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浪速の夢遊び  作者: 秋鷽亭


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第五十一話 孝高

※二千十八年十月三日、誤字、文章修正

※二千十八年十月三十一日、誤字、文章修正

鶴松が秀吉に呼ばれて、岩覚と共に部屋に入ると、秀吉と三成と、孝高が座っていた。

岩覚は既に秀吉から対面の話を聞いていたが、鶴松は聞いておらず、首を傾げた。


「鶴松よ、こっちへ来い」


そう言い、秀吉は鶴松を膝の上に乗せた。

にこにこ、嬉しそうな笑顔の秀吉の様子に、孝高は昔の秀吉を見るような思いだった。

心に闇を持ちつつ、周囲の心をやわらげ、笑顔にする秀吉を思い出した。


「もう少し待て、寧々や虎之助、市松も来る。本当は紀之助も呼びたいが、関東での仕事があるからのぉ」


鶴松は、軽く頷いた。


「源次郎と供の者も部屋に入れろ」


秀吉の言葉に、三成は外に待機している信繁、宗矩を声をかけ部屋に入れた。

二人は頭を下げ入り、岩覚の後ろに座った。


鶴松は言葉を出さずに、孝高を見た。

他の者たちは、鶴松の事を知っているが、孝高は知らない。それに、策士である孝高をどこまで信用できるのか疑念があった。

策士は、策士であるがゆえに人から信用されない、そんな事を鶴松は聞いたことがあった。

心を許せば付け込まれる危険があると。


両兵衛と言われた竹中半兵衛重治は、芸術家肌で野望があまりないイメージだが、孝高は、関ヶ原での九州兵乱を考えたら野望があるのではないかと考えていた。

重治にしても、孝高にしても、己の才がどれだけ天下に通じるか試したいという思いが強いという事を呼んだこともあるが、本当はどうかは分からないと、鶴松は考えていた。


そう考えていると、孝高がじっとこちらを見ていることに気が付いた。

何かあるのかと首を傾げた。


「官兵衛、あまり鶴松をみるな。心がひねくれてしまう」

「殿下、それはひどいお言葉です」

「殿下」


孝高の言葉の後に、三成が非難の言葉と共にジト目で見て来たので、秀吉は笑ってごまかした。

孝高と三成はやれやれとした表情になり、岩覚は含み笑いをした。


「旦那様お呼びとか」


寧々が清正と正則を従えて部屋に入って来た。


「また、官兵衛殿をからかっていたのですか。いい加減、やめなさいな」

「良いではないか、数少ない楽しみなのだから」

「される方はたまったものではありませんよ」


困った表情をしながら寧々は秀吉を窘め、横に座った。


「鶴松も元気なようで」


寧々の言葉に、鶴松は笑顔で答えた。

殺害されそうにはなったが、寧々は誰かにはめられただけなので、恨むことはない。

はめたとされる者の目星は付いているが、証拠がなく、手出しができなかった。


寧々と一緒に部屋に入った清正と正則は鶴松が居ると聞いている場所に、孝高が居るのを知って驚いたが、表情には出さず、その隣に座った。


「よし、皆の者が集まったようなので、鶴松挨拶をしろ」


秀吉の言葉に、年齢に合わせた方が良いか鶴松は考えた。


「構わん、何時ものように話せ」


鶴松は孝高の方に顔を向けた。


「お主の耶蘇教に関する話を信用できぬと言ってな。頭の固いじじいを納得させろ」


愉快そうに秀吉は孝高を見て、笑った。


「殿下、笑いごとではありません」


生真面目な声で、三成は注意した。


「旦那様……」


寧々は大きなため息をついた。


「それに、虎之助や市松にも分からせたいのでな」


鶴松は岩覚を見たが、岩覚は問題ないと頷きを返した。

軽く息を吐いて、鶴松は挨拶をした。


「それでしたら、皆さんよろしくお願いします」


はっきりとした言葉で、歳に似合わない挨拶をする鶴松に孝高は眼を細めた。それを見て、鶴松は何か企んでいる表情だと思った。

清正は聞いていただけだったので、驚きの表情を浮かべた。


