ウソをつかなかった少年
1時間で書いたものです。見直し作業もろくにおこなっていないです。モウシワケネー
むかしむかしあるところに、ライという少年がいました。
彼はいつも村の人にウソをつき続けている意地悪な少年でした。
友達や町の大人、更には彼の大好きなメルちゃんにもウソをついていました。
ある日、メルちゃんは言いました。
「なんでそんなにウソを付くの?もうやめてよ!」
するとライ君はこう答えました。
「ウソなんてついてないよ。僕はウソをついてるんじゃなくて、答えじゃないことをいってるだけだよ~」
いつもどおりの人をバカにするような態度でそう言ってると、
「もういいよ!ウソばっかりつくライ君なんて知らない!」
メルちゃんは涙を流しながら走り去って行きました。
ライ君はその姿をずうっと見ていました。周りに誰もいなくなってから、彼は静かに泣き始めました。
「僕だって、ぼくだってうそなんてつきたくないよ・・・。だけど、だけどウソをつかないと皆が僕を見てくれないような・・・そんな気がして・・・グスッ」
その場で座り込んでしまったライ君は空を見上げながら、
「ああ神様。どうか僕をウソを付く前の状態に戻して下さい。そしてメルちゃんと仲直りさせて下さい・・・」
すると、なんということでしょう。空から声がしてくるではありませんか。
「時間とか戻すことはできないけどさぁ・・・まあ汚名返上?みたいなことはできるかなぁ」
「!?そらから声がする!?」
突然の声に驚くライ君に空からの声は答えました。
「ああ、私は神様だよー。願いは叶えられないけど、チャンスはあげようかなって」
「ほ、本当ですか神様!!」
神様からの言葉を受けてまるで祈るかのような姿勢をとるライ君。
「まあ、そうかたっくるしいことしないで。それじゃあヒントをあげよう」
「ヒントですか?どんなヒントを?」
「今から家に向かいなさい。さすればそなたにチャンスが与えられよう」
それじゃあ。という声を最後に、空からの声はなくなりました。ライ君はとりあえずおうちに帰ることにしました。
ライ君が意気揚々と家路に向かっていると、目の前で恐ろしい光景が浮かんでいました。
なんと、人狼によって村の大人が一人喉元を噛み砕かれ死んでいたのです。その光景を見たライ君は思わず「ヒッ」と叫んでしまいました。
すると、人狼がライ君を睨んできたのです。その時、ライ君は気付きました。その人狼が、彼が好いているメルちゃんの父親だということに。
ライ君は恐ろしくて動けずにいました。人狼は見ていた少年がライ君だとわかるとにやりと口元を歪ませていました。
人狼はライ君に近づいていきますが、ライ君はまだ動くことができませんでした。そして、人狼はライ君の顔元まで寄って来ました。人狼は言います。
「ライ君じゃないか、こんばんは。君はもうすぐ死んじゃう事になりそうなんだけど、なにか言いたいことはないかな?」
ニタニタと笑いながら見つめる人狼に対して、ライ君はただ、「殺さないで・・・、いやだやめて・・・」と懇願するしかありませんでした。
その姿を見て人狼はこう言いました。
「よしわかった。君が俺を人狼だって言わなければ、殺さないでおいてやるよ。今後、もしこんなことが起こってもお前は俺の味方につくんだ。いいね?」
ライ君はコクコクと頷き続けました。
「ありがとうライ君。それじゃあ、バイバイ」
そう言って人狼は去って行きました。ライ君はその姿がなくなるまで動くことはできませんでした。
次の日。
村は大騒ぎになっていました。それもそのはず、村の住人が殺されてしまったんだから。
みんな、誰が人狼なのかと疑心暗鬼のような状態が起こりました。そんな時、村の誰かが言いました。
「そういえば、昨日ライがヘタレこんでいるところを見たんだが、もしかしてお前人狼を見たんじゃないのか?」
その言葉に反応した村の住人はライ君に問い詰めました。
「もしかして見たのかい?」「そういえば見たところも死体があった近くだった」「それは間違いない!」「ライ、言いなさい。君は誰を見たんだい?」「早く言えよライ!これ以上死人を増やしたいのか!」
大人たちからの言葉攻めを受けているライ君に「まって!」と、咎める声が出ました。
メルちゃんです。メルちゃんがライ君の前に大の字で立っていました。
「ライ君にそこまで言わなくたっていいじゃない!ライ君だったらちゃんと言ってくれるわ!」
静かになった大人たちを背後に、メルちゃんはクルリとライ君の方へ振り返りました。
そしてこう言いました。
「ライ君教えて?だれがじんろうさんだったの?」
ライ君は答えていいものなのか、悩みました。なぜなら人狼であるメルちゃんのお父さんはすぐ目の前にいるんだから。
ライ君はどうしよう、どうしようと頭を抱えました。するとメルちゃんは、
「お願いライ君!本当のこと言って!言ってよ・・・」
と言って泣き崩れてしまいました。そしてライ君は気付きました。これが神様が言っていたチャンスなのだと。ここで本当のことを言う最後のチャンスなんだと。
ライ君は意を決して、人差し指をメルちゃんのお父さんに向けてこう言いました。
「あの人が、人狼です・・・」
その言葉に村の大人は一同メルちゃんのお父さんに目線を向けました。中には自前で持ってきた武器を構える人もいました。
「この・・・・・・、せっかく人様が生かすチャンスを与えてやったのによぉ・・・・・・!」
メルちゃんのお父さんはゾワゾワと手から、首から、顔面から白い毛を出し始めました。
そしてライ君に向かって走りながら言いました。
「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉまぁぁぁぁぁええぇぇぇぇぇぇぇ!!許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!・・・・・・ッッ!」
人狼がライ君の喉元に爪をえぐらせる10cm手前、ギリギリの所で大人たちが人狼を仕留めました。人狼は銛を突かれたまま、動くことはありませんでした。
顔を上げたメルちゃんにライ君はこう言いました。
「僕、本当のこといったよ・・・。本当のこと言って、みんなを・・・幸せにできたよ・・・」
その言葉を受けてメルちゃんは何か言おうと口を大きく開けました。しかし、言葉を発することはできませんでした。なぜなら、メルちゃんの喉元には鋭い槍が刺さっていたのですから。
「え・・・・・・?」
ライ君はその光景を信じられないという表情で見ていました。
「よし!これで人狼の被害は防がれた!」「人狼の子は人狼って言うしな、今のうちに不穏分子は除いておかないといけないよな」「ありがとうライ君!君のおかげで村に平和が訪れた!」「ありがとう!」「ありがとう!」「ありがとう!」「ありがとう!」
村人の賛美の言葉は、ライ君に届くことはありません。なぜなら彼の心はポッカリと、まるで銛か槍かで刺されたあとかのように空いていていたのですから。
空から見ていた神様は言いました。
「そなたの判断は何も間違ってはいない。なぜなら今、何も言わなければ被害者は増え続け、しまいには村の住人が全滅していただろうからね。しかし君は正直に人狼が誰かを言った。そのおかげで被害は最小限に食い止められたんだ。誇っていいことなんだぞ、ライ。」
そう言った後、付け加えるように
「まあ、正しいことをしてもそれが幸せにつながるかどうかは全くもって別のお話なんだがな」
と言って、神様は去って行きました。
めでたしめでたし。
ライ君はどうなるんでしょうね。作者も知りません。