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猫のルームは広がった

 我らが猫エンジェル、イヌイさんは今日も元気です。


 魚がマイブームなのか、ここ数日は肉より魚の缶詰を好んで食べています。

 何であれ、おいしく食べて元気に育って欲しいと思います。

 食べる姿も眠る姿も、とても可愛らしいです。

 口元の食べかすとか取ってあげたい。

 そう考えただけで、胸が苦しくて鼻が垂れ流しです。

 おのれアレルギー。



 毎日顔をあわせていることで、イヌイさんの警戒心も少しだけ解けてきたと思う。

 現在のターゲットとの距離、4.5m。

 最近は中に鈴の入った、音のする手毬がお気に入り。

 ぽーんと投げると必死でじゃれついて一緒に転がってます。すっげー可愛い。

 アレルギーのために直接手毬を触るわけにはいかないけど、それでもオレが投げた手毬に飛びついてくれるのはやっぱり嬉しいよな。

 鼻血……もとい、鼻水もんである。


「恨めしい……恨めしいぞ……」


 背後でどす黒いオーラを垂れ流しながら柱の影からこちらを覗く魔王様、怖いです。

 と言うか、そういうことをするからイヌイさんが怖がるんだろうに……

 本当に、気持ちはよく分かるんだけどね。



 そんなわけで、魔王様とイヌイさん双方のために、イヌイルームの拡張工事が行われました。

 拡張後の大きさ、だいたい小学校の25mプールくらい。

 魔王様が自由に動ける時点で、元からかなりでかかったんだけど。どう見てもこれ、個人の部屋サイズじゃないよな。

 動物園の、大型動物の檻より大きいんじゃないだろうか。

 その中に住むのは小型の猫一匹。

 王侯貴族も真っ青の、住民に対する部屋縮尺である。


 拡張工事は、魔王パワーで一瞬でした。

 サイさんがスカートで気を引いてる隙に、一気に壁を移動。


「我、境界の魔王の手に掛かれば、神界と外界を隔てる境とて襖のようなものである!」

「でも、襖って前後に移動しませんよ?」

「……


 ぬおりゃぁぁぁっ!」


 今日も安定して叩き殺(べちゃり)されました。




 ちなみに、この城のオレの部屋も一軒家2軒分くらいの広さがあるんだ。

 もし魔王様が入ってきても、一緒にお茶するくらいは可能だと思う。

 扉が人間サイズなので、オレとメイドさん以外は入れないけどな。

 あと、時々メイドさんが……いや、これはイヌイさんと関係ない話だからやめましょう。

 閑話休題。




 部屋が広くなったことで、一ついいことがあった。

 魔王様が入室してきても、イヌイさんが毛布の中に潜り込んで震えなくなったのである!

 相変わらずマッハで部屋の端まで逃げることに違いはないが、それでも魔王様の方を見る余裕が生まれたらしい。

 その距離、多分20mくらい。

 ちょっとでもイヌイさんが魔王様の顔を見てくれたことがすごく嬉しかったらしくて、その日は一晩中歓喜の踊り(上半身だけバージョン)が止まることはなかったそうだ。

 どたどたとした足踏み禁止をちゃんと守ってて偉いです、魔王様。

 ですから、一晩中オレを付き合わせるのも、オレが居眠りするたびに叩き起こ()すのも勘弁して下さい。



 魔王様は喜んでるけど、ここからがスタートラインだ。

 気長に、根気よく。

 だけど、頑張ってる魔王様に、もう一歩分の手助けをしてあげたい。


 だからオレは、あの手この手で、新たなる武器を手に入れることにした。




 今度はこいつで、イヌイさんを倒す……!


 そう告げながらも、その愛らしさと猫アレルギーによって、オレの方がころりと倒されました。


 次回、新兵器登場!


 倒れるのは人か、猫か。

 それとも、魔王か……!?


 クイズの答えは、次回のあとがきで!



 あと、次回はちょびっとメイドさんが出てサービスカット付き。


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