ある朝
部活についての説明です
「儀式セーンセ」
梗一郎は、廊下でたまたま見かけた部活の顧問に呼びかけてみた。
「――梗一……?」
すると顧問は緩慢な動きで半分振り向き、彼の名を呼んだ。
「はい、梗一です」
「……丁度、よかった――」
完全に梗一郎の方へ体を向け、顧問は言った。
「何か用事でもあった?」
「――今日は、職員会議で、遅れる」
「部活?」
顧問は原則、部活動中は常についていなければならない。
「……ああ。」
「ん~……じゃ、今日は部活無しで」
だから、顧問がいなければ部活動は行えない。
「――私がいなくても、活動していても、構わないぞ……?」
何か理由があればその限りではないので、職員会議終了後、顧問がすぐに部室へ向かうのならば今日も活動できる。
「今日は儀式先生に着せたい服があったんだよねー」
「……ならば、なおさら」
「儀式先生がいないとサイズ測れなくて、今日はやること無いから」
細かい寸法直しをしたいということだ。
「――芸術部、だろぅ……?」
梗一郎が作った部は、芸術部といって、芸術だと言い切れることならば何でも活動内容の範疇である。
「そだけど?」
「……絵でも、描いたらどうだ?」
顧問の担当教科も美術なのだから、それも正しい活動内容の一つといえた。
「ん~……今はそんな気分じゃない。
だから今日は部活無しってことで。
次はきてね。」
そういって手を振って離れていく梗一郎を見送り、顧問の教師も体の向きを変え、歩き出した。
「――善処する」
それを廊下の曲がり角から見ていた部員二人は、
「キョー、変人ですね」
「キョーが変なのは、今に始まった事じゃないでしょ?」
「そうですね。 小学校のころからでしたね。」
と、あまり脈絡のない話をしていた。