に失敗した場合、灼熱エリアがルラレラティアから消滅する場合があります。
・参加する場合はプライベートルームより、担当のSYS-COにお申し付けください。
・参加報酬のぬこぴー兵のカードはSYS-COよりお受け取りになれます。
・なお、入手可能なぬこぴー兵のカードには種別ごとに枚数制限がありますのでご注意ください。
大体こんな感じらしい。
本当ならいつ攻めて来るか不明なのでイベント告知もしにくかったんだけど、プレイヤーの人数が増えると敵が襲ってくるらしいので、逆にイベント時刻を設定することで人の集まる時間を調整して発生させようということなのだった。
「うまくいくといいなー」
「ピ!」
シェラちゃんの作ってくれた遅めのお昼ごはんを食べながら、シスタブでネットにつないで各所の反応をチェックする。
概ね反応は上々の模様。島エリアでの侵略戦はボクたちがポータルでやって来るそばから幼女化してたから、不完全燃焼だったプレイヤーが多かったらしく、今度はぬこぴー側での立場で暴れまくってやるぜーって感じの人が多かった。
またバトル要素に興味が薄く、島エリアでの侵略戦に参加しなかった人たちも参加するだけでぬこぴー兵のカードが手に入るとあって興味を持った人もいるみたい。
「……どこまで、思った通りに行けるかな。全部、いろいろ、仮定に仮定を重ねた上ででっち上げた作戦だしなー」
まあ、やってみるしかないんだけどさ。
ご飯の後はイベント前の準備として、いろいろお仕事をした。
まず戦艦ヴェータとナーガ・ナィアーツェはちょっと近すぎるので、ナーガ・ナィアーツェの方が街を挟んで反対側に移動した。地面の整地はキューちゃんがジムノペディでぱぱっとやってくれたんだけど。
……なんかキューちゃんのジムノペディは魔法のステッキみたいなの持ってて、一振りで何でもやっちゃうんだよね。こう、かなり昔目の魔法少女アニメの主人公みたいに?
キューちゃんが「なんかてけとーにいいかんじになーぁれ♪」ってステッキ振っただけで変な☆とかのエフェクトがキラキラって舞い散って、呪文のとおりに何か適当にイイ感じになってしまうのは正直チート臭いと思う。
移動したナーガ・ナィアーツェ側もジュ・トゥ・ヴーとジムノペディで岩を積み上げたりして街の外に陣地を作成した。
街自体は溶岩対策?で割と高い壁で囲まれているので、門を閉じるだけで敵の侵入は防げるので、さらにその外側に防衛線を構築した感じ。重装歩兵はこの陣地から外に向けて砲撃する感じかな。
陣地構築が終わったところで、ファナちゃんは重装歩兵にお着替えして「試し撃ちしてくるー!」ってお出かけしてしまった。
ボクも一度ログアウトしてリアルでいろいろ済ませてからお着替えして、今度はシェラちゃんおやつでのんびり英気を養っていると。自称神様から連絡が入った。
『――やっほほい! アユムちゃん、そっちは準備どうかなっ!?』
「えー、はい。それなりには?」
しばらくジュ・トゥ・ヴーは動かさないので、弾薬の補給と新装備の準備中。戦闘データを元に野井さんが設計してくれて、それをシス子ちゃん達が突貫工事で制作中なのだった。
一応、ボクとシェラちゃんだけでも、いつでも出られるように心構えだけはしているけど、本格的な作戦開始は明日の昼なので少しばかりのんびり気味。
『ヴェータの方が改装終わったみたいだから、鎧を用意中なんだけど。アユムちゃんの方でパイロットやれそうな人紹介できないかなっ!?』
「あー。ヴェータって機動兵器運用できるように組み替えてたんでしたっけ。鎧って、ジュ・トゥ・ヴーみたいなのですか?」
『んとねー、そこまで高性能じゃなくってホントに鎧みたいな感じかな? 3、4メートルくらいのパワードスーツみたいな? 機人種のクルーだと憑りつかれる可能性が高いからプレイヤーに乗って欲しいんだよね。大体、10機くらい用意できそう』
「……シロウトが動かせるものなんですか、それ?」
ジュ・トゥ・ヴーはシェラちゃんをインターフェースとして鎧と一体化して操るタイプだけれど。ただのパワードスーツで機人種が乗らないって。
『着ぐるみみたいなかんじかなー? ちょっと動かすのにコツは居るけど、体の動きをサポートする感じのやつね! 武装は全部外付けだから扱いには問題ナイナイだよっ!』
「んー。ユキノジョウとか普段から鎧着てたし、行けるかなぁ。あとロボに乗りたがってた太郎さんとかはどうです?」
太郎さんはイベ関係の調整で、リアルの方に戻っているけど。
『んー。たろーくんにはうちのちみっこ達がなんか用意してるみたいだし、他にはいないかなっ?』
「MK2は前線に行って乗っ取られるとまずいだろうし。まおちゃんやダロウカちゃんには声かけたんですか?」
『二人ともロボにはあんまり興味ないってさー。女の子だしね』
「ボクも女の子なんですがー」
まあ、ロボット好きだけどさ。
「そっちに残ったルイくんとかは? 一応、今はオトコノコだけど」
『リアルは女の子だしねぇ。ルイちゃんは羽つきのぬこちゃんがいいみたい』
ルイくんって、変なところは男の子っぽいのに、そうゆうところはなんだか乙女だよね……。
異常に女子力とか高いし。
「そうなると、もう、あんまり知り合いっていないかなぁ」
『ジュ・トゥ・ヴーとジムノペディは本拠地破壊の方に行ってもらいたいから鎧部隊を防衛に回したいんだよね』
