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我儘姫  作者: 睦月
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第9話

騎士が許せない言葉をつぶやいた。

その言葉に、再び私の怒りのボルテージが上がる。

だが、私が口を開く前に騎士は続けて話し出した。


「お前は何も分かっていないから教えてやるよ。お前はこの国の下女として雇われたんだ。もちろん、カンミロイヤル国は承知の上だ。お前は国に捨てられたんだよ。なんて言われてこの国に来たのかは知らないがな。嘘だと思うなら、後から宰相に聞いてみろ」


つらつらと騎士は言葉を紡いだ。

だが、何を言っているのだろう。

私が国に捨てられた・・・・・?

下女として雇われた・・・?

父も母も承知の上だというのか・・・・?


「・・・・・・・はっ!!バカバカしい。そんなことあるわけないじゃない。あなたの方こそ現状を理解出来ていないようね。まぁ、いいわ。馬鹿と話していても拉致があかないから、さっさと国王に会わせなさい」


あぁ、本当に馬鹿と話すのは疲れるわ。寝言は寝て言って欲しいものね。

優しい私は、このバカを相手にするのをやめた。

とにかく王に会いさえすれば、このバカ達とは永遠に別れられるのだから。


「・・・・・・まぁ、そう言うと思ったけどな。ここにいつまで居てもしょうがないからついてこい」


そう言うと、騎士はすたすたと歩き始めた。

騎士の態度にイライラとしたが、いつまでもこんなところにいる方が嫌だった。

仕方なく、騎士の後に続いた。


「・・・・私にそんな風に接するのも今のうちだけよ。覚えておきなさい」


しっかりと、一言添えて。



*******************************


バカ騎士に連れられてこられた場所はさっきまでとはまるで違う場所だった。


「やっぱりさっきの部屋は間違えだったのね。あるじゃない普通の廊下が」


そう、ふかふかの絨毯がひかれ、明るい日も差し込む廊下を私は今歩いていた。

前を歩く騎士からはため息が聞こえたが、やっと思い描いていた場所に連れてこられた事に満足をしていたので気にならなかった。


「最初からここに連れてくればいいものを」


全く返事をしない騎士に呆れながらも、足を進めているとある扉の前で騎士が歩を止めた。


「あら、ここが私の部屋?」


そう問いかけても相変わらず返事はない。


「・・・・・入るぞ」


騎士は私の方を振り向きもせず、扉に声をかけていた。


「えぇ、構わないわ。早く扉を開けて頂戴」


そう言うと、ちらりと私を見た。

が、すぐに扉の方に視線を戻す。

そして、扉を開けると、私よりも先に部屋へ入った。


「ちょっと!私より先に部屋に入るとはどういうつもり!!」


あとを追いかける形になりながら私は部屋へ足を踏み入れた。


「ふうん。ちょっと地味だけれど、少し手を加えればよろしいんでなくて?」


一歩足を踏み入れたその場所は、待合の部屋だろう。

真ん中には品のよいテーブルと椅子が置かれていた。


「お褒めにいただきありがとうございます」


その椅子に腰をかけて優雅にお茶を飲みながらお礼を言う宰相の姿があった。


「あら、どうしてここに宰相様がいらっしゃるの?乙女の部屋に勝手に入るのはあまりいいこととはおもえないわね」


すっかり自分の部屋だと思い込んでいた私は、主である自分より先にこの部屋でくつろいでいる宰相の姿に少しイライラしながらそう言った。


「乙女の部屋ですか?・・・・ここは私の執務室ですよ?ここにあなたが住むおつもりですか?」


にこにこと笑顔のまま宰相はそう答える。


「あら、ここは宰相様の執務室でしたの?それは失礼しました。先程、こちらの騎士に間違えた部屋に案内されたものですから、ここが私の本当の部屋なのかと思いましたわ」


ちらりと騎士を見ると、騎士は何食わぬ顔で私たちが入ってきた扉の前に立っていた。


「ルイが部屋を間違えましたか?」


私の言葉に宰相はニコニコとしたままそう私に問いかけた。


「ええ、こちらの騎士は道案内も満足にできないようですね。この私を暗く汚い部屋に案内した挙句、私が下女となるためにこちらの国に雇われただの、我が国に私は捨てられたなど、私を侮辱するにも程がありますわ」


私はここぞとばかりに先程までの話を宰相にして聞かせた。


「それは少し誤りがありましたね。申し訳ありません」


宰相は、少し顔を曇らせ頭を下げた。


「少しではありませんわ。こんな侮辱を受けたのは初めてです。このような騎士はクビにしていただけますね!!」


当然、宰相はうなづくであろうと思っていた。

が、宰相は私の言葉に首をかしげた。


「ルイをクビですか?なぜです?」


「なぜ?ですって!?この私をあのような目に合わせたのよ?クビにして当然でしょう?」


あんな汚い部屋に私を連れていっただけでも許せないのに、さらにあの態度にあの言葉。

許せるはずもない。


「・・・あぁ!失礼。あなたは何か誤解なさっているようですね。私が誤りがあると言ったのはあなたが国に捨てられたという言葉だけですよ?さすがに、捨てられたものを我が国で拾う趣味はありませんので。ははは」


はて、私は何か聞き間違えただろうか?


「・・・・・今、なんておっしゃたの?」


「ん?聞き取れませんでしたか?我が国は、祖国からいらないと言われた人を拾う趣味はございません。と申し上げました。わかりづらいようでしたら、くだいて説明しましょう。ただ単に我儘な姫を押し付けられて致し方なく引き取って差し上げたというだけの事ですよ」


宰相は笑顔のままそう言った。







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