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第百三十三話 豊久

秀永が呂宋を離れる際、現地に残るものと話をした。


「本当は、わしも残って色々まわりたかったか、病気が怖いからなぁ」

「そうですね。伝染病もありますし、蚊を媒介にする病もあります」

「そう言えば、国でも起きるらしいな」

「ええ、ただ、こちらは日本とは違い冬のような厳しい寒さもないので、年中危険が伴う恐れはあります」

「うーむ、困るな。持ってきている蚊よけにも限界がある。よもぎでも植えるのか」

「昔、南蛮や回教徒との交易で手に入れた除虫菊の栽培を進めているので、それが安定すれば蚊や虫の被害も抑えられるのですが、まだまだ、足りて居ません」

「まあ、そんなものより食い物を栽培する方が良いからなぁ。致し方あるまい」

「河原者やみなしごなどを集めて、土地を広げたり、放置された場所を再生させていますので、もう少しすれば結果がでると思います」

「一向門徒ではないが、蚊は奴らと同じぐらい面倒だからな」


秀吉と秀永が話しているのを、重成、孝高、豊久らが聞いていた。


「高山国も土地の病もあるし、なかなか難しいのぉ」

「日本にも甲斐の土地病もありますし、国内でも解決に時間がかかる病がある以上、外の国にはもっと多くの病があるでしょう」

「そう言えば、島病があって、足が膨れ上がるものがあると」

「ありますね。八丈小島で起きた病ですが、外の国にも似たようなものがあるようです。一旦、発病したら現在の医術では完治は不可能です」

「ふむ、やっかいな問題だな」

「はい、医術は結果が出るまで時間がかかり、その間の犠牲や費用も……周囲が理解できるかが鍵になるでしょう」

「民は理解できないかもしれないがな。あとは、公家も……まあ、技術を向上させるのは人を育てるのと同じで時間も費用もかかるものだ」

「はい」


秀永は秀吉との話が一区切りつくと、豊久に顔を向けた。


「豊久さん、北の街の守りをお願いします」

「はっ」

「マニラに関しては、諜報活動のみに抑えてください。もし、占領を考える場合は、高山国の安治さんらに相談してください」

「はっ」

「また、周辺の島の監視は安治さんと協力してください」

「分かりました」

「細々したものは、あとでまとめたものを渡します。何かありますか」

「……」


豊久は少し、考えた。


「では、確認をしたいことがあります」

「どうぞ」

「マニラや諸島は、落とせれば落としても良いのですか」

「はい、構いませんが、無理はしないようにしてください。兵の数が足りないので……島津なら落とせそうですが、無駄な損失はふようです。できれば、現地民を味方につけるようにしてください。日本から送れる兵も民も限度がありますので」

「分かりました」

「船に関してですが、嘉隆殿、武吉殿はこちらに来られていたようですが、駐留はしないのですか」

「ああ……」


そう言って、秀永は目をそらして、苦笑した。


「駐留する船団については、安治さんが編成すると思います。また、今来ている一部の船も残します」

「ありがとうございます」

「ただ、嘉隆さん、武吉さんは……」


言いにくそうな秀永をみて、豊久は首をかしがる。


「政宗さん、義光さんが東の大陸に行く話を聞いて、面白そうだと言い出し、付いていくと言って、お二人と話し合いをしています」

「ああ、なるほど」


豊久は、秀永の話を聞いて、苦笑を浮かべた。

高山国で、嘉隆、武吉と交流があり、人となりを理解していた。

海賊衆は、独立独歩、自由人が多いのは実感している。

薩摩、大隅、日向でもそうだったと、豊久は思った。


「お二人は、隠居して家督を譲ると先の海戦の前から言っていたので、行きたい人たちだけを連れていくようです」

「なるほど」

「なのでお二人は、引継ぎは部下に任せて、政宗さんを乗せて先に高山国に向かいます」

「わかりました」

「医薬品や医師は駐在するように手配していますので、よろしくお願いします」

「はっ」

「殿下」

「如水さんどうかしましたか」

「こちらに攻めよってくるもの達は、倭寇ですかな」

「そうですね。ただ、倭寇も打撃を与えているので、散発的で大規模なものはいないでしょう。南蛮の海賊も減ったでしょうし、現地民は盗人が居ても、攻めてくる可能性は低いかと」

