ぷろろーぐ
ノイさん視点の巨大物体とのバトルとか挟むか迷ったのですが、やめました。
とりあえず第四話、開始です。あいかわらずの見切り発車ですよ。
いろいろ微妙なので後で大きく手をいれるかもです。
→500文字ほど加筆修正と構成を少し変えました(2018/11/11 23:48)
――12月の終わり。
冬休みに入ってすぐの、新装開店まおちゃんダンジョンにアタックした後。
ルラレラティアではいろいろ気になることが起こってるみたいだったけれど、まだ動きが表面化していないというか、何が起こるのかもよくわかってないみたいで、結局ボクは何をすることも出来なかった。
”空から何かがやって来る”とナィアさんは言ってたけれど、詳細不明。
一回、太郎さんと一緒にナィアさんに話を聞きに行ったんだけど、一緒に居た宇宙から帰って来ていた野井さんの話だと、何か巨大な物体がルラレラティアに向かっているのだとか。野井さんは、そういった外宇宙からの脅威を取り除くお仕事をしてるらしいんだけど、その巨大な物体の排除に失敗して、さらに見失っちゃったんだって。
――それが何かは不明
――それの目的も不明。
少なくとも、野井さんの攻撃を退けて身を隠したということは、単なる自然現象じゃあなくって、何らかの意思をもったものであることだけは確か。
そしてその物体がかなり遠くを通常航行をしていたということは、野井さんの様に魔法で転移したり突然ワープしたりするということは考えにくく、ルラレラティアに到着するのはもう少し先になるのではないか、と予想されるのだそうで。宇宙は広いからねぇ。
その話を受けて、太郎さん達はいろいろ調査中。野井さんからの情報である程度の方位が絞れるようになったので、念入りに異常がないか調べてる途中。
あんだけいつも何でもできるとうそぶいてる自称神様は、「あっははは! よきにはからえ~」って笑ってばっかりであんまり役に立ってないみたい。
でもって野井さんはネーアちゃんの乗る戦艦ヴェータが復活したことを知っていて、外敵に備えて改修作業を始めた。野井さん、戦艦ヴェータやその乗員のナナさんやヒフミちゃん、ヨイムちゃんたちの設計者というだけでなく、一応、宇宙軍?の軍籍もってるらしくって、ネーアちゃんの上官みたいな立場になるらしい。
そこまで大事になっちゃってたら、所詮ひとりのプレイヤーに過ぎないボクなんか、どうしようもない。
というわけで。
ボクはかねてからの約束通り、シェラちゃんハナちゃんと実家に帰省することにしたのだった。
ボクの実家は、新幹線で1時間くらいのところなんだけど、新幹線の最寄駅に着くまでが1時間くらいかかるので、待ち時間とか駅から実家への時間とか結局もろもろ込みで片道3時間くらいかかる。それほど遠くはないんだけれど、毎週帰れるほど近くもない場所だ。
なにせ、遠くないと言っても、新幹線代だけで片道一万円こえちゃうしねー。お金がないよ!