「うむ、さすがわしの子だ。そっくりで優れていな」


秀吉の親ばか発言で、部屋の空気が緩んだ。


「確かに、旦那様に似ず、しっかりした子ですね」

「寧々、さすがにそれはひどくないか」


寧々と秀吉は顔を見合わせ笑っているが、他の者はさすがに笑えなかった。


「まあ、まずは鶴松。耶蘇教やその後ろの国の事について、孝高たちに話してやれ」

「はい」


イスパニア、ポルトガルの事や、西欧の勢力について、キリスト教やイスラム教などについて、話した。

既に聞いていた者は、驚きはなかったが、孝高、清正、正則は驚いた表情をしていた。


「どうだ、官兵衛」

「誠に、驚きですが……」

「まあ、簡単に信じる事は無理だろうな」

「申し訳ございません……そういえば、慈矩殿が朝鮮の北方へ調査に向かったと聞いたのですが、その西欧という者たちへの抑えですかな」

「はい、シベリアという地域なのですが、放置しておくと、ロシアという国に支配され北の脅威となります」

「誠ですか」


鶴松は頷くと、岩覚を見た。


「岩覚さん、持ってきた世界地図を出してください」


鶴松の言葉に頷いて、信繁と宗矩に言って岩覚は、鶴松の説明で書きだした世界地図を出した。


「南蛮の方……西欧と言うようにしますが、持ってきた地球儀では説明しずらいので、この地図で説明しますが、此処にシビル・ハン国という、チンギスハンの子孫の国が存在しています」

「チンギスハンとは、元の」

「はい、遊牧民族を統一して大国を築いた英雄です。その子孫の国で、この地域に住む者たちをまとめているのですが、このモスクワ大公国という国が周辺の国や、チンギスハンの子孫の国を支配し強大化しており、その矛先がシビル・ハン国に向けています。ここを抜かれると一気に東に侵攻し、この範囲を支配下に置きます」


鶴松が示す範囲を皆見て、驚いた。日本などと比べる事も出来ないほど広大な土地を示しており、その国力に戦慄を覚えた。


「土地は広大ですが、北方にあり、大地は凍り寒さも厳しい地域も多く、広さの割に人は少ないのが救いです」


その言葉に、一同は胸をなでおろした。

秀吉や三成も話に聞いてはいたが、実際に地図で見せられると危険性を理解した。


「まだ、シビル・ハン国は粘っている状況ですし、滅びた直後であれば、支援をして再興させることも可能です。また、シビル・ハン国の東側を抑えれば、日本への防波堤にもなりますし、人が余れば入植も可能です」

「その地域の者たちが従いますか」

「孝高さんの疑念も分かりますが、利があり、力を見せれば従うでしょう」

「それでは、こちらが弱れば裏切るのでは」

「その通りです。ですので、此方の力があり、従えば利があると思われている間に教育するのです」

「いま、学校と言われているものですかな」

「はい、教化し、敵対しないようにすればよいのにです。時間はかかり、難しいことですが、必要なことです。ここを抑えれば、明や朝鮮への抑えにもなります」


一同は、鶴松の説明を聞いて頷きはしたが、理解が追い付いていなかった。

其処まで考える必要があるかが、分からなかった。

日本の国外に意識を向ける必要性を理解できなかった。


「南方への調査も同じですか」

「近いですが、西欧の脅威よりも、まだ、国が作られていない、人がいない地域を抑える事は今ならば可能です。国内で余った余剰の人たちをそちらに入植させ、日本の勢力圏を広げ、西欧や明に対抗します」


そう話しながら、北アメリカ大陸を指さした。


「ここの地域には、我々と先祖を同じくすると思われる者たちが居ます」

「先祖とは」

「遥か昔、朝廷が成立する遥か昔に分かれた同胞です」

「まさか」

「信じるも信じないも自由です」


遺伝子を説明した所で、証明できるものがないので、鶴松は納得させる気はなかったので、軽く流した。


「住んでいる人たちは、遊牧民族に近いかもしれません。東側は西欧が進出していますが、西側や北側はまだまだだと思います。西欧の者たちの好き勝手にしておくと、支配され、巨大な国家が此処にもできます」


