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浪速の夢遊び  作者: 秋鷽亭


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第七十二話 偽装

大勢の人々が京に集まり、葬儀が行われた。


前から容態が悪いとされていた秀吉が崩御したと、通知が全大名に伝えられた。

帝からの勅使は、豊臣家から恐れ多いと断りが入れられたが、多数の公家衆が参列した。

派手好きだった秀吉の事を考え、仰々しく重々しい葬儀ではなく、音曲や花々を飾り立て、にぎやかな葬儀が行われた。

一部の者たちは眉を顰め、下賤の者はといい、陰で嘲笑った。その姿を見ている者に気が付かずに。


参加した大名たちは、沈痛な表情をしながらも、周囲を油断なく観察していた。

次の天下人は、秀永なのか、他の誰かなのか、どちらにつく方が良いのか、思案しながら。

最大の所領を持ち、経験も実力もある家康か、秀吉の盟友でもある利家か、他にも有力な大名もいるが、二人が抜きんでていた。


利家は秀永の後見人でいることを受け入れており、天下取りの動きをすることはなかった。

ただ、利家の顔色が良くなく、健康状態が良くないと思われていた。

曲直瀬道三の後を継いだ、玄朔が派遣され、利家の治療を行っているが、病状を遅らせていても快癒することはないと診断されていた。

後継者である利長は、才能も能力はあっても、利家に比べれば経験不足であり、重さが足りなかった。その為、利家の死後、前田家は力を落とすと諸大名は考えていた。

大老の筆頭として、政務を担う家康が次の天下人になるのではないかと、諸大名の中では思われていた。

天下は回りものである。足利、六角、三好、織田、豊臣、今まで、天下を主宰する家は替わって来た。なればこそ、豊臣の天下が終わり、次に違う家が天下を取っても、庶民は、諸大名はおかしくないと意識されていた。

だから、家康が豊臣から天下を奪ったとしても、家康もまた天下を奪われるものと思われていた。家康の次の天下は、俺がとると、最近までは政宗は考えていたが、秀永の話を聞いて、小さい日本に留まるよりは、世界に出た方が面白いと考えを変えていた。

ただ、大半の諸大名は、土地を守ることに意識が言っている。その為、所領を守るために、有力者につながろうと、交流を深めていた。




「秀永」

「はい」

「皆は、どのような顔で参加していたのかの」


秀吉は、葬儀に参加した諸大名を頭に浮かべながら、笑いをこらえていた。

秀永は苦笑しながら秀吉の顔を見ていた。


「沈痛な表情を浮かべておりました」

「で、その顔の裏でニヤニヤしながら、次の天下人を、誰につくか算段しているのだろうな。家康あたりは、どう動くか考えていたんだろうが、お主が居る以上、動きにくかろう。豊臣家の大老という立場は、動きを縛るものになるだろう」


家康が秀吉の死後、どのような動きをしたか、秀永は理解している。確かに、幼少の秀頼、政治に疎い淀君では、家康の動きは止めれなかっただろう。婚姻関係を結び、疑似的な一族を増やしていった家康の謀略。唯一抑えれた利家亡き後、謀略を駆使して、豊臣家臣団も分裂させ、所領の大きさを利用し、諸大名の盟主と意識させるように持って行った。

幼少の秀頼では頼りなく、生母ではあるが、側室でしかない淀君が口出しをする豊臣家の未来がないと見切りをつけられた可能性もあると秀永は考えていた。

北条政子の例もあり、女性が政務に携わることを厭うことはないと思う。しかし、日野富子と淀君が重なり、諸大名が忌避していた可能性が否めない。

それも、家康の謀略の影響があったかもしれないと、秀永は考えた。


「お主が、幼少であっても、政務を行い大きな失敗を起こしていない以上、諸大名も軽々と動けまい。動くものは粗忽ものだろうが、岩覚どうだ」

「信繁殿の話では、忠興殿、義弘殿が動いているようです」

「ほう、家康はどうだ」

「家康殿の動きはないですが、正信殿、直政殿が動いているようです。正信殿は情報を集める動きですが、直政殿は各家と連携をとるような動きをしております」

「ふむ、正信は家康の意図を感じで動いているが、直政は泳がされているかもしれな」

「お考えの通りかと思います」


正信は、諸大名へのご機嫌伺と、困っていることはないかと動いている。直政は茶室で重臣以上のものと茶会を開いているようで、たわいのない話をしつつ、豊臣家の不満を煽り不信に思うように誘導していると説明をした。