最近はルラレラティアでシェラちゃんに作ってもらったご飯(材料費はルラレラティアで稼いだPP)のおかげでだいぶ親からの仕送りは残っていたけれど、シェラちゃんを連れて行こうと思ったら電車賃が倍かかる。流石に少しきびしー。
どうしようかなー、影憑依で合体状態ならひとり分で済むかなーとか考えながら、親に連絡して「こっちのお友達を連れて行きたいんだけど……」と言ったら、父が電車賃を振り込んでくれた。おとーさんありがとー。
というわけで帰省当日。
シェラちゃんと一緒に新幹線の最寄駅の改札口で待っていると。
「アユム~。来たよ~?」
とてて、とかわいらしくハナちゃんがボク達のところへ駆け寄ってきた。
待ち合わせ場所に来たハナちゃんはとってもおめかししていて、三割増しでかわいかった。
「ハナちゃんすっごくかわいい!」
「えへへ~。アユムのご両親にご挨拶するんだから、いっぱいおめかししてきましたっ!」
「かわいー」
思わずぎゅーってしてほっぺすりすり。
「もー、くすぐったーい」
笑いながら嫌がるハナちゃんにさらにすりすり。
「プー?」
「あ、ごめんねシェラちゃん」
シェラちゃんストップが入って我に返った。大勢の人がいる駅前で、ゆりゆりするのはちょっと問題あったねー。反省。
今日はシェラちゃんもおめかし。いつものメイド服じゃなくって、かわいいお洋服をプレゼントしちゃいました! 下着もとってもボク好みのえっちぃのです。
「シェラちゃんも今日はおめかししてるんだー!」
「ピ」
ハナちゃんがいつもと違うシェラちゃんの姿に感心した様な声を上げ、シェラちゃんがえっへんと笑ってくるりとひと回りしてみせた。かわいい。
三人掛けの席に座って、新幹線の中でもいちゃいちゃした。
窓際はシェラちゃん。初めて見る都市部以外の風景に興味深々みたい。
ボクが真ん中で、通路側はハナちゃん。ハナちゃんはさっそくワゴン販売でいろいろおやつを買って食べてる。お互いにあーんとかしながら、きゃっきゃウフフした。
「歩おかえり。お友達もようこそ、いらっしゃい」
実家に着いて、出迎えてくれたお母さんに。
「ただいま、お母さん。こっちはハナちゃんでボクの嫁です。こっちはシェラちゃん、ボクのダンナね」
ハナちゃんとシェラちゃんを紹介したら。
「不束者ですがよろしくお願いします」
「ピ」
「……歩。あんたまたお友達に変なこと強要してんじゃないだろうね?」
「ボクは無実だー」
お母さんに睨まれたよ。
それから。
ハナちゃんシェラちゃんと、アルバムを広げて一緒に眺めてみたり。
マンガとか小説とかを一緒にごろごろしながら読んだり。
お母さんに内緒で、こっそりいちゃいちゃしてみたり。
三人で一緒にお風呂入ろうとしたらお母さんに止められたけど。
ハナちゃんはボクの地元を案内して欲しかったみたいだけれど、中学の時の知り合いとかにばったり出会ったらちょっと嫌なので勘弁してもらった。
そんなこんなで、ボクたちはのんびりと冬休みを満喫した。
そして元旦。
「ハナちゃんシェラちゃん、あけましておめでとー! 今年もよろしくね」
「ピ」
「あけおめことよろアユム~」
「ハナちゃんは省略しすぎー」
去年はなんかいろいろあったけれど、無事に新年を迎えられました。
それも、シェラちゃんハナちゃんと一緒に。
「……明けましておめでとう。お年玉あげるからおいで」
なんだか複雑な顔をしたお母さんが、ポチ袋を手に手招きしたので、わーいと駆け寄る。
ボクの分はほんとにお小遣いレベルだったよ。仕送りとかもらってるし、贅沢は言えないけどね。
「ありがとうございます、お義母さま」
にっこりハナちゃんがお母さんにぺこりと頭を下げて。お義母さんという言葉に反応したボクのお母さんが、深くため息を吐く。
「華香さん。……あんたも、ウチの子にそんな無理に付き合うことないからね?」
「大丈夫です。アユムとは、らぶらぶですから」
ハナちゃんが、ぎゅーって抱きついてくる。
「ピ!」
シェラちゃんも反対側からぎゅー。
両手に花でしあわせ。あと、むにゅむにゅが。むにむにが。うふふ。
そんなボクたちの様子をみたお母さんが、さらに深くため息を吐いた。
「……歩。アンタまだ高校生だけどねぇ、ちゃーんとあたしに、孫の顔を見させてくれるんだろうね?」
「え。お母さん、女の子同士じゃ子供生まれるわけないじゃーん? ……ってアイタッ!?」
ルイくんの例もあるし。もしかしたらLROでならリアル女の子同士でも子供できちゃうかもしれないけど。常識で答えたら、お母さんにゲンコツを喰らった。
「あんたまさか、その子に変なことしてるんじゃないだろうねっ!? 以前、自分のしたこと忘れたのかいっ!?」
「大丈夫。ちゃんと本人の了承の上で手を出すから!」
「……華香さん、ウチの歩に変なことされてないだろうね?」
「はい! アユムは優しくしてくれます」
「……あーゆーむー?」
「ボク、ハナちゃんとはキス以上の事まだしてないよっ!?」
影憑依で一心同体になるのは、文字通りに身体を重ねてるけどえっちなことじゃないもんね。
あとシェラちゃんとは……うん。既にすっごいことをいっぱいしちゃってたりするけど。聞かれてないので言う必要ないよね?