巨大という言葉に鶴松とそれ以外の者たちとの認識の差があるが、土地の大きさだけ見れば、巨大であると認識できた。


「豊臣家に反抗的なものを送り込むことも可能ですが、将来的に禍根になる可能性も否定できません。数百年後まで、豊臣家に忠誠を誓えというのは難しいと思いますが」

「確かに、かつての周王朝末期には、同族も臣下も争い滅びましたからな……なるほど、それで、教化ですか」

「はい、支配ではなくても、手を取り合うのでもよいのですが、争いだけは避けるべきと教え込むべきかと。民を大切にし、民の支持を得れば、蜂起したとしても失敗するだけです」


清正、正則、信繁、宗矩は話についていけず、眉間にしわを作っていた。


「鶴松様のお考え、分かりましたが、この老骨にできる事がありますかな。ここまで雄大な考えをされる方を支える自信がありませんぞ、殿下」


孝高をやりこめたと思い、秀吉は機嫌よく笑ったが、横から寧々に頭を叩かれた。


「こりゃ、寧々、わしの頭を叩くな」

「真面目な話中です」

「むぅ……」


周囲は二人のやり取りに呆れながらも話を続ける。


「私の策も、この地においてのも。外の国に通用するか分かりません」

「孝高さんらしくもない」


鶴松の言葉に、孝高は眉をひそめた。


「確かに、外の国とは考え方も文化も違うかもしれません。でも、同じ人です」

「同じ人」

「そうです。それに、孝高さんの出身の播磨の国と、薩摩や奥州など、離れた土地の人たちと考え方や文化が完全に一致するでしょうか」

「……」

「違いはありますが、それは調べればよいのです。それに対抗できる者たちを育てれば良いのです」

「それも学校の役割と」

「その通りです」

「敵に対抗できる知識を与えるのではないでしょうか」


孝高の言葉に、鶴松は顔を左右に振った。


「それを言えば、孫子、呉子、尉繚子、六韜、三略、司馬法、李衛公問対など、数多くの人たちが読んでいるはずです。門外不出な処もあるかもしれませんが、対価があれば明から取り寄せれるでしょう。それと何が違うのでしょうか」

「……確かにそうですな」

「それよりも、相手の情報をどれだけ数多く手に入れるかが重要なのではないですか。父上を支えた孝高さんなら分かるはずです」


秀吉は、鶴松の説明が孝高をやりこめていると思いニヤニヤしてやり取りを見守っていた。

三成や岩覚、寧々は呆れているが、それ以外のものは、真剣に聞いていた。


「まずは、諜報をまとめる機関を作るのに力を入れるべきです」


その言葉に、孝高は信繁を見た。

見られた信繁は身を固くした。


「ふむ、それは信繁殿の役目ですか。そういえば、風魔党もいましたな」

「そうですね。ただ、それは私の手の者で、豊臣家としての組織を作り上げなければいけません」

「それを私に」

「手伝ってもらえればとは思います」

「韓信のようになりませんかな」

「確かに、その役に付くものは力を持ちすぎますが、それについては対策を取る必要があるのは分かっています」


情報を制する者は組織も制する。

弱みを掴むことも可能であり、使い方次第では裏から支配も、簒奪も可能であることを示唆する。


「豊臣家当主が差配し、手の者を監察として配置することしかないですが、忠誠を信じるしかないですね」


鶴松の言葉に、孝高は含み笑いをした。


「そう言いながら、忠誠を信じていませんね」

「確かに、忠誠は時として、間違った方向に行くこともありますので……待遇面で満足させるしかないかと思います」

「ふむ、しかし、それでは私にとって面白みがない気がしますが」


領地を持ち、地位もある状況なので、それ以上の得るものがあるか孝高は問いかけた。


「ありますよ」

「何をですかな」

「日本だけでなく、この広大な世界を相手に、策を試せる機会を見逃しますか」

「……」


広大な領地を持ちたい、そういう気持ちは孝高にもある。しかし、それ以上に、己の策が、才能がどこまで通じるか試してみたいという気持ちもある。

領地をどう発展させるか、人を集めるかなどは楽しいが、戦場での、交渉での丁々発止のやり取りは、孝高にとっては、領地経営以上に甘美なのであった。


「敵いませんな」


孝高は笑いながら、鶴松の言葉が正しいことを認めた。


「ただ、今までの話と、耶蘇教は違うと思うのですが」

「分かっているはずです、ロシア大公国、西欧の進出、その支配地には必ず耶蘇教が出てきます。彼らにとっては、耶蘇教以外を信じる者たちは悪魔の手先であり、人とは認めない存在なのです。かつて、信長公の傍らにいた弥助という人は、此処から連れてこられた、奴隷です」


