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浪速の夢遊び  作者: 秋鷽亭


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第百十八話 雑談

しばらく、スペインとの戦いの後始末について、秀永は差配していた。

安治から豊久についての報告を聞き、考えを纏めて三成に送り、返事を待っていた。

重成は、高山国に留まらず、京や大坂に戻り三成と会談すれば良いと説得したが、秀永は受け入れなかった。

重成は、「淀様が……」と呟きながら、説得を繰り返したが徒労に終わった。

その姿を見て、嘉隆や武吉は笑っていたが、安治は気の毒そうに表情を浮かべていた。

また、嘉隆がスペインの総司令官を倒したが、生きていたので秀永に会わそうと思っていると言うと、秀永は楽しそうな表情を浮かべたが、重成は斬首すべきですと言って、また騒いだ。

秀永は会うと言ったが、傷を得ているのだから、総司令官の部屋まで行くと言って、重成をまた激高させた。


「いい加減にしてください!殿下はもう少し、ご自身の御立場をご理解してください!」

「うむ、良きに計らえ」

「なら、会う事は取りやめです!」


秀永の適当は返事に、重成は言質を取ったとして、会う事をやめさせようとした。

しかし、嘉隆はにやにやしながら言った。


「それはないだろう、重成殿。殿下、なかなか面白うな奴ですよ。それに総司令官ですから、最低限の礼儀として会う必要があると思いますよ」

「その通りだな」


秀永は嘉隆の言葉に応じて、何度も頷いた。


「いえ、先ほど、良きに計らえと言われてではありませんか!なので、会う事はまかりなりません!」

「おいおい重成殿、殿下は言われたけど、会わないと言ってないぞ。会う場を設ける事について、良きに計らえと言ったのではないか」

「嘉隆さんの言う通りです。重成さんも私の思いをくみ取ってください」


秀永の言葉に、衝撃を受けて、絶望の表情を浮かべた。

それを見て笑いながら、武吉は秀永に注意した。


「殿下、あまり重成殿で遊ぶのは止めてやった方が良いですよ。心の負担で若いのに、髪の毛とおさらばすることになりますぜ」


にやにやしながら言った為、秀永に注意しているのだが、重成をいじっているようにしか見えなかった。


「……重成さん、ごめんね」

「!?」


重成は、秀永が謝罪した事に驚愕の表情を浮かべて、頭を下げた。


「い、いえ、殿下の心をくみ取れず、申し訳ございません」


秀永、嘉隆、武吉、安治は重成を見ながら苦笑を浮かべた。

若く素直な重成は、可愛がられる事も多く、愛されていた。


「重成さんは、納得できないとは思うけど。敵の総大将である以上、会う意味はあります」

「……」

「傷を得ているから会いに行くのも……」

「それは止めましょう」

「嘉隆さん」

「あいつも会いに来られるのは嫌がるだろう。大将として弱い所も見られたくないだろうしな」

「ああ、そうですね。それは気が付きませんでした」

「傷自体もある程度くっついて、無理な動きさえしなければ、大事に至ることは無いですよ」

「そうですか……」


残念そうな表情を浮かべる秀永に、重成はため息をついた。


「では、嘉隆殿に連れてきてもらいましょう」

「妥当だな」


嘉隆は重成の言葉を受けて、頷いた。


「うーん、俺は殿下が会う前に会ってみたいが……」


武吉の言葉に、嘉隆は首をひねった。


「何故だ」

「殿下の前じゃ、あまり話し込めないと思ってな。お前さんを疑っているわけじゃないが、やはりあってみないとな」


武吉はそう言って、秀永を見た。


「別に構いませんよ。安治さんはどうしますか」


秀永の言葉を受けて、安治は顔を左右に振った。


「お目付け役は、ご遠慮します」

「そうですか……では、お願いします」

「殿下?」


秀永の言葉に、何故と言う表情を浮かべて安治は見返した。


「多分、酒とか持ち込んで、騒ぎそうなので押さえて欲しいと思いまして」


その言葉に、安治は肩を落とした。


「それならば、最初から命じて頂いた方が良いです」


同情の表情を浮かべて、安治を見ているのは重成だけだった。


「では、命じます。彼らがはめをはずさない事を監視してください」

「……分かりました」

「それに、敵だった総司令官の態度如何では、安治さんが差配する必要があると思うので、人となりを見ておいてください」


秀永がまっとうな話をしたので、ちゃんとした理由があるのかと納得して、安治は頷いた。


「分かりました」

「イサークさんも、状況によっては安治さんの配下となるかもしれませんので」

「ええ、彼なら良き相談相手になりそうですが、お二方と相性が会うと言う事は、後始末をしないといけない可能性があって、嫌なんですが……」


秀永は、安治の言葉を受けて笑った。


「安治殿、奴は神も、同僚も、祖国も、国王も信じていない。だからこそ、祖国から離れた場所で好きに動いていたんだろう。動いても、祖国に悪いことは無く、結果が出ているから黙認されているんじゃないか。まして、やつらは俺たちの事を人と見ていないからな」

