午前中
今まで間が空いていたのは、この話の存在をすっかり忘れていたからです。
どなたか読んでおられるのでしょうか?
「聞いてたと思うけど、今日は部活無しな~」
磨織のクラスの教室へ入った梗一郎がそう言うと、梗一郎と同じクラスの美咲は敬礼した。
「りょーかいっ」
「わかりました。」
梗一郎とは異なるクラスである磨織は少し顔を上げただけで、読書に戻った。
ごく当たり前のように美咲と梗一郎が他クラスにいるわけであるが、もう慣れてしまったのか、誰も何も言わない。
美咲や梗一郎に時々視線を向ける者もあるが、友人たちに何かを囁かれ、すぐに視線をそらしていた。
「その代わり、家でマオの服を考えよ―」
磨織は顔をあげ、あからさまに嫌そうな視線を向けるも、
「やったーっ!」
美咲は上機嫌で両手をあげた。
「……一応尋ねますが、どうしてですか?」
「ん? そんなの思いつきに決まってんでしょ。」
磨織はため息をついた。
「でも今日、キョーのうちにはおかーさんいるの?」
「良と好の方でなんかあるみたいで、帰った時にはいないって言ってたけど?」
良と好というのは、梗一郎の兄である双子の良一郎、好一朗のことを指している。
この兄弟、男は皆、イチロウなのだ。ついでに父も、健一郎である。
「いないのにいいの?」
「いいよ。
いつでも呼んでいいって言われてるし。」
「急に悪いです。」
「遠慮なんてする仲じゃないだろ?」
「……。」
「なんならマオんちでも行く?」
「どうしてそう――」
「アミちゃんにも、いつでも来ていいって言われてるし。」
アミちゃんとは、磨織の歳の離れた姉である編花の事を指す。
彼女は梗一郎の母澄華と歳が近いため仲が良く、3人が幼いころからの付き合いで、もう親と言っても過言ではないような存在である。
「人の家に行くのに遠慮を知らないのですか?」
「知ってるよ。
でもマオんちだし。」
「アミちゃんいい人だし」
また磨織はため息をついた。
「じゃ、材料は後で調達するとして、今日はマオんち直行ね。」
「はーい。」
「今日は編花さんは所用で出かけています。」
磨織が何となく吐いた言葉は、梗一郎と美咲の勢いを少しだけ落ち込ませた。
「了解。
じゃ、泊まれないな。」
「泊まるつもりだったのですか!?」
「うん。もちろん」
「あたりまえでしょ?」
三度、磨織はため息をつくのであった。
次も多分忘れ去られたころの更新となると思います。