鶴松は、アフリカを示して、孝高に説明した。


「しかし、この国でも、さらった者たちを奴隷として売りさばいておりますぞ」

「奴隷について、西欧の者たちを批判することは出来ません。ただ、今後は、奴隷のやり取りは国内では禁止すべきだと思っています」

「戦乱が収まれば、奴隷狩りも減るでしょうが……」

「人が減れば、それだけ生産力が低下し、土地が荒れます。人が余るならば、国の外に入植させればよいのです」

「ふむ……では、教会に寄進した土地はどうですかな」

「土地の寄進は、寺社に行う感覚で行ったかもしれませんが、それは、国内の話で、外の国は関わっていません。教会の土地が、耶蘇教の土地とされ、西欧の者たちが入り込まれるのは危険です。ですので、教会の土地の所有は認める事は出来ません」

「……」

「仏教、神道、耶蘇教を信じるのは自由です」

「鶴松様」


三成が厳しい声で止めたが、鶴松は三成を見て、顔を左右に振った。


「信じるの自由です。でも、仏や神々、耶蘇の神や天使の言葉を伝えている者たちを、盲目的に信じるのは危険です」

「神の言葉を伝えているだけではないのですか」

「孝高さんは、智謀の優れた方なのに……」


鶴松の言葉に、孝高は不愉快な表情をした。


「交渉をする際、孝高さんは、笑顔の人を全面的に信用できますか」

「無理ですな。知っているものでも、話を聞いて情報を得るまでは判断できません」

「それと同じです」

「同じとは」

「神や天使の情報は、誰が出しているものですか」

「聖書に示されています」

「なるほど、では、聖書に示されている事を話すのは、神ですか、天使ですか」

「……それは、説法をするものが歪めると」


孝高の言葉に、鶴松は頷く。


「本願寺の者を思い出してください、殺生を禁じる仏僧が、死ねば極楽と言って、信者を死に追いやり、僧が殺生するのですよ。仏の経典にはそんなこと書いているのでしょうか」

「……」

「神社も同じです。血の汚れを言いながら、氏子などに血を流させる。神を敬い、仏を信仰する、良いことだと思いますが、それを伝える人たちを信用することは難しいと思います」

「確かにそうですな。寺社のやり口は、神や仏を敬っているとは思えない」

「それに、命の危険があっても助けてくれません。その時彼らは、祈りが足りない、信仰心が足りないと言います。亡くなった方々は、本当にそうだったか、私にはわかりません」

「では、私の信仰は何だったのでしょう」

「分かっているのではないですか」


鶴松の言葉に、孝高は考えた。

寺社の横暴による民の苦しみや、死を多く見て来た。神や仏に祈っても、生活が良くなったとは聞かない。

僧侶や神主の世俗に塗れた姿を見た。

そこに現れ、ボロ服を身にまとい、病院や貧しい者たちへの誠心誠意行う耶蘇教の者たちに心を打たれた。それは、己が出来ない苦界から助けてもらえるのではないか、慎ましい姿に、己を重ね合わせ、心を軽くさせていた。

寺社を信じるならば、耶蘇教の方が正しいと思った。


「あと、赤貧で慎ましいと伴天連を思っているかもしれませんが、彼らはごく一部ですよ。西欧では、寺社と大差ありません。人によっては贅沢な暮らしをしている人もいます」

「まさか……」

「そのまさかです。西欧は遠い、情報が入りにくいのです」


孝高はその言葉を聞いて、頭を殴られたような衝撃を受けた。

戦にしても、交渉にしても情報や知識がなければ、策は立てれない。それを分かっているはずの己が、耶蘇教に関する情報を集め損ねたという事実に衝撃を受け頭を垂れた。


「私を呼んだのですか」

「寧々にしても、市松や虎之助も鶴松の事を実際に見ていないからな、この機会に合わせようと思ってな。それに鶴松の話を聞けば、今後、外の国の者たちも来るかもしれん。女子たちが動揺した際に、抑えてもらうために、まず、話を聞いてもらおうとな」