「うーん、知り合いって程でもないけど。島イベのとき頑張ってたガチ勢リーダーの人とかどうかなぁ。防衛部隊まとめてくれたら嬉しいけど」
考えてみると、ボクあんまり男の人の知り合い居ないんだよね。
男の子だと思ってたMK2は女の子だったし、こっちで男の子のルイくんはアレだったし。
「……あ。あとは木工ギルドのアンジーとかかな。あの人もリーダー気質だし」
『ん、りょうかーい。その二人声かけてみるねっ! あとは開発の方からりるるちゃんとか、にゃるきりちゃんとか呼んじゃうかなぁ』
「神様の方で当てがあるなら、それでお願いしますね」
『ああ、うん。ご協力アリガトウゴザイマス。ログインしっぱなしはまた危ないことになるから、イベント開始時刻までは適当に交代してログアウトしてね?』
「あいあい」
通信が切れた。
今はプレイヤーが減ったせいか街を襲ってくることはないみたいだけど、絶対じゃあない。
小回りの利く戦力としてジュ・トゥ・ヴーかジムノペディのどっちかは常に出せる状態にしとかないといけない。今はキューちゃんが慣らしもかねてシムノペディで待機してるから、ボクもいったんリアルで休んどこうかな。
「シェラちゃん、ファナちゃんと二人だけでも出られる?」
「……プ」
「そっか」
ジュ・トゥ・ヴーはシェラちゃんとボク専用に作られてるから、ファナちゃんとシェラちゃんだけじゃダメっぽい。いけたらファナちゃんとキューちゃんとボクとで3交代出来たのになぁ。
「ごめん、キューちゃん。夜までお願いできる? 夜になったら交代するから」
シスタブで連絡すると。
『おう、まかせときー。ぬこどもとイチャイチャしとれば、あっちゅう間やしな』
『にゃー』『みゃー』『にぅー!』
ぬこちゃんんたちまで含めて元気な声が返ってきた。
「ごめん、お願いねー」
というわけで。
ボクはリアルに戻って、シェラちゃんと一緒に夜までお休みした。
夜中警戒を続けて、朝方に少しルラレラティアの方で休んで。
ついにイベント開始の1時間前。
結局、警戒していたけれど昨日から今日にかけてはまったく敵の動きは無かった。
ファナちゃんとも合流してジュ・トゥ・ヴーで待機中。
キューちゃんは侵略戦の準備中なので、今何か起きたらボクたちで対処しなきゃいけない。
そろそろ人も増えて来るだろうし、そうしたらいつ襲撃発生するかわからないから、気を引き締めておかないと。
「……そろそろ灼熱エリアにもやって来るかな?」
新兵器のハンドブラスターを手でもてあそびながら、街の方を見る。
まだ人が増える様子はない。昨日集まって来た人たちは、今日の昼からイベントってことでいったん解散してもらったんだよね。
(んー。ほら、一気に人増やしたいから、今は各地で集合中かなー?)
「あ、そか。時間になったら一斉にポータルでこっち来るんだね」
それなら敵の襲撃が発生する可能性が高そうだね。
『やっはろー! アユムちゃん、準備はどうかなっ!?』
自称神様から通信が入った。
「まあ、いつでも大丈夫なように覚悟はしてます」
街を挟んで東西に戦艦ヴェータとナーガ・ナィアーツェは位置している。
防衛戦が始まったら様子を見て、ボクたちとキューちゃんたちで本体を探索しに出かける予定だ。
「……ところでボクやキューちゃんが離れて、戦艦とかの守りは大丈夫そうですか? 鎧のパイロットって用意できたんですか?」
『んー、まだ全員は来てないけどね。何機かは街の周囲に配置済みでっす』
「へー。鎧ってどんなのなんだろ」
見回してみると、だいぶ離れたところ、街の北側に人型の何かが見えた。
「おー? 変身前のジュ・トゥ・ヴーみたいな?」
ちょっとごつい感じでジュ・トゥ・ヴーみたく女性的な感じはしないけれど、凛々しい西洋鎧みたいな感じのが立っていた。大きな盾を構えていてなんだか強そう。
軽く手を振ると、こちらに気が付いたようで。向こうも大きく手を振りかえしてくれた。
「いきなりで動かせるとかじつは、にゅーたいぷってやつだねきっと。……誰が乗ってるんだろ」
『あれはウチの開発のサボリくんだねー。あ、たろーくんも戻ってきたみたいだよっ!?』
「……ん?」
見ると、街の上空に黒い渦が浮かび上がって。そこから小型の宇宙船みたいなのが現れるところだった。
「……おお? なんか小型宇宙船?」
むぃーっと。渦から出てきた小型宇宙船は、空中で静止して。
さらに続けてまた別の小型宇宙船が黒い渦から顔を出そうとしていた。
「……2機目?」
「わははっ! 女神マシン1号!」
「えーっと、同じく女神マシン2号!」
え、今の声って、太郎さんと……ティア様?
見ているうちに。
最初に現れたおそらく1号機に、後から出てきた2号機が連結する。
「……まさか」
ぐにょん、と1号機の先端が割れて腕が出来て。
同時に2号機の後部が割れて足になり。
いや、どうゆう変形してるのかわけわかんにゃい感じで、女性的なシルエットを持つ巨大な人型ロボットになる。
「「合体! 女神ロボ!」」
ばばーんという効果音と謎のエフェクトが発生して、合体したロボ子ちゃんが空中で可愛らしくポーズを決めた。
……太郎さんのドヤ顔が目に浮かぶようだね。
けど、女神ロボはちょっとあんまりな名前じゃないかな……。