「ふむ、では、過剰な兵力は置かない予定ですな」

「ええ、まず、ある程度、自給できる体制をまず整えてからになるかと、そうでないと、補給頼りだといずれ破綻する可能性もあるので」

「そうですな」

「高山国が一息つけば、九州、中国、四国の人たちもこちらにまわす予定ではありますが、更に南の大陸へも人を送る必要があるので、中継点の一つにしていきたいですね」

「資材が必要になりますな」

「ええ、なので、貨幣よりも食料の方が取引に仕える気がしますので、どちらでも良いように準備をするように命じています」

「分かりました」

「文官として、公家などからも人を出すので、行政を整えるまで、守りを固めてください」

「はっ」

「よろしくお願いします」


秀永は豊久にそう言って、頭を下げた。

それを見た、重成は苦い表情をし、豊久は驚いた表情を浮かべた。


「わ、分かりました」


豊久の言葉に、秀永は頷いた。


「殿下、軽々に頭を下げられては……」


重成の言葉に、秀永は苦笑を浮かべた。


「まあ、公の場ではないので硬い事は言わないでください」

「いや、島津に関しては……」

「ああ、それはそうですが、既に終わった事です」

「仕方ないですね……豊久殿、どうされましたか」


苦い表情をしていた豊久に、重成は声をかけた。


「はい……」

「言いたいことは言ってみてください。罪に問いません」


秀永の言葉に、豊久は頷いた。


「義弘叔父上は、挙兵をし殿下に歯向かいました。その罪は許される事はなく、所領を没収され一族は切腹か、追放も覚悟しておりました。所領は薩摩を残し、他を没収されましたが、島津家は存続を許されました。久保殿の家督相続が許されました」

「そうですね」

「義久叔父上からは、義弘叔父上と相談したうえで、嘆願したと言われていますが、流石に挙兵したものが許されるのは異例かと」

「まあ、確かにそうですね。島津家を滅ぼして、直轄地にする成り、分家に挿げ替えるのも手だとは思います。ただ、国外に出る際に、まとまった力は必要と考えた際、義弘さんの申し出は一考の価値がありました。不平不満を持っている者で、歯向かう意思しか持たない者、外の国に出る事を嫌がり、土地に固執するものを排除し、豊臣に協力するものを残すのならば、こちらにとっても理があると考え決定しました」

「そうですか」

「良く島津が、三州太守の悲願をよく放棄したと思いました」

「一族も関心も激しい抵抗があったと聞いています。私は高山国にいましたので、良く分かっていませんが、斬りあいになりかけたとも聞いています。ただ、先の大殿の九州への出兵の直前は島津が抑えていましたが、大隅は肝付家、日向は伊藤家が勢力を持っていた為、家臣団でも揉め、島津家から離れ帰属を変えるものも多くいたとか」

「そうですね。豊臣の直臣になったり、他の家に使えたり所属を変えた者も多いと聞いています」

「はい、薩摩に居るものでも離反したものもいます。ただ、残ったもの達は島津家に忠誠を誓うもの達で、逆に家中の統制ができるようになったとも聞いています」

「不平不満をもっている者がいると、外には出ていけないですからね」

「はい」

「薩摩、大隅、日向の三州は無理でも、薩摩、高山国、呂宋の三か所の支配地を得れば面目も保てるでしょう」

「はい、南の大陸へも渡る話もあるので、領地は広がり、残った家臣も納得すると思います。困難は大きいですか」

「そうですね……ふむ、豊久さん」

「なんでしょう」

「島津も東の大陸に兵を出しますか?」

「え?」

「別に多くは送れないでしょうが、少人数は遅れると思います」


秀永の言葉に、豊久は驚きしばらく考えた。


「分かりました。義久叔父上、久保殿に連絡してみます」

「ええ、段階的に送るので、希望すればのせれると思います」

「ご配慮ありがとうございます」

「ふむ、では、殿下、私の一族も送ってもよろしいですか」


秀永と豊久の話を聞いて、孝高が話をした。


「構いませんが、多くの人を送れませんよ」

「構いません」


秀永の言葉に、孝高は頷いた。


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