お正月も開けた三日。
「歩。あんた、お友達と仲良くするのはいいけどね。道踏み外すんじゃないよ?」
「どりょくはするー。って、アイタッ」
「ほんとにもう、どうしてこの子はこうなんだろうね……」
お母さんにゲンコツされたー。
あきれられても、どうしようもないよ。
ボクはこういうものなんだから。
「まあ、元気でやっていれば文句はないさ」
休み中もお仕事忙しくてなかなかお話も出来なかったお父さんが、ボクの頭に手を乗せてぐりぐりとかき回す。
「もー、子供じゃないんだから、やめてー」
髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃう。
あたまをぶるぶるさせて逃げ出すと、お父さんはにっかり笑って言った。
「いくつになっても親から見たら子供さ」
「そりゃそうかもしれないけど」
「じゃあ、またな。来年も無事に帰っておいで。歩」
「歩、人様に迷惑かけるんじゃないよっ?」
「はーい。それじゃあね!」
まだ心配そうなお母さんに手を振って別れ、実家を後にした。
冬休みはまだまだもうちょっと残ってる。
というわけで。実家から帰ってすぐに、何か動きはあったかなーと、LROにログイン。
「アユム、いらっしゃーい」
最後にログインしたのはナィアさんとお話しに行った時だったので、出迎えてくれたのはグレちゃんだった。
「うん、なんかグレちゃんが一番、安心するね」
別に他のシス子ちゃんがどう、というわけじゃあないけれど。最初に出会ったシス子ちゃんがグレちゃんだったせいか、グレちゃんの顔見るとやっぱりルラレラティアにもどって来たーって感じがする。
「……そう? うーん。嬉しいような悲しいような?」
「そこは、アユム大好きっ! 抱いてっ!ってボクの胸にとびこんでくるとこでしょー?」
「そんなわけないじゃない……。ほんと、相変わらずアユムは頭のネジ飛んでるわねっ!」
「えへへ、ありがとー」
「……いや、褒めてないから」
「ん、グレちゃん大好きー」
グレちゃんを軽く抱きしめて、頬ずりしたら、諦めたように深いため息を吐かれたよ。
こういうグレちゃんとのやり取りが楽しいんだよね。
なんか他のシス子ちゃんって、あんまりツッこんでくれないから。ボケがいがないよね。
「……あー。それよりアユム、ちょっと出所不明のメッセージがアユム宛に来てるんだけど。受け取る?」
「え? 出所不明って、どゆこと」
「いつのまにか紛れ込んでたのよね。別におかしな内容でもないんだけど」
「ふむー? とりあえず見せてくれる?」
「はい」
シスタブに表示されたのは。
「”遊びに行くでー!”って、なにこれ。意味不明」
「だよねぇ?」
グレちゃんも首を傾げている。内容自体はおかしくもなんともないんだけど、差出人が不明でたったこれだけのメッセージだと意味不明だよね。
まあ、わからない物はしょうがないよね。
ナィアさんとこに行こうとして連絡したら、今日は野井さんの付き合いで島に居るらしい。
じゃあ、今日はまず島かなー。
「うーん、まあいいや。とりあえず島エリア行ってくるー」
「はーい、いってらっしゃい」
ドアを開けて、シェラちゃんと一緒に島エリアに到着。
神殿から出たところで、なんか妙に騒がしいことに気が付いた。
「なんだよあれ」
「なんかまたイベントか?」
「公式HPにゃなにもなかったはずだが」
そんな話が聞こえて来て、なぜかみんな上を見ている。
「んー?」
ボクも空を見上げて。
そして固まった。
「なに、アレ」
「プ?」
見上げた空には、とても大きな紡錘形の物体が三つ。
さらにはそこからさらに小さな飛行物体がいくつも飛び出して来ていて。
”遊びにきたでー! おまいら、オレと一緒にあっそぼーぜぇ! ひゃっはー!”
島中に、かわいらしい女の子の声が鳴り響いたのだった。
……どこかで聞いたことある声と口調なんだけど。
まさか、ね?