「毒をばら撒いているのか、家康は、直政を切り捨てる覚悟が出来たか。監視されていることを理解して、問題問題になる可能性もある。その時は、寵臣でも切り捨てる。天下への意思が感じ取れるな」

「はい、だからこそ、軽率な行動はとらないかと」

「婚姻による取り込みは、秀永が許可しない限り不可能。取りこむならば金を貸し付けしかないか」

「しかし、貸付は、援助は豊臣家が行っております」

「そうだな。家康には大義名分はない。ならば、忠興と義弘を利用するか」

「そう思われます」

「踊らされるか……ならば、動きやすいようにしてやれ、秀永」

「わかりました」

「やつらは才はある、天下を取るだけの才はないがな。義弘は琉球や九州あたりを支配することを目指しているかもしれんがな。未だに、弟たちが死んだことを恨んでいるのか、悔やんでいるのか。愚かなことだ。義久が嘆願しても、二度目はない邪魔なら潰せ」

「はい」

「忠興は、公家に手を回すかもしれん。藤孝に抑え込ませろ」

「従いますか」

「従うだろう、やつは生き残る為なら何でもするだろう。興元の身分を保障してやれ」

「分かりました。しかし、大義も兵もいません。どうすると考えていますか」

「忠興の嫁の玉は耶蘇教の信者だ。それを利用するだろう。一向宗と同じように各地にいる耶蘇教の者たちを扇動するだろう」

「しかし、信長公が討たれた後、別離したと言われていますが」

「あれは、偏狭的な男だ。一度手に入れたものを手放すまい。表向きは距離を取っていても、監視はしているはずだ」

「そのような状況で、玉さんは忠興さんに手をかしますか」

「本人は手を貸すまい。ただ、玉の状況を改善したいものや、同じ信者ならば、口先だけで動かせるだろう。豊臣が禁止した耶蘇教の事を取りやめる。玉を解放するとか、やりようはある」

「監視をつけましょう」

「ああ、ばれない程度にな。耶蘇教の者たちが動けば、耶蘇教とを排除することが出来る。もう、一向宗のようなことは起こされたくないわ」

「信仰は自由ですが、それを話すもの達は信用できません」

「その通り、やつらは信じられん。末寺、末社の者たちの中にはまともなものも多いのだがな」

「そうですね、そういうところほど、貧しいですが」

「お主のしたいようにすればよい、ただ過ぎたものは駄目だ」

「分かりました」

「最後の国内の仕上げをするのはお主だ」

「心してかかります」


秀永の言葉に、秀吉は満足げに頷いた。


「さて、湯治に行くか、せっかく作ったのだから、楽しみだ」

「ご無理されませんようにお気を付けください」

「分かっておる。入る時と、出る時は気を付ける。それに寧々もいるから大丈夫だ」

「分かりました」

「有馬の湯がわしを待っている、いずれお主ともゆっくり入りたいものだな」

「はい」


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― 新着の感想 ―
[一言] 推敲 >幼少の秀吉では頼りなく、生母ではあるが、側室でしかない淀君が口出しをする豊臣家の未来がないと見切りをつけられた可能性もあると秀永は考えていた。 秀吉→秀頼
[気になる点] 崩御 ↑事実上国王であっても天皇がいる日本でまして太閤である秀吉にこの言葉は不適ではないでしょうか。 足利、六角、三好、織田、豊臣 ↑ここに六角は言うまでもなく三好も入れるのは違和感…
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