「なるほど、確かに、話に聞くだけよりも実際に地図を見て聞いた方が良かったかもしれませんね。って、虎之助とも市松も口を開けて呆けていないで、話は分かりましたか」

「は、はい」

「う、はい」


寧々は、二人の反応に、やれやれと顔を振った。

二人は、秀吉や三成の鶴松の話は、大げさなものだと思っていたが、実際に、孝高とのやり取りを聞いていると、大げさではなかったと驚いていた。

そして、三成を睨みながら、もっと、ちゃんと話しておけよと思った。


「虎之助、市松、私は話をしたと思うが、お主たちがちゃんと聞いていなかっただけではないか、睨むな」

「「な、何を」」


己の失敗から目をそらすために、三成にからもうとした。


「清正さん、正則さん。三成さんを責めては駄目です。物の怪に付いたとされ、廃嫡の恐れもあるから、父上も情報を抑えているのです。お二方を信じて話した三成さんを信じなかった方が悪いです。が、まあ、信じれないのは当たり前ですので、ごめんなさい」


鶴松に謝罪され、二人は慌てて、手を振って、鶴松に謝罪した。


「「申し訳ございません」」


三成の哀れの籠った視線にも気が付かず、二人は頭を下げた。

実際に会って話さないと分からないと、三成も思っていたので、二人の抗議を怒ったりはしていなかった。


「二人とももうよい、顔を上げろ。面白いものを見れたから満足だ」

「……殿下」


三成は、二人のために、非難の視線を向けた。


「鶴松様」

「なんでしょう」

「耶蘇教を信仰することは許されるのでしょうか」

「自由です。ただし、耶蘇教は、他を排除しています。もし、そのような行動をとるものが居れば禁止せざるえないでしょうね」

「排除しなければよいのですね」

「ええ、それが出来るならばですが」


孝高は、教えを忠実に守るならば無理だと考えた。


「じっくり考えてください」

「……分かりました」

「鶴松よ、明へ攻めるのは無駄と言った意味は、この広大な土地があるからか」

「はい、現地の住民と協調して、国を興せば、明という王朝が成立しているやっかいな処に行く必要もなく、争いも小さいものになるのではないでしょうか。確かに、文化や財を手に入れれますが、その後が面倒です。あの地で異民族の王朝が続いていないのが証拠です。人の少ない土地を手に入れ、国を興して、開発していった方が利になりますし、手に入れれる土地も明の比ではありません」

「確かにのぉ」

「藤孝さんも、もうじき帰ってくるでしょうし、日本の地を安定させて、外の地へ出る方が良いです」

「そもそも国を興すとなると、新しい官位が必要になるな」

「ええ、蝦夷の地もですが、それに合わせて、朝廷に働きかけても良いかもしれません」

「そうなると、戦船を作らねばならんが、鶴松の言っていたものと、南蛮のものを組み合わせて作っているあれか重要になるな」

「はい」

「あと、家康にも声をかけたのは何故だ」

「外に対抗するには、日本が一つになる必要があります。家康さんを使わない手はないです」

「ふむ、そうだな」


秀吉と鶴松は、人の悪い顔をして見合っていた。

三成は、それを見て鶴松は秀吉の子だと納得してしまった。


「どうだ、官兵衛、助けてくれるか」

「……どこまで出来るか分かりませんが」

「おお、助かった助かった。鶴松、お主に官兵衛の孫を仕えさせるからな」

「わかりました」


孝高は、信仰に対する疑念や疑問もあるが、鶴松の話も理解し、信仰と教会を切り離すことを心に決めた。

この後、諜報機関についての話をすることになった。






一方、その頃の伊達屋敷。


「は!?わしの事を相談している声が聞こえる、外に行くことになる気がする!!!」

「そんな訳けないだろう!」


政宗と成実のやり取りがあったとか、なかったとか。


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