「改めて聞くと、総司令官はあちらの国では異様な感じしますね。まあ、商人も同じようなものでしょうけど」

「確かに、日本の商人どもは寺社なんぞ、そこまで気にしていない。まして、その寺社が商人の様なもの……神官や坊主どもがどういう性根か分かるけど」

「銭がないと生きていけないので、仕方ないですけど。ただ、信仰よりも銭、土地に執着したら武士と変わらないですけどね……」


秀永はため息をついた。

そこに、正則が部屋に入ってきた。


「殿下」

「どうかしましたか」

「大坂より、書状が来ました」

「誰からですか……三成さんにしては、少し早いですか」

「中は……どうぞ」


正則は懐から書状を出して、秀永に手渡し、秀永は書状を開いた。

書状を読み進めていくと、困惑の表情を秀永は浮かべた。

その表情に、嘉隆、武吉、安治、重成、正則は不安の表情を浮かべた。


「どうかしましたか、何か問題でも」


正則が質問した。


「いや……、そうですね。皆さん、今から話す事は他言無用です。もし、話したら処罰せざる得ないです」


いつもと違い、秀永の厳しい言葉に五人は身をこわばらせる。


「よろしいですね。納得できないなら部屋から出てください」


そう言ってから、秀永はしばらく待ったが、誰も部屋から出なかった。


「出られないなら了承したと言う事ですね」


その言葉に、皆は頷いた。


「父がこちらに、高山国に来ます」


秀永の言葉に、皆は何を言っているのかわからないと言う表情をした。


「正則さん、重成さんは薄々気が付いているかもしれませんが……、父は死んでいません」

「「「え?!」」」


嘉隆、武吉、安治は、驚きの表情を浮かべた。

正則と重成は、やっぱりと言う表情を浮かべた。


「やはり、生きておられたのですね。太閤様に似た風体のものを何度も見たので……」


正則はそう言って涙を浮かべた。


「重成殿は?」


嘉隆の言葉に、重成は少し考えた表情をした。


「いえ、太閤様の話が出ると、殿下や北政所様が苦笑を浮かべる事が多く、違和感を感じていただけですよ。存命かはわかってませんでした」

「なるほど……」


そう言いながら嘉隆は顎を撫ぜた。


「で、何故、太閤様は来られるんですか」

「……いや、ね……」


武吉の質問に秀永は、困った表情を浮かべた。


「何か問題があってですか」


眉を寄せながら重成が質問をした。


「……はぁ、いえ、言いにくいのですが……単に、日本の外に行ってみたいと、北政所様も来られると……」

「「「「「はい!?」」」」」


秀永の言葉に、皆が驚きの声をあげた。


「旅行だと、北政所様に迷惑をかけたお詫びに……いや、お二人とも年齢を考えたら、無理してほしくないんですが……日本以外の温泉も入りたいとか……」


その言葉に、正則、嘉隆、武吉は苦笑を浮かべ、安治、重成は肩を落とした。


「淀殿は来られないのですか」


正則の言葉に、淀殿が来たら重成は怒られるかもしれないと、身を固めた。


「いえ、母上はそこまで日本の外には興味がないようです。なので、来られません」

「かかさまが来るのか……」

「はぁ、正則さんは、護衛をお願いします。他にも影から付けますがよろしくお願いします」

「はっ!」


正則は涙も止まりうれしそうな表情をした。


「あと、多分ですが、清正さんも来る気がします」

「確かに奴ならば!って、太閤様が存命なのを知っているので?」

「いえ、父が知らせるはずです……そんな気がします」

「確かに」


秀永の言葉に、正則は頷いた。

そして、重成は、秀永が確かに秀吉の子と実感した。

周囲を巻き込み、迷惑をかける所が……





「いざ征かん!大海原に!」


寧々は、後ろから秀吉を見てため息をついた。

存命である事を知った清正は、にこにこしながら二人を見ていた。


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