オレは頼みに殺された
「頼みがある!」
ただ、一言。
言葉一つで、聞くものを震え上がらせ、魂を捻りつぶし、埃が飛ぶように命が消し飛ぶ。
そんな、深く重く、恐ろしい音が静かに辺りに響いた。
その音を発した主を見る……見上げる。
どれほどでかいんだろうか。
いや、でかいと言っても、山だのビルだのゴジラだのといった大きさではない。多分違うはずだ。
石を投げれば普通に届く程度の、近い高み。せいぜいが、二階建ての一軒家くらいかな?
物理的な大きさは多分その程度でしかない―――けれど、その場所にソレがいるという存在感は、山だのビルだの以上に巨大であった。
腰……らしき部分を少し曲げて。
オレを、ほぼ真上から、見下ろす。見下ろされる。
オレの全てが押しつぶされるような、そんな威圧感を持った影であった。
いつの間にか。
気づけばオレの身体は、しりもちをつき、失禁し、後ずさろうと地面をこするように手を這わせて。
恐怖に震える身体と冷静に自分を眺める心が、まるで分離したかのように噛み合わなくなっていた。
「いっ、いかん!
頼む、動いてはならんぞ!」
落雷のような声が、物理的な衝撃を持ってオレに突き刺さる。
それだけで、身体はびくんと跳ね、意識が遠のき―――
辛うじて座っていた体勢から、ぱたりと後ろに倒れた。
一瞬、ぴりっとした何かに触れる刺激があったような。
直後に、音とも、匂いとも、熱とも、光とも、何とも言えない、そんな何か。
そんな何かに、ぐにゃりと、存在を、こね回され? て?
―――ああ、そうか。オレ、死ぬんだ。
自分の意志で動かせぬ身体とは裏腹、妙に冷静に心が最後を悟り。
後悔も、諦念も、解放感も抱くことなく。
リモコンひとつでテレビが消えるように。
何の感慨もなく、本当にあっけなく。
オレは、死んだ。
新連載スタートです☆
皆様どうぞお気軽によろしくお願いします。
本日2/29は3回更新。流石に初日で猫登場までぶち込むのはちょっとハイペース過ぎて無理そうでした。
第2部分は12時、第3部分は22時予定です。
プロローグ終了まではかなりのハイペース、その後はがっつり失速する予定でございます。
※ 予定は未定