第7話 宰相視点
短めです。
「・・・おいおい。本当にあんなのを預かるっていうのか?」
騎士は眉を寄せ、感情を隠そうともせずそう言う。
「・・・口を慎んだほうがいいですよ?あの人が言うにはどうやら、私達は皆クビになるようですから」
先程、リリアーナ姫が口にしていた事を引用してルイを咎めてみる。
嫌そうな顔をしただけで、ふと誰もいなくなった部屋を見た。
私達がいる部屋は今までリリアーナがいた部屋の隣である。
しかし、そう簡単には見つからない隠し部屋。
もともと、リリアーナ姫が先程までいた部屋は、国家犯罪に関わった者たちを閉じ込めておく部屋だ。
それを監視する為に、ある一角がこちらの部屋からのぞけるようになっている。
もちろんあちらからは見えないし、こちらの声も聞こえない。
「はぁ・・・。なんであんなのを引き受けたんだよ」
ルイは何度も溜息をつく。
「仕方ないでしょう?我が国に足りないものはあちらの国から輸入しているんです。国民の為を思えばあのような我儘姫1人や2人受け入れるくらいなんてことない。・・・・と、王が申してるんですから」
「そりゃ、あいつはいいよな!!執務やら公務やらで一番あれと関わる時間が短いんだ!!」
「ルイ。いくら幼馴染だとはいえ、王をあいつ呼ばわりするのは関心しませんね。今は勤務中ですよ?」
「・・・・俺は嫌だ。あんなのに就きたくない・・・・」
プイッとそっぽを向いたルイに相変わらずだと思わず笑みがこぼれる。
「おやおや・・・。ルイ、貴方はそれで可愛いつもりですか?一体、いくつだと思ってるんですか?やめてください。そんなことしても仕事は仕事です。さっさとあの姫の元へ行って下さい」
冷静にそう返され、ルイはしぶしぶ部屋を後にする。
ルイが私に口で勝てた試しは一度もない。だからか、素直にルイはあの姫を追いかけて行く。
だが、素直なルイは嫌だとしっかりと表情で語っている。
「しかし、あんな素直で騎士団長なんですから、世も末ですね」
ぽつりとつぶやいた言葉は誰にも聞かれる事はない。
そして、一人残された私は誰もいなくなった部屋を再度眺めクスリと笑う。
「また、手のかかる姫を寄こしてくれたものですね、カンミロイヤル国は。しかし、あちらの国王からはこちらのやり方には口を出さないと約束して頂けましたし。まぁ、これから楽しみですね・・・」
私が口にした言葉は、トップシークレットだ。
もちろん、あの我儘姫に知らされているわけがない。
あの我儘姫のうわさは他国まで広がっていた。
それゆえ、18と言う結婚適齢期ぎりぎりとなっても未だ売れ残っていた。
何せ、誰もあの姫と結婚しようと言うものがいなかったのだから。
そこで、カンミロイヤル国は近隣諸国に姫の結婚を打診した。もちろん、姫を引き取ってくれた国にはかなりの優遇を約束して。
それでも、どこからもいい返事がもらえなかった。
そこで、我が国が条件付きで返事を返したら、ものすごい勢いで感謝された。
あの時の書簡は王がどん引きするぐらいだったから、よほどの我儘なのだろうと少し不安になった。
しかし、今現在我が国の人口は増加傾向にある。
わが国だけで賄うには少々厳しくなっていた所だ。
そんな時に、この話の打診があっった。
こちらがあんな条件をつけた上でも了承した所をみるとよほど、姫の結婚相手に困っていたのだろう。
「しかし、あの条件で良く頷いたものだ。普通なら怒る所だろうに・・・」
つまり、それだけ大変だと言う事だろう。この先の事を想うと溜息を付かずには居られなかった。